2026年9月1日の実需給分から、一次オフラインの上限は10.00円/ΔkW・30分になりました。この記事は、その前と後で一次オフラインの札がどこに落ちたかを、EPRX(電力需給調整力取引所)の取引結果で数えます。問いは一つ、「上限が10円になった9月、蓄電池の札はどこまで下がり、どこに残ったか」です。
集計の窓は二つです。上限15円の4月1日〜8月31日(153日)と、上限10円の9月1日〜29日(29日)。どちらもEPRXの速報値で、管区は電源のあるエリア別、価格は落札量で重みを付けた平均(Σ平均落札価格×落札量÷Σ落札量)です。上限が下がった経緯と影響額はCOLUMN 41にあります。
1. 全国では半分になった
← 横にスクロールできます →
一次オフラインの全国の加重平均は、4〜8月の11.07円から、9月は5.81円になりました。4〜8月は確報値でも11.08円で、速報値との差は0.01円です。9月の確報値は、10月末までに公表されます。
| 管区 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 東北 | 13.49 | 14.86 | 14.66 | 14.49 | 14.52 | 9.51 |
| 東京 | 11.47 | 11.59 | 12.09 | 11.76 | 11.42 | 8.58 |
| 中部 | 14.57 | 14.34 | 13.15 | 10.25 | 9.08 | 3.69 |
| 九州 | 11.94 | 10.87 | 6.89 | 5.67 | 4.97 | 3.04 |
| 全国 | 12.29 | 12.53 | 11.71 | 10.25 | 9.63 | 5.81 |
全国は5月の12.53円から、上限が下がる前の7月・8月にすでに10円台・9円台へ下がっていました。中部・九州は夏のうちに大きく下がり、9月にもう一段下がりました。東北と東京は8月まで動かず、9月1日に上限と一緒に下がっています。全国の数字は、この二つの違う動きを足したものです。
2. 二つに割れた
← 横にスクロールできます →
| 管区 | 4〜8月 | 9月 | 札が通る割合(9月) |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 5.50 | 1.39 | 77.2% |
| 東北 | 14.51 | 9.51 | 95.6% |
| 東京 | 11.67 | 8.58 | 85.1% |
| 中部 | 11.75 | 3.69 | 45.6% |
| 北陸 | 9.38 | 3.19 | 66.0% |
| 関西 | 11.67 | 3.26 | 62.6% |
| 中国 | 10.02 | 3.34 | 48.5% |
| 四国 | 5.92 | 2.74 | 33.8% |
| 九州 | 7.54 | 3.04 | 53.9% |
| 全国 | 11.07 | 5.81 | 63.2% |
東北と東京は、上限のすぐ下に残りました。東北は9月の29日すべてで、10円以上の札が落札されています。その数は1,260コマで、10円を超える表示は9月1日の21コマだけ。残りは10.00円ちょうど、上限に張り付いています。東京は8.58円で、10円以上が付いたのは11日です。
残りの7管区は、1〜3円台に下がりました。中部は11.75円から3.69円、関西は11.67円から3.26円です。上限が10円に下がった月に、上限から6円以上離れたところで落札されています。
最高落札価格の表示も、9月で様子が変わりました。4〜8月は9管区すべてで最高が15.00円に届いていました。9月に10円を超える表示が出たのは、東北の15.00円と関西の12.50円で、どちらも9月1日です。EPRXのシステムは上限を超える札を弾かず、精算で上限に切るので、受け取りは10.00円です。2日目からは、10円を超える表示は出ていません。
3. なぜ割れたのか ── 札が通る割合
← 横にスクロールできます →
二つを分けた数字を一つ挙げるなら、「札が通る割合」です。出した札のうち落札された割合で、東北は95.6%、東京は85.1%。出した札がほぼ全部通る管区では、価格は上限に寄ります。中部45.6%・中国48.5%・九州53.9%と、札の半分ほどが落ちる管区では、価格は3円台です。
東北は4〜8月も14.51円で、上限の15円に近いところにいました。募集量に対する応札量は0.28倍で、募集の3割にも札が届かない市場です。9月は0.62倍まで増えましたが、まだ募集に届いていません。足りない市場では札を下げる理由がなく、上限が下がればその分だけ下がる。東北の9.51円はその形です。東京は応札が募集を上回り(1.16倍)、それでも85%の札が通っています。
4. 時間帯で、ほとんど変わらない
← 横にスクロールできます →
| 管区 | 0〜4時 | 4〜8時 | 8〜12時 | 12〜16時 | 16〜20時 | 20〜24時 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 東北 | 9.58 | 9.54 | 9.51 | 9.43 | 9.52 | 9.49 |
| 東京 | 8.50 | 8.50 | 8.59 | 8.57 | 8.63 | 8.64 |
| 中部 | 3.34 | 3.39 | 4.34 | 4.13 | 3.48 | 2.92 |
| 九州 | 2.77 | 2.77 | 3.13 | 3.33 | 3.28 | 2.77 |
| 全国 | 5.68 | 5.76 | 5.95 | 5.90 | 5.82 | 5.70 |
全国では5.68円から5.95円の間に収まり、東北は夜中の0〜4時でも9.58円です。一方、蓄電池がJEPX(卸電力市場)で稼げる額は時間帯で大きく違い、夕方の8コマは管区により5.8〜8.5円、48コマに均すと1.0〜1.4円でした(47-4 床編)。
ガイドラインの天井は「逸失利益+一定額+売買手数料」です。蓄電池の逸失利益の数え方は条文で決まっていませんが(未確定)、「卸電力市場で稼ぎそこねる分」に近い考え方を取るなら、夜の逸失利益は小さくなります。公表値で置いた一定額は、運開1年目でも1円台です(50-3 試算編)。夜中に9円台の札を式で説明するのは、楽ではありません。もう一枚の天井がいちばん当たるのは、価格が上限に張り付いた管区の、夜の札です。
5. 数字の読み方
- 速報値です。9月の確報値は10月末までに公表されます。出たら、この記事の9月の数字は確報値に差し替えます。4〜8月で比べると、速報値と確報値の差は0.03円以内でした。
- 精算前の表示値です。EPRXのシステムは上限を超える札を弾かず、精算で上限に切ります。9月の一次オフラインで10円を超えた表示は、9月1日の東北21コマと関西2コマだけでした。
- 管区によって薄い市場です。9月の四国は1,392コマのうち880コマで落札がありませんでした。北陸は314コマです。管区の平均は、その分少ないコマから出ています。
- 29日分です。上限10円の下での1か月目で、季節の違いはまだ見えません。
6. 2MW/8MWhの所有者にとって
同じ一次オフラインでも、9月の位置は管区で二つに割れました。東北と東京では、市場の上限10円がそのまま天井です。ほかの7管区では、価格は上限から6円以上下にあり、天井より先に競争が値段を決めています。
どちらの管区でも、ガイドラインのもう一枚の天井は消えていません。上限に張り付いた管区では、夜中の札まで10円近くで落札されています。それを逸失利益と一定額で説明できるかは、委員会が高値の約定を後から確かめるときに問われる点です(50-5 監視編)。収支計画に使う単価は、上限の10円ではなく、自分の管区の9月の実際の価格と、自分の札を式で説明できる高さの低いほうで置くのが安全です。
出典
- EPRX 取引実績(一次オフラインの取引結果 速報値・確報値) https://www.eprx.or.jp/information/results.php(2026年9月29日・10月4日取得。受渡2026年4月1日〜9月29日)
- EPRX「需給調整市場のΔkW上限価格について」(2026年7月30日) https://www.eprx.or.jp/information/docs/14b85fbe8942da7d3bdddda80243e7e170f64d9e.pdf
- 経済産業省「需給調整市場ガイドライン」2026年3月13日改定 https://www.egc.meti.go.jp/info/guideline/pdf/20260313001a.pdf
集計の式・CSVの項目名・集計結果の全表は、当社が公開している集計スクリプトの説明(scix-web リポジトリ scripts/eprx/README.md)に置いています。