COLUMN 03 — 制度比較
メインオークション vs 長期脱炭素電源オークション
— 蓄電池事業者が知るべき決定的な違い
同じ「容量市場」の制度でありながら、メインオークションとLDAは設計思想が根本的に異なります。どちらに参加すべきか — 判断基準を整理します。
一言で言うと
メインオークション = 「既存電源の維持管理費を毎年もらう制度」
→ 1年契約、シングルプライス、既存も新規もOK、落札率96%超
LDA = 「新規電源の建設費+固定費を20年間もらう制度」
→ 20年契約、マルチプライス、新設のみ、落札率20%
メインオークションは全電源が参加して「翌年度の電力供給力」を確保する市場。LDAは新設の脱炭素電源だけを対象に「20年間の投資回収」を保証する市場。同じ容量市場の傘の下にある制度ですが、参加する目的もリスク特性も全く異なります。
比較表で見る7つの違い
| 比較項目 | メインオークション | LDA |
| 契約期間 | 1年(単年度) | 原則20年 |
| オークション方式 | シングルプライス (最後の落札者の価格が全員に適用) | マルチプライス (各自の応札価格がそのまま約定) |
| 対象電源 | 既存・新規 全電源 | 新設・リプレース・改修のみ |
| 蓄電池の最低容量 | 1,000kW | 30,000kW(第2回以降) |
| 他市場での収益 | 制限なし(全額享受) | 約9割を還付する義務あり (3段階: 95%/90%/85%) |
| 蓄電池の落札率 | 96%超 | 20〜24% |
| 約定単価水準 | 3,109〜14,812円/kW(第1回〜第5回) | 5.8〜6.8万円/kW/年(脱炭素電源平均) |
出典: 資源エネルギー庁「容量市場について」(2025年2月5日)/ OCCTO約定結果
メインオークション約定価格の推移 — ジェットコースターの歴史
| 回 | 実需給年度 | 総平均単価 | 約定総額 | 備考 |
| 第1回 | 2024年度 | 14,137円/kW | — | 全国一律。需要曲線上限に近接し批判 |
| 第2回 | 2025年度 | 3,495円/kW | — | 前回の約1/4に急落 |
| 第3回 | 2026年度 | 5,226円/kW | — | エリア別市場分断が発生 |
| 第4回 | 2027年度 | 7,847円/kW | — | 上昇基調に転換 |
| 第5回 | 2028年度 | 11,134円/kW | 約1兆8,506億円 | 過去最高を更新 |
出典: OCCTO 各回約定結果
第5回ではエリア別に大きな格差が生じています。北海道・東北・東京エリアは上限価格の14,812円/kWに張り付き、九州は13,177円、中部は10,280円、北陸・関西・中国・四国は8,785円。蓄電池の設置エリアが容量市場収入に直結する構図です。
蓄電池事業者にとっての実務的な違い
メインオークション向きの蓄電池
・既設蓄電池(LDAは新設のみで参加不可)
・3万kW未満の小規模案件(LDAの最低入札容量に届かない)
・市場取引ノウハウを持つフルマーチャント型の事業者
・落札率96%超でほぼ全量落札 → 他市場収益を全額享受できる代わりに毎年の価格変動リスクを負う
LDA向きの蓄電池
・新設の大規模蓄電池(3万kW以上)
・プロジェクトファイナンスの組成が必要な案件
・長期安定収入を重視するインフラファンド・機関投資家向け
・落札率は20〜24%と激戦。IRRは容量支払のみで約3.2%の「債券的リターン」に収束するが、20年固定収入によりDSCRが組みやすい
参加判断フレームワーク
Q1: 既設 or 新設?
→ 既設 → メインオークション一択(LDAは参加不可)
Q2: 規模は3万kW以上か?
→ 3万kW未満 → メインオークション一択(LDA参加要件を満たさない)
Q3: プロジェクトファイナンスが必要か?
→ 必要 → LDA優先(20年固定収入が融資判断の決め手に)
Q4: 市場価格変動リスクを取れるか?
→ 取れる(+市場運用の実力がある)→ メインオークション+3市場フルマーチャント
→ リスクを限定したい → LDA
「両方参加」はできるのか?
LDAに落札した電源は、メインオークションには参加しません(LDAの容量確保契約に基づき供給力を提供するため)。ただしLDAに不落札となった場合は、メインオークションに改めて参加することは可能です。
また、LDA落札電源が行うJEPX・需給調整市場での取引は認められていますが、その収益の大部分(約9割)はOCCTOへの還付対象となります。
まとめ — 「どちらが得か」ではなく「どちらが自社に合うか」
メインオークションとLDAは「どちらが有利か」という問題ではなく、事業のフェーズ・規模・リスク許容度で最適解が変わります。
ただし共通して言えるのは、どちらに参加するにしても「立地」が全てだということ。系統連系コストが低い適地を確保できているかどうかが、収益性の最大の変数です。
関連コラム
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出典・参考資料:
・資源エネルギー庁「容量市場について」(2025年2月5日)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/pdf/099_03_03.pdf
・OCCTO メインオークション第5回約定結果(2025年1月29日)
・OCCTO LDA第1回・第2回約定結果(2024年4月・2025年4月)
・KPMG 脱炭素電源オークション分析 https://kpmg.com/jp/ja/home/insights/2024/10/decarbonized-power-auction.html
・enegaeru.com LDA分析 https://www.enegaeru.com/long-term-decarbonizationpowersourceauction