Market & Industry / 系統用蓄電池

系統用蓄電池の市場とは
― 需給ひっ迫と調整力市場の今

再生可能エネルギーの拡大とデータセンター需要で必要性が高まる一方、供給はほぼ空。系統用蓄電池が担う役割と、調整力・容量・卸電力の各市場のしくみを、独立系の技術DD会社サイエンスエックスが中立に解説します。

需要 vs 実装 ── 系統用蓄電池(全国)
接続申込(参入したい量)約2,400万kW / 前年比 3.9倍
連系済み(実際に建っている量)実現率 0.3%

必要とされているのに、ほぼ建っていない。= 確定・連系済みの蓄電所は、希少。

高圧 2MW級
普及が進む主流の設備規模
三市場
調整力・容量・卸電力(JEPX)
ΔkW への対価
待機できる容量に支払い
実現率 0.3%
連系済みは申込量のごく一部
再エネ 40〜50%
2040年 国の方針(第7次エネ基)
本ページは、系統用蓄電池に関する市場・事業の情報提供を目的とするものであり、特定の有価証券・匿名組合出資持分その他の金融商品の取得を勧誘・推奨するものではありません。
Why Storage — 社会性 × 市場性

なぜ、いま系統用蓄電池か。

系統用蓄電池は、脱炭素という社会的意義と、供給不足の市場という事業環境の両面を持つ設備です。「なぜ社会に必要か」と「なぜ市場として成り立つか」を整理します。

Market / なぜ、市場として成り立つか

供給不足の市場が、
国策で広がる。

  • 需要は急増、供給はほぼ空 ── 国策で広がる、供給不足の成長市場
  • FITのような固定価格に依存しない、三本柱の市場(調整力・容量・卸電力)
  • データセンター等の電力需要増が、必要性をさらに高める
  • 系統接続枠の確保が、参入の実務上の鍵になる

「社会に必要とされ、市場としても成り立つ」 ── 系統用蓄電池が、社会インフラと事業の両面を併せ持つ理由です。

How It Earns — In 3 Steps

蓄電池は、どうやって稼ぐのか。

「安く買って高く売る」だけではありません。系統用蓄電池の収益の中心は、もっとシンプルです。

STEP 01

貯める

電気が余る時間帯に充電。コストを抑えて電力を蓄えます。

STEP 02

待機する

いつでも応じられる状態で待つ。送配電網との通信回線も不要です。

STEP 03

応じる

周波数の乱れに10秒以内で自動応答。電力の安定を支えます。

ここがポイント
放電しなくても、"待機"しているだけで対価を得る。
系統用蓄電池の中核的な収益源は、この「待機する容量(ΔkW)」への支払いです。電気そのものの売買ではなく、"いつでも応じられる状態"を提供することへの対価 ── だから収益が読みやすい。これが系統用蓄電池の事業性の核心です。
The Market

国策で広がる市場が、ほぼ"空席"。

系統用蓄電池が特に存在感を持つのが「一次調整力(オフライン)」市場です。再エネ拡大とデータセンター等の需要増で必要性が高まる一方、供給は大きく不足しています。その空白を、いま蓄電池が埋めています。

市場の未充足 ── 需要に対する不足分96.6%
全国・年間で、募集された調整力の約96.6%が未充足(2025年度/一次調整力オフライン)。= 入る余地が、まだ大きい。
その市場での蓄電池の落札シェア97.8%
火力・揚水はほぼ不参加。この市場では蓄電池が落札の約97.8%を占める ── ほぼ独壇場です。
約2,400万kW
系統用蓄電池の接続申込量(2025年9月末)
3.9
接続申込量の前年比の伸び
0.3%
うち連系済みの実現率(実装が大きく遅れている)
2040
再エネ比率40〜50%を掲げる国の方針(第7次エネ基)

出典:電力需給調整力取引所(EPRX)取引実績、資源エネルギー庁 次世代電力系統ワーキンググループ資料、第7次エネルギー基本計画、サイエンスエックスによるエリア別約定実績の分析。希少性・需給は制度と公表値に基づく事実であり、将来の価格・収益を保証・主張するものではありません。なお、上限価格の段階的引下げや連系の増加は、中長期的に収益の逆風としても作用します(「市場の留意点」参照)。

Revenue — Three Markets

稼ぎ方は、三本柱。

系統用蓄電池は、性格の異なる三つの市場から収益を得ます。中核は需給調整市場で、容量市場と卸電力市場を組み合わせて収益機会を広げます。いずれもFITのような固定価格には依存しません。

中核 / Balancing

需給調整市場
(一次調整力・オフライン)

調整力として待機する容量(ΔkW)への対価。周波数の乱れに10秒以内で自動応答し、通信回線も不要。高圧2MW級の蓄電池が最も得意とする、中核的な収益源です。

下支え / Capacity

容量市場

将来の供給力(kW)をあらかじめ確保する市場。実需給の4年前のオークションで、供給力を提供できる状態を保つことの対価を得ます。需給調整市場より収益が安定的で、同じ設備で両立します。

上乗せ / Arbitrage

卸電力市場(JEPX)

電力が安い時間帯に充電し、高い時間帯に放電する価格差収益(アービトラージ)。市場環境に応じて中核収益に上乗せする、三つ目の収益機会です。

三つの市場は同じ蓄電池で運用します。各市場の制度・価格は変動するため、実際の構成比は運用状況により変わります。本記載は系統用蓄電池という資産クラス一般の市場構造の解説であり、特定の事業・商品の収益を示すものではありません。

About ScienceX

工学博士が、中立に見極める。

サイエンスエックスは、全国の系統用蓄電池・発電所用地の案件を発掘・精査する独立系の専門会社です。メーカーにもEPCにも属さない中立の立場で、工学博士が技術DD(目利き)を行い、事業性のある確定案件だけに絞り込みます。

Market Notes — Stated Plainly

市場の留意点(一般論)。

系統用蓄電池事業の収益の中心は需給調整市場(一次調整力・オフライン)であり、その単価が最も影響の大きい変動要因です。上限価格は制度改正で段階的に引き下げられる方針が示されており、蓄電池の連系増加に伴い競争も強まると見込まれます。市場・制度の動向には継続的な注視が必要です。

制度・規制変更

上限価格・指標価格(Net CONE)・市場再編等の変更が収益に影響(プラス・マイナス両方向)。

市場価格の変動

需給調整・容量・卸電力の各価格は市場で決まり、変動する。固定収入ではない。

競争環境

蓄電池の連系増加に伴い、入札の競争が強まり落札率・単価が低下する可能性。

設備・技術・災害

経年劣化・機器故障・火災・自然災害。実績ある設備、O&M体制、損害保険の付保で対応するのが一般的。

運営・アグリゲーション

需給調整収益は入札の巧拙・落札率に左右される。実績ある事業者への委託とモニタリングが重要。

建設・完工

工期遅延・資機材コスト上昇・連系手続きの長期化。確定価格での引渡し方式等で負担を限定する例がある。

本記載は系統用蓄電池の市場・事業に関する一般的な留意点であり、特定の事業・商品のリスクを網羅・保証するものではありません。

Frequently Asked

よくあるご質問

系統用蓄電池とは何ですか?
電力系統に直接接続する大型の蓄電設備です。太陽光・風力など再生可能エネルギーの出力変動を吸収し、周波数を保つなど、電力系統の安定を支える役割を担います。
蓄電池は誰に対して対価を得るのですか?
電気そのものを売る取引に加え、周波数を維持するための調整力(待機できる容量=ΔkW)を各エリアの一般送配電事業者に提供し、その対価を得るのが中核です。市場への参加・約定・精算は大手アグリゲーターを通じて行われます。
「三つの市場」とは何ですか。同時に使えますか?
需給調整市場(中核)、容量市場、卸電力市場(JEPX)の三つです。同じ蓄電池で運用し、市場環境に応じて組み合わせて活用します。容量市場の供給力提供義務が発動する局面ではその対応が優先されますが、限定的な機会にとどまります。
出力制御(再エネの抑制)との関係は?
余剰となる電力を蓄電池に貯め、必要なときに放電することで、出力制御の緩和や再生可能エネルギーの有効活用に寄与します。
系統用蓄電池の事業化で重要な点は?
高圧2MW級(敷地原則1,000㎡前後)は、開発許可・林地開発・建築基準法上の工作物確認の対象外となる場合が多く、リチウムイオン電池の消防確認は系統連系の申請時に事業者側で対応します。実務上は、系統接続枠と用地の確保が事業化の鍵となります。
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