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「蓄電池はもう飽和した」という声を、この夏から聞くようになりました。上限価格が下がり、九州や中部では約定価格が落ちたからです。数えてみると、答えは二つに分かれます。蓄電池が座る小さな席は、たしかに埋まり始めました。ただ、その席でさえまだ半分空いており、需給調整市場という建物の部屋は7つあって、蓄電池が座っているのは全体の1割弱です。

このページは供給側、つまり蓄電池がいつ・どこに・どれだけ来るかを数えます。募集量(部屋の大きさ)は47-2、価格がどこで止まるかは47-4に分けました。

1. 蓄電池の席は2種類ある

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0 1000 2000 3000 4000 MW(30分コマあたりの平均、2026年8月) 複合(一次〜三次①) 三次① 一次オンライン 二次① 二次② 一次オフライン枠 三次② 募集3,783MW 9% 募集2,963MW 募集1,508MW 23% 募集1,181MW 募集973MW 募集497MW 空席52%(誰も落札していない) 48% 募集484MW 図1 誰が座っているか:蓄電池だけの枠は半分が空席、オンラインの席は火力が主 蓄電池の落札 火力の落札 揚水・水力・VPPの落札 空席(誰も落札していない) 募集量 注:オフライン枠以外は同じ電源が複数の商品に同時に札を入れられる(複合約定)ので、落札が募集量を超える商品がある。蓄電池のシェアは商品ごとに読む。

需給調整市場の商品は5つ(一次・二次①・二次②・三次①・三次②)ですが、蓄電池から見ると席は2種類です。

一つは「一次オフライン枠」。送配電事業者とオンラインで繋がなくても出せる枠で、落札は100%が蓄電池です。全国で約500MWの小さな枠で、8月は蓄電池が238MW座り、残りの259MW(52%)は誰も落札していない空席です。10MW以上の蓄電池はオンライン接続が必須なので(COLUMN 15)、ここは主に10MW未満の蓄電池の席です。

もう一つは「オンラインの席」。一次オンライン・二次①・二次②・三次①は、一次〜三次①をまとめて募集する複合市場の中で、火力・揚水・蓄電池が同じ札で競います。この市場では、同じ電源が複数の商品に同時に札を入れられる仕組み(複合約定)になっているので、図1の棒の合計は物理的な容量より大きくなります。蓄電池の割合は商品ごとに読みます——一次オンラインで23%、複合で9%。残りは火力と揚水で、オンラインの席に空席はほとんどありません(一次オンラインで6%)。一次オンラインの落札は火力が65〜72%、揚水が5〜13%を占めています。ガバナフリーで応答する火力は、この席の主です。

特別高圧の蓄電池(10MW以上)が座るのは、後者のオンラインの席です。

2. 小さな枠は埋まり始めた——まだ半分空いている。オンラインの席は埋まっているが、入れ替わる

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4月 5月 6月 7月 8月 9月 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 不足率(募集量のうち、落札されなかった割合) 74% 66% 65% 59% 53% 56% オンライン側は6月以降ほぼ埋まった。 埋まっても安い札は入り、席は入れ替わる 9月は1〜7日 図2 蓄電池だけの枠はまだ半分空いている。オンラインの席は埋まっているが、入れ替わる 一次オフライン枠(蓄電池だけ・約500MW) 一次オンライン(火力・揚水・蓄電池が同じ席) 複合(一次〜三次①をまとめて募集)

図2は、募集量のうち落札されなかった割合(不足率)です。COLUMN 16で使ったのと同じ数え方で、管区×コマごとに数えて足しています。蓄電池だけの枠(一次オフライン)は4月の74%が8月に53%。COLUMN 16の4〜6月67.9%と同じ流れで、蓄電池の落札量は4か月で約1.8倍に増えました。それでも、枠の半分はまだ空いています。

オンラインの席は違う動き方をします。一次オンラインの不足率は4月の38%から6月に18%、7月以降は1割前後。複合は6月以降ほぼゼロ。火力・揚水・蓄電池で席が埋まった形です。ただし、ここは募集量で固く仕切られた席ではありません。落札が募集量を上回るコマが3割あり、8月は一次オンラインで平均88MW、複合で262MWが募集量を超えて落札されています。埋まっていても安い札は入る。オンラインの席は「空いているか」ではなく「入れ替われるか」で見る席です。特別高圧の蓄電池がこれから入っていくのは、この席です。原発の再稼働で夜間の火力が止まれば、この席の火力の分が空いていきます(→47-2)。

応札の合計だけを見ると、東京・中部・九州では募集量を超えた月があります。それでも落札で数えると席が空いているのは、応札はあっても落札に至らない分が大半だからです(8月の3管区で不足の8〜10割)。同じ蓄電池が複数の商品に重ねて札を入れる仕組み(複合約定)があり、同じ30分コマの蓄電池の落札合計は、連系済み容量84万kWの2倍に達する月があります(8月最大1,685MW)。応札の合計は座れる量より大きく見える。数え方はCOLUMN 16と同じく落札で揃えます。

管区で見ると、埋まり方に差があります。ここで「満席」「空席」を、部屋ごとに分けて見る必要があります。

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北海道 東北 東京 中部 北陸 関西 中国 四国 九州 複合 (一次〜三次①・約3,800MW) 一次オンライン (火力・揚水・蓄電池・約1,500MW) 一次オフライン枠 (蓄電池だけ・約500MW) 空いている 不足83% 半分 不足46% 半分 不足20% 半分 不足39% 空いている 不足62% 空いている 不足66% 空いている 不足82% 空いている 不足99% 空いている 不足52% ほぼ埋まった 不足1% 半分 不足25% ほぼ埋まった 不足15% ほぼ埋まった 不足11% 半分 不足27% ほぼ埋まった 不足11% ほぼ埋まった 不足0% ほぼ埋まった 不足0% ほぼ埋まった 不足0% ほぼ埋まった 不足5% ほぼ埋まった 不足6% ほぼ埋まった 不足2% ほぼ埋まった 不足9% ほぼ埋まった 不足13% ほぼ埋まった 不足9% ほぼ埋まった 不足5% ほぼ埋まった 不足1% ほぼ埋まった 不足2% 図3 3つの席の埋まり方(2026年8月、不足率=募集量のうち落札されなかった割合、管区×コマで集計)

図3は、蓄電池が入る3つの席について、管区ごとの不足率を並べたものです。

いちばん上の一次オフライン枠がいちばん埋まっているのは東京で、不足率20%。中部・東北・九州が4〜5割、関西・中国・北海道は6〜8割空いています。理由は単純で、連系して動いている蓄電池がまだ東京・中部・九州に偏っているからです。北海道の空きは「北海道に席が余っている」というより、「北海道にまだ蓄電池がほとんど来ていない」と読むのが正しい。北海道の一次オフラインの席は17MWしかなく、落札は3MWです。

真ん中の一次オンラインは、火力・揚水・蓄電池が同じ席で競います。北海道・四国・九州・中国は不足率1%以下で、揚水と火力で埋まっています。「北海道は揚水で埋まっている」という感覚は、この席の話として正しい。東北と北陸には、まだ4分の1ほど空きがあります。

いちばん下の複合は、いちばん大きな席で、どの管区もほぼ埋まっています。座っているのは大半が火力で、蓄電池は9%です。

三つを重ねると、蓄電池にとっての空席は、まず自分たちの枠(関西・中国・北海道・北陸・四国で6〜10割、東北・中部・九州で4〜5割)にあり、そのうえで東北・北陸のオンラインにもあります。オンラインの残りは、火力・揚水との入れ替え戦です。複合の蓄電池シェアは4月の6%から8月には9%に上がっています。席が埋まったのではなく、埋まりながら広がっている——供給側から見える形はこれです。

3. 来る量は、申込の一部

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契約申込 (2026年3月末) 負担金契約を結んだ分 (2029年度末まで累計・図から概読) 供給計画に載った分 (事業者自身の計画・2030年度) 連系済み (2026年3月末) 3,527万kW 1,500万kW 631万kW 84万kW 申込の全部が来るわけではない。実際に来るのは、下の3本の間 図4 蓄電池の供給側は4層。申込と、実際に来る量は別

「蓄電池の接続申込が3,500万kW」という数字を目にすると、その全部が来るように見えます。来ません。供給側は4層でできています。

いちばん上の契約申込は約3,527万kW(2026年3月末)。その下、工事費負担金の契約まで進んだ分は、2029年度末までの累計で約1,500万kW。事業者が自分の計画として供給計画に載せた蓄電池は、2026年度で167万kW、2030年度で631万kW。いちばん下、実際に連系して動いているのは84万kW(2026年3月末)です。

申込と連系済みの差は42倍。この差が「空押さえ」と呼ばれるもので、2026年1月から対策が始まりました。接続検討の申込に土地の権利を求める、保証金を引き上げる、1事業者の申込件数に上限を置く、工事費が合わないと分かった時点で早く回答する。申込は絞られる方向にあります。実際に来る量は、図4の下3本の間のどこかです。

4. 確度の高い供給はどこに来るか——長期脱炭素電源オークション

来ることがほぼ決まっている蓄電池があります。長期脱炭素電源オークション(LDA)の落札分です。3回の入札で蓄電池は76件・3,713MW(第1回1,092・第2回1,370・第3回1,251MW、揚水を除く)。契約から4年後の年度末までに供給を始める約束で、2026年3月末時点で蓄電池の退出はゼロです。

場所は落札電源一覧の案件名からしか読めず、第2回・第3回は会社名だけの案件が多いので、3,713MWのうち1,626MW(44%)は「不明」です。読める分では東北775MW・北海道457MWと東の2管区に厚く、東京はゼロ。この2管区に来る分は、次の節の連系線で東京へ向かいます。管区別の内訳は不明が4割ある前提で読んでください。

5. 器の大きさと、来る量

2025年度 2026年度 2027年度 2028年度 2029年度 2030年度 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 万kW ↓ 一次オフライン(蓄電池の席)約50万kW 一次+二次①+複合の募集量 約680万kW 全商品の募集量 約1,140万kW 図5 器の大きさと、来る量。器全体はまだ広い 負担金契約を結んだ分(累計・概読) 供給計画に載った蓄電池(2027〜29は直線補間) 連系済み(2026年3月末)84万kW

図5は、供給側の線(供給計画と負担金契約)と、器の大きさ(募集量)を重ねたものです。器は3段で、いちばん下の帯が蓄電池の席(一次オフライン、約50万kW)、真ん中の破線が一次・二次①・複合を合わせた約680万kW、上の点線が全商品の約1,140万kW。

事業者の計画どおりに来るなら、2030年度でも631万kWで、真ん中の線に届きません。負担金契約まで進んだ分が全部来るなら、2027年度に真ん中の線を超えます。どちらの線を辿るにしても、上の点線(器全体)には2030年度でも届いていません。

埋まるのは席の順番です。蓄電池の席(一次オフライン)は今年から来年にかけて、一次オンラインの空き(東北・北陸)はその次、複合はその先。そして47-2で書いたとおり、募集量は「競争が確認できれば増やす」と定められています。応札が厚くなること自体が、器を広げる条件です。

6. 席は管区をまたいで繋がる

北海道 不足83% 東北 不足41% 東京 不足20% 中部 不足38% 北陸 不足61% 関西 不足66% 中国 不足82% 四国 不足99% 九州 不足50% 2027年11月 東北東京間 573→1,028万kW 2030年度 中部関西間(関ケ原北近江線) 2030年6月 関門 300→600万kW 2027年度 +30万kW 〜2028年度 周波数変換 300万kW 図6 席は管区をまたいで繋がる(蓄電池だけの部屋の不足率・2026年8月と、連系線の予定)

需給調整市場は管区ごとに募集しますが、連系線に空きがあれば、隣の管区の蓄電池が約定できます。東北の蓄電池が東京の部屋に座れるということです。連系線が広がる年は決まっています。

2027年11月、東北東京間が573万kWから1,028万kWへ(電源の状況により段階的)。2028年度までに東京と中部を結ぶ周波数変換設備が300万kWへ。2030年6月、関門連系線が300万kWから600万kWへ。2030年度に中部関西間の新しい線。

図6の不足率は蓄電池だけの部屋(一次オフライン)のものです。東北・北海道に厚いLDAの蓄電池は、2027年11月から東京の大きな部屋に手が届きます。九州・中国の蓄電池は、2030年6月から関西へ。管区の満席・空席は、この年表で塗り替わっていきます。二次①だけは広域の調達が2027年度からで、連系線が混んでいるときは市場が分かれます。

7. 低圧の蓄電池について

低圧(50kW未満)の系統用蓄電池が、需給調整市場への参入を目的に増えているという指摘があります。ただし市場の最低入札単位は1MWで、低圧の蓄電池はアグリゲーターが同じ管区で20基ほど束ねて初めて応札できます。件数の増加が、そのまま供給力の増加にはなりません。

まとめ

価格がどこで止まるかは47-4へ。

参考表

参考表1 一次オフラインの席と落札(2026年8月、MW/30分コマ)と供給側の管区別数字

管区席(募集量)落札不足率契約申込 2026年3月末(万kW)LDA落札(万kW、案件名から読める分のみ)
北海道17383%22946
東北513046%57778
東京927320%6730
中部744639%44117
北陸261063%854
関西923166%29213
中国751482%53031
四国10099%420
九州623152%65821
全国49723853%3,527371(うち不明163)

出典:EPRX 取引実績(2026年8月・速報)、資源エネルギー庁 次世代電力系統WG 第12回 資料2、電力広域的運営推進機関 長期脱炭素電源オークション 約定結果 別紙(第1〜3回)から当社計算。LDAの管区は案件名から読めるものだけを集計し、読めない1,626MW(44%)は「不明」

注:図1〜図3の数字は2026年8月までの速報値。不足率=(募集量−落札量)÷募集量を管区×コマごとに数えて合計したもので、落札が募集量を上回るコマは不足ゼロとして扱う(COLUMN 16の全国集計値とは端数が異なる場合がある)。図3の「ほぼ埋まった」は不足率20%以下、「半分」は20〜50%、「空いている」は50%超。図4の「負担金契約を結んだ分」は供給計画2026取りまとめ 添付図7-1(2025年11月末時点)の棒グラフからの概読。図5の供給計画は2025・2026・2030年度の値を直線で結んだもの。

出典

この記事の監修
中島 晋也(サイエンスエックス株式会社 代表取締役・工学博士)

系統用蓄電池発電所の開発・売買・技術デューデリジェンスを手がける。本コラムは、実案件の組成と評価の実務に基づいて執筆・監修しています。