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ノンファーム型接続とは何か

ノンファーム型接続とは、系統混雑時に無補償で出力制御されることを前提に、新規の系統接続を認める制度です。従来、系統に空き容量がなければ接続不可、あるいは巨額の系統増強費用を負担する必要がありましたが、ノンファーム型接続の導入により、出力制御を受け入れる代わりに早期の系統接続が可能になりました。2023年4月以降は、ローカル系統を含め、10kW未満の低圧を除く原則すべての新規接続にノンファーム型接続が適用されています。

ノンファーム型接続の規模感

接続契約申込み(2024年10月末時点):全国で約2,600万kW
接続検討段階(2024年6月末時点):約1億3,400万kW

現在開発中の蓄電池案件は、ほぼ全てがノンファーム型接続です。
出典:資源エネルギー庁「日本版コネクト&マネージにおけるノンファーム型接続の取組」(第1回次世代電力系統WG 資料4、2025年1月)/第52回系統WG 資料2(2024年9月)

なお、ノンファーム型接続に伴う出力制御は、特定の送変電設備における系統混雑(潮流が運用容量を超過する又はそのおそれがある状態)が原因であり、エリア全体の需給バランスに基づく出力制御(優先給電ルール)とは異なるメカニズムです。九州等で話題となる「出力制御」は主に需給制約に起因するものであり、本稿で扱う系統混雑による出力制御とは発生要因・制御順序が異なります。

蓄電池にとって重要なのは、出力制御が「放電側」だけでなく「充電側」にも及ぶ点です。ただし、放電側と充電側では制御の仕組みが異なります。

放電側と充電側で異なる制御メカニズム

放電側(逆潮流):ノンファーム型接続の系統混雑管理として、系統混雑時にオンラインで放電が抑制される(太陽光と同じ仕組み)。接続先の設備が直接混雑していない場合であっても、上位設備の混雑に影響する場合には制御対象となる可能性がある
充電側(順潮流):N-1充電停止装置の設置が求められ、送電線1回線故障時に充電が自動停止される。加えて、充電側の空き容量が不足する系統では「充電制限契約」により混雑時の充電が制限される(2025年4月1日から充電制限契約の全国運用開始)

放電側の制御は比較的予見可能ですが、充電側の制限はN-1故障という突発的事象に連動するため、性質が異なります。
出典:第53回系統WG 資料2(2024年12月)/OCCTO「系統の接続および利用ルールについて ~ノンファーム型接続~」(2024年7月)/OCCTO「系統用蓄電池の系統アクセスについて」(2025年4月更新)

出力制御は実際にどのくらい発生するのか

結論から言えば、現時点での影響は限定的です。ただし、ノンファーム接続量が増加する2027年度以降は状況が変わる可能性があります。

系統混雑の見通し(資源エネルギー庁 推計)

・2027年度頃:端境期(軽負荷期)に一部の系統で混雑が発生し始める見込み
・2028年度以降:ピーク需要断面でも混雑発生が見込まれる
・東北・東京・中部・中国エリアの一部系統で、軽負荷期に混雑が集中する傾向

ただし混雑は特定の時間帯・特定の系統に限られ、年間を通じた影響は限定的とされています。
出典:第1回次世代電力系統WG 資料(2025年1月)/第52回系統WG 資料2(2024年9月)

系統混雑時の出力制御方法は段階的に変更されてきました。当初(2021年1月〜2022年12月)はノンファーム電源のみが一律に制御されていましたが、2022年12月21日からはメリットオーダーに基づき調整電源を活用する「再給電方式(調整電源の活用)」が導入されました。さらに2023年12月28日からは、調整電源以外も含むすべての電源を一定の順序で制御する「再給電方式(一定の順序)」が適用されています。

出力制御量の予見性を高めるために、各一般送配電事業者は「系統の予想潮流等に関する情報」をウェブサイトで公開しています。蓄電池事業者は、接続検討回答書に記載された「出力制御量に影響を与える主な設備」(基幹系統グループ・ローカル系統の変圧器や送電線)の混雑状況を、この公開情報で確認できます。

N-1故障実績の読み方

接続検討回答書には「N-1故障実績」が記載されます。これは、当該送電線や変圧器で過去に事故(N-1故障)が何回発生したかを示す数値です。N-1故障が発生すると、N-1電制(転送遮断)によって蓄電池の出力が瞬時に遮断されます。

たとえば「0.667回/年」であれば、3年間で2回の故障実績があることを意味します。この頻度と復旧時間から、年間の停止リスクを概算できます。頻度が低ければ収益への影響は極めて小さく、逆に1回/年を超えるような設備では注意が必要です。

容量市場・需給調整市場への参加制限

ノンファーム型接続の蓄電池にとって最大の関心事は「市場参加が制限されるのか」です。ノンファーム型接続の同意書には、以下のような文言が含まれます。

ノンファーム型接続 同意書の記載:

「本契約を締結することで、容量市場および需給調整市場に参加できない場合は、これを容認すること。」
出典:OCCTO「ノンファーム型接続の同意書」

この文言を見て「容量市場にも需給調整市場にも参加できないのか」と不安になる買い手は多いですが、これは将来の制限可能性に対する法的な留保であり、現時点での一律禁止ではありません。

市場参加に関する最新の整理:

容量市場:2027年度〜2029年度のメインオークションにおいて、ノンファーム電源の参加が認められている。ただし「当面の間」という位置づけであり、恒久的な保証ではない
需給調整市場:当面(2028年度まで)はノンファーム電源の市場参加が認められている。ただし、系統混雑時にはΔkW(調整力)の発動が制限される場合があり、その際は非混雑系統から代替調達が行われる

いずれも年度ごとに判断される暫定的な措置であり、恒久的な権利ではない点に留意が必要です。
出典:OCCTO 容量市場メインオークション説明会資料(2023年7月・2024年7月・2025年7月)/第54回需給調整市場検討小委員会 資料(2025年3月)

2029年度以降の見通し

2029年度以降は、容量市場と需給調整市場で状況が異なります。

容量市場:2029年度メインオークション(2025年実施)ではノンファーム電源の参加が認められた実績がある。ただし、混雑見通しのモニタリングは継続されており、将来の制限可能性は残る。

需給調整市場:2029年度以降の取扱いは未決定。第54回需給調整市場検討小委員会(2025年3月)では「当面(2028年度迄)」と明記されており、2029年度以降は混雑影響の拡大に応じて参加制限が導入される可能性がある。今後の検討は「将来の運用容量等の在り方に関する作業会」に委ねられている。

需給調整市場の収益を2029年度以降の事業計画に織り込む場合は、制度リスクとして認識する必要がある。
出典:第54回需給調整市場検討小委員会 資料4(2025年3月)/OCCTO 容量市場メインオークション説明会資料(2025年7月)

LDAへの影響

ノンファーム型接続がLDA(長期脱炭素電源オークション)への応札資格に影響するかは、買い手が最も気にするポイントの一つです。

結論:ノンファーム型接続はLDA応札を妨げない

LDAは容量市場の枠組みの中で運用されており、容量市場でノンファーム電源の参加が認められている以上、LDAへの応札も可能です。2023年4月以降の新規接続は原則としてすべてノンファーム型接続であり、初回LDA(2024年1月)で蓄電池30件・109.2万kW、第2回LDA(2025年1月)で蓄電池96.1万kWが落札されていることから、ノンファーム接続の案件がLDAに落札していると考えられます。
出典:OCCTO LDA落札結果公表資料(2024年1月・2025年1月)

事業計画にどう織り込むか

ノンファーム型接続の出力制御リスクを事業計画に織り込む際のポイントは3つあります。

① エリア・系統ごとの混雑見通しを確認する

同じ東北エリアでも、基幹系統グループ(「青森1」「宮城1」「新潟1」等)によって混雑リスクは異なります。接続検討回答書に記載された設備の公開情報を確認し、当該系統の潮流実績・混雑頻度を評価してください。

② 収支シミュレーションに「制御率」を反映する

出力制御による収益減少は、年間の稼働率に対する割引率として織り込みます。現時点では年間の制御率は数%以下と見込まれますが、保守的なシミュレーションでは5〜10%の制御率をストレスシナリオとして計算しておくことが望ましいです。また、放電側の制御と充電側の制限は発生メカニズムが異なるため、それぞれ別のリスク要因として評価することを推奨します。

③ N-1電制・充電停止装置のコストを初期投資に含める

ノンファーム型接続では、出力制御機器(通信装置含む)の設置が蓄電池事業者の負担で必要です。加えて、充電側にはN-1充電停止装置の導入・維持・更新・撤去費用も事業者負担となります。これらの費用は設備費に含めて初期投資に計上してください。

④ 市場参加の制度リスクを認識する

容量市場・需給調整市場へのノンファーム電源の参加は、現時点では「当面の間」認められている暫定措置です。特に需給調整市場は2029年度以降の取扱いが未決定であり、収益モデルの前提として制度変更リスクを織り込んでおく必要があります。

案件ごとのノンファームリスク評価

接続検討回答書の読み方や、個別案件の出力制御リスク評価は面談時にご説明します。

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