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編集メモ:本稿のJEPX関連の数値は、JEPXが公表するスポット取引結果CSV(2024〜2026年度)をScienceXが独自集計した実測値です(計算仕様は01に明示)。需給調整市場の「新制度期」の数値は、前日取引化後28日間(2026/3/14〜4/10)の速報値を代理値として用いており、通期確報の公表後に更新します。容量市場のFY2030調整係数・需要曲線は本稿執筆時点で未公表(例年パターンでは7月末頃)のため、確定後に追補します。また、需給調整市場の上限価格(15円/ΔkW・30分)の施行日は2026年3月14日受渡分です。「4月1日施行」は取引規程の一部条項(手数料等)の発効日で上限価格の適用開始日ではなく、当社の既公開コラム(COLUMN 25)に同旨の誤記があったため本稿公開に合わせて訂正します。ΔkWの管区差(随意契約・不足率による「扉」の開閉)は期間按分で反映し、制度断層を跨いだ平均は作っていません。本稿は一般例に基づく市場分析であり、投資・税務・法務の助言ではありません。個別案件の確定数字はNDA締結のうえ個別にお出しします。

系統用蓄電所の収益は「どの契約で回すか」で決まる──前稿まで、そう書いてきました。同じ重さの変数がもう一つあります。どの管区に置くか、です。

先に答えを置きます。直近12ヶ月の実勢で組むと、この基準機はΔkWの扉が年間を通じて開いていた5管区──九州・東京・中部・北陸・関西──で年およそ2.9〜3.0億円(中央値)を売り上げ、首位は九州の約2.95億円です。内訳は需給調整市場が約8割、JEPXと容量市場が合わせて約2割──オーナーの損益計算書は需給調整から始まるので、本稿もそこから始めます。そしてJEPXで首位・2位の北海道・東北が、この5管区に並べません。扉を塞いでいたのは揚水の随意契約──裁定の地図とΔkWの地図は、重なっていない。売上の大きい順に3市場を確定し、これから買う人には「どこを買うか」、すでに持っている人には「どう運用するか」を、季節と制度の両面から実数字で示します。

本稿の射程(2MW/8,000kWhの年商で)
基準機
2MW/8,000kWh(4h・RTE85%)
実測窓
2025.07–2026.06受渡・365日完全
実勢・扉5管区
2.9〜3.0億円/年・中央値
ΔkW全振り(理論)
3.1〜4.7億円/年
ΔkW構成比
約8割JEPX・容量で約2割
床+コア管区差
約1,500万円/年(削られた後に残る差)
第1部いま、どの管区がいくら稼ぐかこれから2MW/8MWhを買う人へ

01 — 前提と読み方

JEPXの実測は、次の計算仕様で統一しています。1日1サイクル・完全予見で、放電は各日の価格上位8コマ(2MW×0.5h×8=8,000kWh)、充電は価格下位コマから9,412kWh(8,000÷0.85。下位9コマ+10コマ目按分)。日次粗利=放電収入−充電費用。完全予見なので、この値は理論上限──本稿ではこれを「器」と呼びます。実運用では予測誤差・稼働率・アグリゲーター手数料で目減りするため、器と実現収益は常に分けて示します(器の6〜8割という水準感が言われますが、実測での確立値ではないため断定しません)。

需給調整市場には、この12ヶ月の途中に断層があります。一次〜三次①の調達が週間・3時間ブロックから前日・30分商品へ移行し、同時にΔkW上限価格が19.51円→15円/ΔkW・30分へ引き下げられたのが、いずれも2026年3月14日受渡分から(EPRX 2026年2月5日公表の条文で確認)。本稿は旧制度期(2025/7/1〜2026/3/13・256日)と新制度期(2026/3/14〜6/30・109日)を分けて集計し、断層を跨いだ平均値は作りません

一次資料で確認済み⚠️ 条件付き・速報値 反証・非該当 未公表・未確認(照会先を明示)🚩 重要リスク

02 — 需給調整市場:収益の本体は、ここにある

売上の大きい順に、最大の稼ぎ頭から見ます。まず断層後の条件から。2026年3月14日受渡分以降、複合・一次・二次①の上限が15.00円、二次②・三次①が7.21円(据置)、三次②は上限なし。売買手数料は2026年4月1日実需給分から0.03円→0.06円/ΔkW・30分へ倍増し(3月14日に変わったのは商品・上限・募集量、4月1日は手数料のみ)、一次・二次①の募集量は3σ→1σ相当へ削減されました(約13%減。1σ超〜3σ相当は容量市場の余力活用契約で手当)。単価・数量・コストの三方向から締まった状態で、新制度期が始まっています。

商品旧制度期2025年度確報
平均約定単価/不足率
新制度期3/14〜4/10速報⚠️
平均約定単価/不足率
上限価格新制度
一次調整力3.93円/60.4%❓/36.3%15.00円
二次調整力①2.79円/41.1%15.00円
二次調整力②2.53円/4.3%7.21円
三次調整力①2.47円/12.9%7.21円
複合商品2.83円/22.0%2.86円/17.8%15.00円
三次調整力②1.15円/2.1%2.90円/6.7%なし

単位:円/ΔkW・30分。不足率=募集量に対する未達の割合(買い手側の未達であり、売り手の落選率ではない)。出典:EPRX 2025年度取引実績(2026/6/18)、資源エネルギー庁 電力安定供給WG第1回 資料8(2026/5/13、前日取引化後28日間)。新旧は算定期間・定義が異なるため横断平均は取れない。新制度期の通期確報は未公表❓。

ただし、この平均単価をそのまま電池に当てると市場の実態を外します。理由は市場の傾きです。一次・二次①・複合は調達不足の市場──不足率は買い手側の未達であって、要件を満たした札は原則すべて約定します。したがって電池にとっての現実の単価は、火力・揚水込みの市場平均ではなく、電池の実勢落札単価=月次8.8〜13.5円/ΔkW・30分(EPRX電源種別データ。一次・複合とも同水準)。これで12ヶ月を組むと、JEPX併用型(充放電18コマを除く30コマ応札)で約9.7万〜14.8万円/kW/年──2MWの年商に直すと約1.9億〜3.0億円(中央 約2.4億円)。需給調整に全振り(48コマ)なら約15.5万〜23.7万円/kW/年=年3.1億〜4.7億円です。参考までに、複合の市場平均2.83円で同じ30コマを組むと年約6,200万円──この約4倍差が「規制の統計」と「事業者の実感」の距離です。

控除側も先に開示します。確定できるものは小さい──EPRX売買手数料0.06円/ΔkW・30分(応札価格への転嫁がガイドライン上認められます)、JEPXスポット手数料0.03円/kWh、託送は蓄電池の特例で蓄電ロス分のみの課金。年額で見れば表示単位を動かしません。動かすのは非公開の一枚、アグリゲーター手数料です。公開料率はRE100電力の5%のみで、実勢とされる10〜30%(二次情報❓)を中央値ベースの年商約2.4億円に当てると年2,400万〜7,300万円が委託側に落ちる。上限価格の号数を論じる前に、この料率交渉が収益を動かします。

外部との整合も取れます。矢野経済研究所は蓄電所ビジネスの市場規模(事業者収入ベース)を2024年度450億円と推計しており、同時期の系統連系済み容量・約25万kWで割ると約18万円/kW/年──2MW換算で年3.6億円相当。全振り型の実勢レンジ(3.1億〜4.7億円)と同じ桁に着地します(年度と容量の時点ずれを含む粗い整合チェック⚠️)。接続申込みが1年で約3.9倍・2,431万kWへ殺到した理由を説明できるのは、複合平均の6千万円ではなく、こちらの数字です。

そして最大の注意点がpay-as-bid(マルチプライス)です。上表の「平均約定単価」は市場平均であって、個社の精算単価ではありません。電源種別で見ると、蓄電池の複合商品の落札単価は月次8.82〜13.49円/ΔkW・30分で、火力(2.16〜3.45円)の3〜6倍(2025年度1月の複合は蓄電池13.48円 vs 火力2.27円と約6倍)。一次の市場平均3.93円で48コマを組むと年約1.4億円、電池実勢8.8〜13.5円で組むと年3.1億〜4.7億円──この差そのものが「規制の統計」と「事業者の実感」の距離の実証です。本稿の実勢レンジ(03の本体行)は電池側の単価で組み、市場平均は規制側から見えている風景として併記に回します。
🚩 一次オフライン:いちばん稼げて、いちばん賞味期限が短い 2025年度に蓄電池が需給調整市場で実際に稼いだ主戦場は、一次調整力──とりわけオフライン枠です。対象は1MW以上10MW未満の高圧・特別高圧、つまり2MW基準機のど真ん中。電源種別データでは、蓄電池の一次調整力の落札単価は月次8.82〜13.52円/ΔkW・30分と旧上限(19.51円)に迫る水準で推移。さらにオフライン枠に限れば、落札量のほぼ全量(97.8%)を蓄電池が占め、平均落札単価14〜19円・充足率3.4%とされます(このオンライン/オフライン分離の数値は確報本文で未確認⚠️、13の❓一覧に開示)。応札すればほぼ約定する不足市場で、上限近くの値が付く──03の本体行と全振りレンジ(年3.1億〜4.7億円)の正体はこれで、実在した稼ぎです。本稿はこれを脚注ではなく本体として乗せました。そのうえで書いておくべきは、この収益こそ制度が真っ先に消しに来ていることです。上限15円はすでに施行済み、10円・7.21円への段階引下げ(方針決定・条件付)は今夏の実績を材料に判断され、募集量の1σ化で一次・二次①の数量自体も約13%縮小しました。いちばん稼げる商品は、いちばん食われやすい商品──管区で見た構図は、商品にもそのまま当てはまります。既保有者の正解は二枚腰です。今そこにある一次の収益は取り切る。ただし5年の収支線には、減衰カーブ(12)を敷いてから乗せる。

管区差はどう見るか。エリア別×商品別の約定単価は日次の確報値に数字として存在しますが、年間を俯瞰できる数表は公表されておらず、集計済みの年間実績・審議会資料でもエリア別単価はグラフ止まりです(13参照❓)。単価の管区差を数表で引けない以上、実務で効くのは札が通るか=扉が開いているかです。移行後28日間の一次調整力の不足率を9管区すべてで並べると──北陸75.8%・東京70.3%・中部66.1%・関西49.0%・九州42.4%・四国24.3%・中国22.8%、そして東北0.1%・北海道0.0%。ゼロの2管区には仕掛けがあります。両管区では揚水の随意契約(市場外調達)が募集を満たし、市場の扉が実質閉じていました(募集量控除の建付けは第109回制度検討作業部会 資料6が明記。控除期限は2026年3月)。その随契は北海道と東京で2026年3月末に終了──北海道は今年度からΔkWの扉が開き、東京はもともと大きかった空きがさらに広がりました。東北だけは随契が続き、閉じたままです。一方、旧制度の年間確報は「北海道・中国・四国エリア以外では4〜9割以上の調達不足」と注記しており、旧制度期の東北は不足側(=札が通る側)でした。移行を境に東北の扉が閉じ、中国・四国が開いた──03の実勢表は、この期間差をそのまま按分しています(随契の扱いは資料8等の整理に依拠❓)。

制度の先行きは段階を分けて書きます。上限15円・募集量1σ・手数料0.06円は施行済み。一方、10円・7.21円へのさらなる引下げは「競争状況に改善が見られない場合」の条件付きで方針決定──未公布・未施行の段階です。判断枠組みは前日取引開始後1・2・3・6ヶ月の実績検証で、軸は上限付近への応札集中の解消・不足率の改善・事業撤退の有無の三つ。1ヶ月時点の評価は「改善は見られたが完全には解消されていない」(安定供給WG資料8)として次段階を見送っており、夏季ピーク(7〜8月)の実績を経て2026年度下期に判断される見通しです。1段階の引下げごとにΔkW収益はほぼ比例で縮みます。需給調整依存度の高い収支計画は、この1変数でIRRが別物になります。

03 — 9管区×3市場を、1枚にする

3市場を、売上の大きい順に1枚へ積みます。本体=需給調整市場(02の実勢)、コア=JEPXアービトラージ(04で実測)、床=容量市場(05でFY2029約定単価×調整係数を確定)。需給調整のエリア別単価は年間の数表が公表されていないため(02・13参照)、管区差は単価ではなく扉の開閉(随契と不足率)で扱います。

02の実勢単価(電池の落札実勢8.8〜13.5円/ΔkW・30分)を、JEPX併用型(30コマ)で12ヶ月乗せると、上乗せは約9.7万〜14.8万円/kW/年(中央 約12.2万円=2MWで年約2.4億円分)。これを管区別の床+コア(04・05で確定)に、扉が開いていた期間だけ積みます──通年で開いていた5管区はフル、東北は旧制度期のみ(256/365日)、中国・四国は新制度期のみ(109/365日)、北海道はゼロ(随契終了により2026年度から開く可能性)。

エリア床+コア本体:需給調整 実勢30コマ・中央・期間按分実勢合計中央2MW年商中央
九州25,111≈122,300通年≈147,400≈2.95億円
東京22,324≈122,300通年≈144,600≈2.9億円
中部22,064≈122,300通年≈144,400≈2.9億円
北陸21,950≈122,300通年≈144,300≈2.9億円
関西21,698≈122,300通年≈144,000≈2.9億円
東北28,479≈85,800旧制度期のみ⚠️≈114,300≈2.3億円
四国22,521≈36,500新制度期のみ≈59,000≈1.2億円
中国22,291≈36,500新制度期のみ≈58,800≈1.2億円
北海道29,2070随契で閉→26年度から開く可能性≈2.9万+α≈0.6億円+α

単位:円/kW/年(名目kW)。実勢=電池実勢単価8.8〜13.5円の中央値11.2円×30コマ×開扉日数(幅:通年5管区で約9.7万〜14.8万円/kW/年、床+コア込みの合計はおおむね12.2万〜17.3万円=2MWで年約2.4億〜3.5億円)。扉の開閉は、旧制度期=年間確報注記(北海道・中国・四国以外は4〜9割不足)、新制度期=移行後28日の不足率(02)による。EPRX手数料(0.03→0.06円/ΔkW・30分)の控除は年▲400円程度で表示単位未満。アグリゲーター手数料は控除前(02参照)。

順位が入れ替わります。扉が通年で開いていた5管区(九州・東京・中部・北陸・関西)は、実勢でほぼ横並びの14.4万〜14.7万円/kW/年(中央)──2MWで年2.9〜3.0億円、首位は九州の約2.95億円。JEPXで首位・2位の北海道・東北は、随契に扉を塞がれてこの列に並べません。裁定の地図とΔkWの地図は、重なっていない──これがこの1年の管区選びの核心です。管区で差がつくのは、(1)扉が開いているか(随契と不足率)、(2)本体が制度に削られたあとに何が残るか=床+コア、の2点。だからこそ、次に床+コアだけを取り出します──「削られた後に残る差」の表です。そこでは、実勢で最下位に沈んだ北海道が首位に立つ。いちばん稼げる収益源は、いちばん食われやすく、いちばん稼げる管区は、扉の裏にある──構図は管区より先に、収益源そのものに現れています。

本体が制度に削られたあとに、何が残るか。床+コアの2層だけを取り出します。

順位エリア床:容量市場係数後・概算コア:JEPX器実測小計(円/kW/年)2MW年額
1北海道12,51516,69229,2075,841万円
2東北13,14515,33428,4795,696万円
3九州12,11013,00125,1115,022万円
4四国10,72011,80122,5214,504万円
5東京10,69511,62922,3244,465万円
6中国10,69511,59622,2914,458万円
7中部10,23011,83422,0644,413万円
8北陸10,64011,31021,9504,390万円
9関西10,24011,45821,6984,340万円

床=FY2029エリア別約定単価×4時間蓄電池の調整係数(年平均・概算🚩、05参照)。コア=04の実測器。いずれも名目2,000kW当たり。需給調整市場の上乗せは含まない。

図1 / 床(容量)+コア(JEPX器)の2層合算(円/kW/年・名目kW) 北海道29,207 東北28,479 九州25,111 四国22,521 東京22,324 中国22,291 中部22,064 北陸21,950 関西21,698 床=容量市場(FY2029・係数後概算) コア=JEPX器(実測) 首位と最下位の差 7,509円/kW/年 — 2MWで年1,502万円
図1 — 床+コアの2層でも、管区差は年1,500万円級で開く
床+コアの首位・北海道と最下位・関西の差は7,509円/kW/年、2MWで年1,502万円、20年でおよそ3.0億円。前稿の「契約設計が20年で2億円」を上回る立地差で、しかも本体が削られたあとにも残る差です。実勢が横並びの5管区の中でも、首位・九州と最下位・関西の床+コア差は年683万円・20年で約1.4億円──最後に差を作るのは、この2層の厚みです。

04 — JEPX:どこで稼げるかは、この1年で書き換わった

第2の柱、JEPXです。管区差が最も鮮明に出る層で、直近12ヶ月で勢力図が入れ替わりました。基準機のアービトラージ器(円/kW/年)と、その前年比を9エリアで並べます。

エリア器(円/kW/年)2MW年額換算前年 器粗利 前年比
北海道16,6923,338万円11,132+49.9%
東北15,3343,067万円11,147+37.6%
九州13,0012,600万円14,584−10.9%
中部11,8342,367万円11,715+1.0%
四国11,8012,360万円11,982−1.5%
東京11,6292,326万円8,331+39.6%
中国11,5962,319万円12,057−3.8%
関西11,4582,292万円11,865−3.4%
北陸11,3102,262万円11,965−5.5%

出典:JEPXスポット取引結果CSV(2024〜2026年度)をScienceXが01の計算仕様で集計。完全予見の理論上限(器)。前年窓=2024.07–2025.06。

図2 / アービトラージ粗利の前年比(実測・分析窓 vs 前年同12ヶ月) 0% 北海道+49.9% 東京+39.6% 東北+37.6% 中部+1.0% 四国−1.5% 関西−3.4% 中国−3.8% 北陸−5.5% 九州−10.9% 東日本3エリアが3〜5割の伸び。西日本は一帯で微減、九州だけが2桁減
図2 — 東西逆転は実測で確認できる(出典:JEPX公表データよりScienceX算定)

読み方は二つあります。水準で見ると、九州はまだ全国3位です。太陽光の余剰で昼の価格が沈み、充電原価が全国で最も安い構造は健在で、「九州はもう稼げない」は言い過ぎになります。ただし方向で見ると、9エリアで唯一、明確に縮んでいる。北陸・関西・中国・四国も3〜5%の微減で、伸びているのは東日本の3エリアだけです。ここで当社自身の前提も訂正します。前稿までの整理では「縮小は九州だけ」と見ていましたが、最新窓で計算し直すと西日本5管区がそろって小幅マイナスに沈んでいました。縮小は九州単独ではなく西日本全体の傾向で、九州はその最大値、という位置づけです。伸びの主因は2026年春の東日本の価格急騰(07で詳述)、九州の縮小の構造要因は09で扱います。

同じ「器」でも、取り方は管区で違います。エリアプライスがシステムプライスから乖離したコマを、高値側(域内が高い=輸入制約)と安値側(域内が安い=余剰の締め出し)に分けて数えました。この方向別集計は一次資料に存在しないため、当社がJEPXのエリア/システムプライスを全コマ突合して作成したものです。

管区安値側の割合高値側の割合安値側≥5円コマ高値側≥5円コマ稼ぎ方の型
東京6.1%85.0%112,054純・高値側(輸入制約)。値差は日内の形で作る
中部24.0%66.4%521,074高値側寄り
北海道29.4%62.9%1,0461,513双方向・深い(底も天井も域内)
東北27.5%62.7%910616双方向
北陸54.7%35.9%720538中間
関西60.6%30.1%751501中間
中国70.8%20.2%1,514100安値側
九州77.9%13.2%2,46445純・安値側(締め出し)。底で稼ぐ
四国84.8%8.6%4,58416純・安値側

出典:JEPX約定結果CSVをScienceX集計(2025.07–2026.06、|エリア−システム|>0.009円を分断の代理指標として方向別に計数)。

東京は85%のコマで高値側──充電すら高値側で行う管区です。値差は分断ではなく日内の形(春の昼の沈みと夕方の立ち上がり)で作るしかない。対極の四国・九州・中国は7〜8割が安値側で、5円以上深く沈むコマが四国4,584・九州2,464と桁違いに多い一方、天井が立ちません──底で拾う型です。そして北海道・東北だけが、深い底と高い天井の両方を域内に持ちます。首位交代の機構は、この一枚に集約されます。北海道はさらに、2025年12月8日の青森県東方沖地震で北本連系設備が停止した期間(〜2026年1月31日復旧)に高値側分断が79.8%へ跳ねました(平時68.6%)。連系線が細いことの直接証拠です。

05 — 容量市場:「15,112円」は名目である

床から確定させます。FY2029メインオークション(2026年1月20日公表・1月23日訂正)は、約定総額約2兆2,094億円(前年比+19%)・経過措置考慮後の総平均単価約13,303円/kWの過去最高で、第1回を除くと初めて、全エリアの約定単価が指標価格(Net CONE:10,075円/kW)を上回りました。上限価格(指標価格の1.5倍=15,112.5円、円未満切捨で15,112円/kW)に厳密に張り付いたのは九州のみで、東北・東京は15,111円/kW──上限を1円下回る約定です。複数の業界メディアが「3エリアが上限15,112円」と書いていますが、OCCTO原文と1円ずれています。実務的な意味はほぼないものの、二次情報を経由すると原文の数字は静かに壊れる、という実例として残します。エリア別・年度別に並べると次のとおりで、既保有者はFY2026〜28の列で受渡収入を確定計上できます。

エリアFY2026FY2027FY2028FY2029FY2029 4h係数年平均・概算2MW実受取FY2029・概算
北海道8,749※13,28714,81214,972約83.6%約2,503万円
東北5,8339,04414,81215,111約87.0%約2,629万円
東京5,8349,55514,81215,111約70.8%約2,139万円
中部5,8327,82310,28012,388約82.6%約2,046万円
北陸5,8327,6388,78512,388約85.9%約2,128万円
関西5,8327,6388,78512,388約82.7%約2,048万円
中国5,8327,6388,78512,388約86.3%約2,139万円
四国5,8327,6388,78512,388約86.6%約2,144万円
九州8,748※11,457※13,177※15,112約80.1%約2,422万円

単位:円/kW(エリアプライス)。※はマルチプライス方式適用エリア。FY2029はマルチプライス適用なし。出典:OCCTO各年度約定結果PDF、FY2029調整係数表(2025年7月31日公表)。実受取=約定単価×(2,000kW×年平均係数)の概算🚩──正式には月別係数で積み上げます。

右2列が本節の主題です。蓄電池を安定電源(期待容量1,000kW以上・1日1回連続3時間以上)で登録する場合、契約容量は名目ではなく期待容量=設備容量×調整係数で決まります。係数表は純揚水と同一のもの(エリア×月×放電可能時間)が使われ、4時間機でもエリア・月により約56〜90%。とりわけ東京は年平均で約70.8%しか評価されません。結果、約定単価が最高の東京(15,111円)の実受取は約2,139万円で、単価12,388円の中国と同額になります。実受取の1位は、単価と係数の両方が高い東北です。「15,112円×2,000kW=3,022万円」という名目計算は上限値であって、意思決定には使えません。

新規参入の観点では、経過措置(2010年度末以前建設の電源への控除)はFY2029オークションが最後で、そもそも新設蓄電池は経過年数控除の対象外です。長期脱炭素電源オークションは第3回から蓄電池の要件が設備容量30MW以上・放電継続6時間以上に統一されたため、2MW・4時間機は対象外──容量収入の入口はメインオークション一本になります。その次回、FY2030向けメインオークションが「これから買う人」の初回エントリ機会で、時系列は次のとおりです。

FY2030メインオークションの時間割(✅確定分)
2026/6/30〜7/13:募集要綱・約款の意見募集 / 2026/7/8:制度説明会 / 7月末頃:調整係数・需要曲線の公表(❓例年パターン、FY2029係数は2025/7/31公表) / 2026年秋:応札受付 / 2027年1月頃:約定結果公表 ── 並行して、指標価格を約2倍(約2.05万円/kW、上限3.075万円/kW)へ引き上げる案と、シングルプライス約定の2段階化が制度検討作業部会(第112〜114回、2026年3〜5月)で審議されています。FY2030オークションへの反映が想定されますが、審議中──条文公布・施行前であり、既定事実ではありません。反映されれば床の水準は構造的に切り上がります。応札判断は7月末の係数・需要曲線と募集要綱最終版を待って確定させるのが順当です。落札した場合の初回受取は実需給2030年度──各月支払は2030年9月〜2031年8月(約款第8条。年度途中運開は月数按分)。なお応札を逃した年度の受け皿だった追加オークションは、FY2030以降その調達分をメインで全量調達する方針に変わり、役割が縮みます。メインを逃すと丸1年待つ構図です。

もう一つの入口が、約定済み案件の承継です。容量確保契約約款第26条により、OCCTOの同意を得て契約上の地位を譲渡でき、将来の容量収入・実需給年度はそのまま引き継がれます──リクワイアメントの達成状況ごと承継される点がデューデリの確認項目で、当社が扱う案件譲渡の実務では、残存契約年度・約定価格・余力活用契約の有無が価格根拠の中核に座ります。新設の応札(2026年秋)と既設の承継。買い手の入口は、この二つです。

🚩 床には義務が付く 容量確保契約のリクワイアメント未達には経済的ペナルティがあり、上限は年間で契約金額×110%、月間で18.3%。容量停止計画として認められるのは年8,640コマ(180日相当)までで、超過未達成コマには追加のペナルティが積み上がります。市場応札・供給指示のペナルティ換算時間Zは実需給2026年度で90時間(FY2024の30時間から拡大)。床は「もらえる収入」ではなく「義務と引き換えの収入」です。稼働率・実効性テストの達成体制と、8,640コマ枠の中でのメンテ計画(07の冬に寄せる設計)が前提になります。

06 — これから買う人へ:戦略で管区が変わる

02〜05を重ねると、答えの構造はこうなります。扉が通年で開いていた5管区なら、実勢スナップショットはほぼ横並び(2MWで年2.9〜3.0億円・中央値)。だから「どこを買うか」は、扉の開閉(随契と不足率)、本体が削られたあとに何が残るか(床+コア)、そしてどの運用戦略で取るか──三つで決まります。

実勢首位・床重視なら

九州

≈2.95億円/年(実勢合計・首位)

扉は開き(不足率42.4%)、床は上限水準の15,112円/kW、0.01円コマ年1,146回で充電原価は全国最安級。ただしJEPXは唯一の2桁減で縮小は現在進行形──契約申込み590万kW(全国最大)の先行連系を前提に、接続費が安く用地確度の高い案件を選ぶこと。先行者利益の残存期間を測って買う管区です。

イベント・調整力主体なら

東京

+39.6%(JEPX粗利 前年比)

実勢合計は年約2.9億円で、水準は5位でも伸びは2位。30円/kWh以上の高値コマが年472回と9エリア最多、一次不足率70.3%でΔkWの約定余地も最大級。減点は容量係数70.8%と、上限引下げがスパイク収益を直撃すること。

アービトラージ主体なら

東北

5,696万円/年(床+コア)

JEPX器2位(年3,067万円)に加え、単価15,111円×係数87.0%で容量の実受取(約2,629万円)が9エリア首位。ただしΔkWは随契が続き扉が閉じたまま──実勢合計は≈2.3億円に沈む。買うなら随契の解消を条件に置き、09の「全国の4割」を監視すること。

🚩 では、静的1位の北海道は 床+コアでは首位(29,207円/kW/年=2MWで年5,841万円)、実勢では最下位──この12ヶ月、ΔkWの扉は揚水の随意契約に塞がれていました。その随契が2026年3月末で終了し、今年度からJEPX首位×ΔkWの両取りが初めて成立しうる管区に変わります。ただし時限つきです。制度上は「必要あらば再度の控除の検討はあり得る」とされ、扉が開き続ける保証はありません。カニバリ指標0.383、新北本120万kW(2027年度末=2028年3月)、日本海ルートHVDCの実施案期限(2026年12月26日)──高収益の窓が「いつまでか」を問い続ける管区であり、買うなら出口(値差圧縮後の床収支)と、一次不足率が実際に立ち上がるかの確認❓を条件に。
第2部いまの管区で、どう稼ぐかすでに持っている人へ──季節と毎朝の運用

07 — 春が最大の収穫期になった

すでに持っている人の話に移ります。季節の常識が、この12ヶ月で書き換わりました。基準機の粗利を季節で切ると、9エリアすべてで春(3〜5月)が年間最大、冬(12〜2月)が年間最小です。

季節(分析窓)北海道東北東京九州9エリア共通の型
春(3–5月)5,8486,5575,4625,126全エリアで年間最大。東北は年間粗利の43%が春に集中
夏(6–8月)4,5274,2342,9562,971第2の収穫期。夕方スパイク
秋(9–11月)4,1192,9651,8242,774中位。北海道のみ高値イベント継続
冬(12–2月)2,1981,5771,3872,130全エリアで最小。12月のスプレッドが年間最弱

単位:円/kW/期(基準機・完全予見の器)。出典:JEPX公表データよりScienceX算定。

「冬の夕方に稼ぐ」という旧常識は、少なくともこの窓では成立していません。高値イベントで確かめます。東京の30円/kWh以上のコマは春279回・夏154回・秋35回・冬4回。50円以上に絞ると春30回・夏4回・秋冬0回(年34コマ)です。しかも前年同期の東京は30円超が春0回・年間101回でした──つまりこの春偏重は恒常的な性質ではなく、2026年春に新しく現れた構造です(2026年4〜6月の東京の平均エリアプライスは19.35円/kWhで、分析窓通年の14.32円を大きく上回ります)。

図3 / 東京:30円/kWh以上の高値コマ数(分析窓・実測) 279 154 35 4 前年同期の東京は30円超が春0回・年間101回。春偏重は2026年春に新出した構造
図3 — 「高値は冬の夕方」の旧常識は、この窓では成立しない(出典:JEPX公表データよりScienceX算定)

極値そのものも消えました。100円/kWh以上のコマは12ヶ月で全国ゼロ(前年同期は中部の2コマのみ)、75円以上ですら北海道の1コマ(80.0円、2025年10月23日)だけです。機構も一次資料で追えます──女川2号・島根2号に続く柏崎刈羽6号の発送電(2026年2月)で予備率が回復して天井の希少性が消え、太陽光が昼の底を深くした。高値は「まれな一撃」から「春の広い値差」へ、稼ぎ方そのものが変質しています。もう一つの初物として、東京が2026年3月1日にエリア初の再エネ出力制御(1,180MW)を実施し、制御実績が全9エリアに出揃いました。春の底は、東でもまだ深くなる方向です。

季節の常識が崩れる中で唯一の例外は北海道で、冬にも30円超が73コマ立ちました。ただしその71コマは2025年12月8日〜2026年1月31日の北本連系設備の非計画停止(04の地震停止)に集中しており、季節の常態ではなく一過性の事象です。「北海道は冬にも稼げる」を恒常的な立地優位と読むのは危険で、平時の冬は他エリア同様に薄いと見るのが実勢です。

充電側も春です。下限0.01円/kWhへの張り付きコマ数(年間)は四国1,148回・九州1,146回が突出し、東北646回・北海道598回が前年から4〜5割増。いずれも大半が春に発生しています。太陽光余剰で昼が沈み、夕方に跳ねる──ダックカーブの深化が、充電原価の最小化と売り単価の上振れを同じ季節に運んでくる構図です。以上を1枚のカレンダーに落とします。

季節運用方針(実測根拠つき)
春(3–5月)年間最大の収穫期。制御日の0.01円昼充電と平常日の未明充電を使い分け、夕方売りに運用資源を集中。予見精度と売りタイミングの巧拙が年間収益の差の最大要因になる(東北は年間の43%がここ)。メンテはこの季節に入れない
夏(6–8月)第2収穫期。夕方スパイク狙い(東京の50円超は夏4コマ)。同時に、7〜8月のピーク実績は需給調整市場の上限10円引下げ判断の材料になるため、制度監視も兼ねる
秋(9–11月)中位。北海道以外はΔkW(複合・二次②等)の比重を上げる選択肢。北海道は高値イベントが続くため売り姿勢を維持
冬(12–2月)全エリア最弱。計画メンテ・容量市場の実効性テスト対応・容量停止計画(年8,640コマ枠)をここへ寄せ、昼充電・夕放電の枠内でΔkWフロアを厚くして春に備える

08 — 3月14日からの、毎朝の仕事

前日・30分化は、運用の時間軸そのものを変えました。週間単位で決めていたΔkWの供出が、毎朝「翌日48コマをJEPXに何コマ、ΔkWに何コマ配分するか」を決める日次業務になっています。制度上、余剰電力はスポットへの全量応札が求められ、売れ残り分を需給調整市場へ応札する建付けのため、「JEPXを完全に捨てて48コマ全部をΔkWへ」という運用はそもそも成立しにくく、実態は充放電18コマ+ΔkW30コマ型の併用に収束します。ΔkWは容量(リザーブ)商品で、供出可能状態を保てば放電エネルギーを消費せずに応札できるため、裁定との併用が成り立ちます。手数料0.06円/ΔkW・30分はガイドライン上、応札価格に含めることが認められており、純粋な持ち出しではありません。

配分の骨格は、充電帯の反転が教えてくれます。日次の最安コマが昼(10〜14時)に落ちた比率を東京で実測すると、10月35%→11月83%→1月87%→2月79%──秋冬の蓄電池は「昼に安く詰めて、夕方の点灯ピークに吐く」機械です。これが5月には29%(年間最低)まで反転し、充電帯は未明の谷へ戻る(9エリア平均でも11月84%→5月29%と同型)。出力制御ピーク期は昼のマイナス圏・0.01円と夕方高騰のレンジが年間最大になり、昼は放電側の主戦場へ変わるからです。この昼⇄未明の往復が、季節運用の背骨になります。

ΔkW側の実務も二点だけ。アセスメントは指令値±10%・滞在率90%が適合ライン(方式Ⅱ)で、同一商品で月3回の不適合は新規取引停止と実働試験のやり直しに直結します──冬にΔkW比重を上げる分、ここが季節リスクです。もう一点、北海道・東京では揚水の随意契約が2026年3月末で終了し、高速商品の募集に空きが生まれました──両管区の保有者には、今年度のΔkW側の追い風です。

この配分判断は、SOC管理・アセスメント遵守・pay-as-bidの応札価格設計を毎日こなす仕事です。自社運用でも委託でも、アグリゲーター(運用者)の選定基準は「日次のコ・オプティマイズをどれだけの精度で回せるか」の一点──02の手数料10〜30%はこの巧拙への対価です──に置くのが、この制度環境での結論になります。前年比+40%の東京と−11%の九州が同じ12ヶ月に併存した事実は、立地と同じくらい、運用の巧拙が結果を分けることの裏返しでもあります。

第3部3〜5年:この数字は、どの速さで削られるかパイプライン・需要・連系線・制度で読む

09 — 供給:パイプラインはどこに積み上がっているか

管区の3〜5年は、供給(蓄電池パイプライン)・需要(大型立地)・系統(連系線)・制度の4つの力で決まります。まず供給から。将来のスプレッドを削る最大の変数は、連系線より先に、蓄電池自身の連系ラッシュです。

エリア契約申込み万kW・2025/12末接続検討万kW・2025/6末カニバリ指標契約GW÷2035最大需要GW
九州590.1全国最大1,681分母未確認
東京516.71,6520.088
東北492.05,660全国の4割0.383
中国413.01,8260.408最上位🚩
中部344.01,162
関西240.06880.087
北海道176.08650.383
北陸59.0451
四国38.03370.089

系統用蓄電池(高圧以上)。契約申込み=次世代電力系統WG 第7回 資料1-1(2026/2/9、2025年12月末断面・全国計2,868.8万kW)、接続検討=同 第4回 資料4(2025/9/24、2025年6月末断面・全国約1.43億kW)。連系済みは約25万kW(2025年6月末)→約64万kW(2025年12月末⚠️後者は要一次確認)で、パイプラインと実稼働の乖離が極めて大きい。カニバリ指標の分母はOCCTO 2026年度需要想定の2035年度最大需要(中部・北陸・九州は詳細表未確認のため❓)。

時点で首位が入れ替わっています。2025年6月末断面の契約申込みは東北400万kWが全国最大でしたが、12月末断面では九州が590万kWで首位──半年で+285万kW、先行連系の勢いは西で最速です。接続検討の首位は一貫して東北の5,660万kW=全国の約4割で、しかも東北の需要は横ばい〜微減。積み上がる供給を域内で吸収できず、東京向け送電に依存する構図は変わりません。需要比では中国が0.408で最上位に浮上──契約申込みが半年で173→413万kWへ倍増し、需要10GWの管区に4.1GWが積まれた計算です。北海道・東北の0.383がこれに続き、東京は絶対量こそ516.7万kWと大きいものの需要が桁違いのため指標上は最も健全。九州の縮小(−10.9%)は、この先行連系に出力制御率の高さ(2024年度実績4.8%、2026年度見通し6.9%で全国最高。全国の制御量は約25.3億kWh・前年比約1.25倍の見通し)が重なった結果と読むのが一次資料と整合します。規律側も出揃いました──接続検討の件数上限、土地権原・保証金の厳格化に続き、2026年6月からは契約申込みに発電側(放電)+需要側(充電)の同時受付が要件化。空押さえの排除が進むほど、残る枠の希少価値は上がります。

10 — 需要と系統:東で増える需要、遅れて来る送電線

需要側の主役は東です。東京エリアの最大需要は2025年度54,529MW→2035年度58,880MWと約4.3GW増(データセンター・半導体の個別計上が主因。印西・白井では約250MW級のDCキャンパス開発も始動)。北海道は年率+1.2%と全国最高の伸びで、千歳のRapidus(2027年パイロット稼働予定)を抱えます。九州は熊本のTSMC/JASM第2工場が2027年末初回出荷・2029年12月整備完了のスケジュール。ただしRapidusとTSMC第2の契約電力(MW)は事業者の一次資料では非公表(❓報道・試算値のみ)で、需要増の規模は幅を持って見る必要があります。

連系設備現行増強後完了時期・状態
北海道・本州間(北本)90万kW120万kW整備中 2027年度末(2028年3月)
日本海ルートHVDC(北海道→東京)+200万kW実施案提出期限 2026年12月26日(1年延長済み・資金調達等が課題)
東北・東京間約573万kW1,028万kW整備中 2027年11月(当面の東京向き実効は680〜850万kW、2030年度以降920〜960万kWへ)
FC(東京・中部間)210万kW300万kW整備中 2027年度末
関門(中国・九州間)300万kW増強幅も乖離🚩一次資料間で乖離 広域系統整備計画は+100万kW程度・2038年度末(2039年3月)、エネ庁系統図は600万kW・2030年6月──運転開始年・増強幅とも未確定として両論併記❓

出典:OCCTO広域系統整備委員会 第96・99・101回資料・2025/12/24プレス(HVDC実施案期限の1年延長)、広域系統整備計画(2025/10/15届出)、東地域計画策定プロセス、資源エネルギー庁系統図(2025年5月)ほか。関門は2024年度実績で年間約24%の時間帯に市場分断が発生。

増強の多くは2027年度末〜2039年に集中し、3〜5年の予測期間内に系統制約が抜本的に緩む場面は限られます。とりわけ北海道・東北の余剰を東京の需要増へ流せるかは、東北東京間増強(2027年11月)と日本海ルートHVDCの帰趨に掛かっており、後者の実施案が期限までに出るかどうかが、北海道の5年を分ける最大の分岐点です。一方、東北東京間だけは2027年11月に1,028万kWへ増強が完成し、56.6GWの検討残高と増強がほぼ同時に走る──全国一律の「飽和先行」ではなく、東北東京軸は拮抗と読むのが正確です。

11 — 制度:施行済み・方針決定・審議中を、混ぜない

収益前提を変える制度変更を、規制段階のラベルつきで一枚にします。段階を混ぜた瞬間に事業計画は狂う──施行済みの三重圧縮と、審議中の指標価格倍増は、確度がまるで違います。

項目内容規制段階時期
ΔkW上限 19.51→15円複合・一次・二次①✅施行済み2026/3/14受渡分〜
募集量 3σ→1σ一次・二次①約13%減、複合50%増の試算✅施行済み2026/3/14受渡分〜
EPRX手数料 0.03→0.06円売買手数料倍増(税抜)✅施行済み実需給2026/4/1〜
段階引下げ 10→7.21円競争改善なき場合の条件付きトリガー⚠️方針決定・未発動夏実績で2026年度下期判断
再給電方式(一定の順序)混雑ローカル系統で蓄電池の放電抑制は火力の次・再エネの前✅施行済み2026/4/1〜
容量市場 指標価格 約2倍10,075→約2.05万円/kW(建設費12.0→26.8万円/kW・設備140→60万kW改定が根拠)⚠️審議中FY2030メインへ反映想定・7月末需要曲線待ち
約定方式2段階化シングルプライス化+指標価格以下は指標価格を上限に約定⚠️要綱案反映(施行前)FY2030メイン(2026年秋応札)
経過措置の廃止経過年数・入札内容控除を撤廃⚠️要綱案反映(施行前)実需給2030年度〜
同時市場(kWh・ΔkW同時最適化)両市場の同時約定。多市場の積み上げ収益は構造的に縮小しうる⚠️方針決定・詳細設計2030年代前半目標(一部報道の「2028年」は一次資料の裏付けなし)
非化石価値の按分帰属(FIP併設)放電量のうち発電設備由来分のみ按分帰属(系統充電由来は対象外。独立系統用の個別ルールは❓)✅施行済み2025年4月発電分〜
接続検討数の事業者別上限エリア別上限(東京11・関西12・中部7ほか)⚠️運用開始前2026/8/1運用開始
使用権原を証する書類の提出要件化連系承諾後2ヶ月以内。未提出で連系予約取消⚠️予定2026/10/1予定

出典:資源エネルギー庁 制度検討作業部会 第108〜114回・電力安定供給WG第1回、同時市場の在り方等に関する検討会 第二次中間取りまとめ(2025/10/15)、次世代電力系統WG 第6・7・11回、EPRX(2026/2/5・2/13)、OCCTO FY2030募集要綱(案)(2026/6/30)。

読み筋はこうです。ΔkW側の逆風はすべて施行済みで不可逆、次の分岐は夏実績による10円発動の可否だけ。容量側の追い風(指標価格倍増)は審議中で、FY2030メインに反映されるかは7月末の需要曲線で初めて確定します。直近12ヶ月の主柱はなおΔkWですが、実勢がフロア(市場平均側)へ収斂すれば主柱は容量へ移る──その分岐を握るのが夏実績と7月末の需要曲線です。

最後の2行は開発側の地殻変動です。接続検討の上限と使用権原の要件化で、新規に系統枠を取りにいくハードルは今夏から明確に上がります。裏返せば、接続検討回答や契約申込みを既に確保している案件の希少価値は相対的に上昇します。買い手にとって「良い立地の接続枠」は、これまで以上に時間で買えない資産になります。

図4 / いまの伸び × 将来の食われやすさ(カニバリ指標が確定した6エリア) 0% → カニバリ指標(契約申込みGW〔2025/12末〕÷2035年度最大需要GW) ↑ 粗利 前年比(実測) 北海道 東北 中国 東京 四国 関西 右上=いま強く、予約も最重量 右下=伸びる前から予約済み 左上=伸びて、まだ健全 中部・北陸・九州は分母(2035最大需要)が未確認のため未プロット❓
図4 — 北海道・東北は右上、中国は右下に現れた。東京だけが左上(出典:JEPX実測×エネ庁系統WG×OCCTO需要想定よりScienceX作成)

12 — 管区別の読みと、減衰カーブ(3〜5年)

エリア3〜5年の読み主根拠
九州実勢スナップショット首位。ただし裁定は現在進行形で縮小。先行者利益の残存期間を測って買う実勢合計≈2.95億円(扉○×床15,112円×充電最安)/−10.9%は先行連系+制御率の構造/関門の運開年が2030/6か2039/3かで割れる🚩/TSMC需要増(MW❓)
東京伸びしろ管区。扉も広く開き、イベント×調整力の運用力で差がつく+39.6%・高値イベント最多/随契終了で扉さらに拡大・一次不足率70.3%/需要+4.3GW・制御蓋然性最低/減点:係数70.8%・上限引下げ
東北乖離最大。床コア最厚だが扉が閉じ、頭上に全国の4割。買うなら回収前倒しか出口を設計に床コア2位・容量実受取1位の一方、随契継続でΔkWは閉(実勢合計≈2.3億円)/接続検討5,660万kW=全国の4割×需要微減/2027/11連系線増強がカニバリを加速も
北海道JEPX王者×扉が開いた年。時限つきの両取り候補。値差圧縮後の床収支まで引いてから買う+49.9%実測/随契終了(2026/3末)でΔkWの扉が今年度から開く(再控除の可能性は残る❓)/カニバリ0.383/HVDC期限2026/12/26・新北本2028/3の時限/Rapidus需要(MW❓)
中部床は中位、ΔkWに妙味。堅実な次点候補一次不足率66.1%/需要は大都市圏で厚い/JEPX前年比+1.0%
北陸ΔkWの扉は最も広く開くが、市場が小さい一次不足率75.8%で全国最高/契約申込み59万kWと薄商い
関西合算最下位。低位安定を許容できる資本向け器合算21,698円/出力制御は低位/競合環境は厳しめ
中国中位だが、カニバリ指標は9管区最上位。関門の運開年待ち契約申込みが半年で173→413万kWへ倍増しカニバリ0.408で全国最上位🚩/扉は新制度から開いた(不足率22.8%)/制御率上昇傾向
四国充電原価の意外な優位。扉は新制度から開いた。小規模ゆえ選別で0.01円コマ1,148回で全国最多/不足率24.3%/需要は全国最大の減少率

ここまでを素直に読めば、3〜5年の本体は「管区選び」より先に減衰カーブです。扉5管区の実勢スナップショットは中央14万円/kW/年台──2MWで年2.9〜3.0億円。これが、上限15円→10円→7.21円の段階引下げ、募集量1σ化、同時市場(2030年代前半目標)で、どの速度で削られるか。下表はその着地点(引下げが進み、電池実勢が市場平均側へ収斂した後の巡航水準)を、2MWの年商に直した推計レンジです。前提を明示した推計であり、確定値ではありません。強気=ΔkW上限15円維持・容量の指標価格2倍化がFY2030に反映・同時市場は遅延。中立=上限10円へ1段階引下げ・2倍化反映・競合は緩やかに増加。弱気=上限7.21円到達・競合急増・同時市場が期間内に部分適用。

エリア強気中立弱気
東京≈8,600万円≈6,800万円≈5,200万円
東北≈8,400万円≈6,600万円≈5,200万円
北海道≈8,000万円≈6,400万円≈5,000万円
九州≈7,000万円≈5,800万円≈4,400万円
中部・中国・関西≈6,200〜6,400万円≈5,200〜5,400万円≈4,200〜4,400万円
北陸・四国≈6,000万円≈5,000万円≈4,000万円

単位:2MW年商の概算(万円/年)。円/kW/年に直すとおおむね2.0万〜4.3万円のレンジ(名目2,000kW割り)。一次資料の制度パラメータと本稿の実測を組み合わせた推計レンジ。個別案件の接続費・工事費負担金・運用力で大きく変動します。

13 — 監視トリガーと、まだ分からないこと

この読みを変えうるイベントは、日付つきで並べられます。チェックボックスは監視用に──公表・判断が出るたびに、本稿の該当節を更新します。

8判定を動かす監視カレンダー
0/8

そして、調べても分からなかったことを分からないまま置きます。制度の不透明さは、それ自体が投資判断の材料です。

❓ 検証不能・公表待ち状態照会先
需給調整市場のエリア別平均約定単価(年間数表)日次確報値に数字は存在(エリア×商品別)。年間の数表は未公表で、集計済み資料はグラフのみEPRX問い合わせフォーム
新制度期(2026/3/14〜6/30)の通期確報本稿の新制度値は28日間速報の代理値EPRX
新制度期の電池実勢落札単価(電源種別)未公表。旧制度期バンド(8.8〜13.5円)の外挿で代理EPRX/電力安定供給WG
一次オフラインの蓄電池シェア97.8%の一次出所確報本文では未確認(⚠️集計値)EPRX/制度検討作業部会事務局
揚水随契のエリア別実態と終了範囲北海道・東京の2026/3末終了・東北継続は資料8等の整理に依拠(原典スライド未確認)電力安定供給WG事務局
FY2030 調整係数・需要曲線(指標価格の確定値)7月末公表見込み。公表後に05を更新OCCTO容量市場窓口/資源エネルギー庁 電力基盤整備課 03-3501-1749
上限10円への段階引下げの発動可否・時期方針決定・条件付トリガー未発動制度検討作業部会(2026年度下期審議見込み)
連系済み容量 約64万kW(2025/12末)二次情報のみ(確定値は25万kW・2025/6末)資源エネルギー庁 次世代電力系統WG
関門連系線の運転開始年・増強幅🚩一次資料間で乖離(600万kW・2030/6 vs +100万kW程度・2038年度末)OCCTO広域系統整備委員会事務局
中部・北陸・九州の2035年度最大需要詳細表確定後にカニバリ指標を9エリア完成OCCTO需要想定
アグリゲーター手数料の実勢料率公表はRE100電力5%のみ・10〜30%は二次各社見積り比較(NDA下開示の可能性)
TSMC/JASM第2工場・Rapidusの契約電力(MW)事業者一次資料では非公表報道・研究機関試算のみ

ヌル所見(見つからなかったこと自体の報告):JEPXスポットは当年・前年とも365日×48コマが完全に揃い欠測・補間ゼロ。100円/kWh超のコマは当年窓で全国ゼロ(前年は中部の2コマのみ)。二次①の新制度単独実績は応札僅少のため非公表。実需給2027〜2029年度の追加オークションは未開催(メイン一本化方針の傍証)。北陸・四国はDC・半導体の需要個別計上なし。

結 — 静的な1位を買うか、5年の耐性を買うか

直近12ヶ月のスナップショットを実勢で組むと、扉が開いていた5管区は2MWで年2.9〜3.0億円(中央値)とほぼ横並びで、首位は九州の約2.95億円でした。JEPXで首位・2位の北海道・東北は、揚水の随意契約に扉を塞がれてこの列に並べない──裁定の地図とΔkWの地図は重なりません。収益の本体は管区ではなく需給調整市場そのものにあり、その本体こそ制度が段階的に削りにいく対象です。削られた後に残る床+コアで見れば北海道・東北が厚く、北海道は随契終了で今年度から両扉が開く時限つきの候補に変わり、東北は全国の4割の接続検討を頭上に載せたまま扉が閉じている。東京は床コア5位ながら、伸び・イベント・約定余地・需要の全部が上を向く唯一の管区です。

つまり「どの管区がおすすめか」への正直な答えは、静的なランキングの1位ではありません。いまの順位表と、5年の耐性は別の表です。アービトラージで攻めるのか、イベントと調整力で取るのか、床を固めて選別買いに徹するのか──戦略を先に決めれば、管区は決まります。あとは接続枠・工事費負担金・契約設計という個別条件が、同じ管区の中でさらに数千万円単位の差を作ります。

ScienceXは、9管区それぞれで開発権・案件の仲介を行っています。本稿の統計は市場全体の話ですが、投資判断を最後に分けるのは個別案件の接続条件と契約状態です。管区の選定から個別案件の目利きまで、実測データと同じ精度でお手伝いします。

出典・計算仕様(2026年7月5日時点)

管区の選定から、個別案件の目利きまで

本稿は公表データに基づく市場分析です。9管区それぞれの実在案件(接続枠・工事費負担金・契約状態・想定収支)は、お問い合わせ後にNDA締結のうえ個別にお出しします。保有資産の運用見直し(市場配分・季節計画)のご相談にも応じます。

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