条文の式に、公表されている数字だけを入れてみます。対象は高圧の2MW/8MWh、アグリゲーター経由で一次オフラインに出す蓄電所です。問いは一つ、「公表値だけで置くと、一定額は何円になるか」。式と言葉の意味は50-2 条文編にあります。
先に答えを書きます。東京エリアで置くと、一定額は運開1年目1.411円、2年目0.959円、10年目0.809円、17年目0.711円。18年目に減価償却が終わると取り戻してよい額がマイナスになり、A種の0.33円に落ちます。単位はすべて円/ΔkW・30分(1kWを30分空けておく約束1つあたり)です。
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1. 入れた数字
公表されている単価がある費目だけを入れました。単価が公表されていない費目は、0ではなく空欄です。自分の蓄電所の数字を入れる欄として残しています。
| 費目 | 置いた値 | 出典・置き方 |
|---|---|---|
| 建設費 | 6.8万円/kWh×8,000kWh=5億4,400万円 | 経済産業省「定置用蓄電システムの現状と課題」(2025年3月12日 資料6)p.5。電池4.1万円・PCS0.6万円・その他0.7万円・工事費1.4万円(三菱総合研究所の分析。COLUMN 40) |
| 減価償却費 | 定額法・17年で年3,209万6,000円 | 耐用年数省令 別表第二「電気業用設備・その他の設備・主として金属製のもの」が17年。系統用蓄電池をこの行に当てる根拠は報道(国税庁の見解の伝聞)だけ |
| 修繕費 | 0.5万円/kW/年×2,000kW=年1,000万円 | 資源エネルギー庁 2023年6月21日 資料7(長期脱炭素電源オークションの蓄電池の諸元) |
| 発電側課金(kW分) | 各社の単価×2,000kW×12か月。東京は100.12円/kW・月で年240万2,880円 | 各一般送配電事業者。2026年11月1日に5社で単価が上がるので、新しい単価で置いた。蓄電池はkWh分の課金が免除 |
| 固定資産税 | 税率1.4%。評価額は取得価額×0.936(初年度)、以後毎年×0.873。運開1年目は0。税額の端数は円未満を四捨五入 | 地方税法350条、固定資産評価基準 別表第15 |
| 容量市場(見なし収入) | 2,000kW×調整係数70.8%(端数処理前の月別平均で計算し、kW未満は四捨五入)=期待容量1,415kW。×エリアプライス15,111円/kW=年2,138万2,065円。2年目から引く | 電力広域的運営推進機関 2029年度の調整係数表・様式2、メインオークション約定結果 |
| 卸電力市場の収入 | 0 | 理由は5節 |
| 札を入れられる量(想定応札量) | 2,000kW×48コマ×365日×90%=3,153万6,000ΔkW・30分 | 当社の仮置き(90%は充放電の制約を見込んだ値) |
| 人件費 | (自分の数字を入れる欄) | 公表単価なし |
| 委託費(O&M) | (自分の数字を入れる欄) | 公表単価なし |
| 保険料・土地賃料 | (自分の数字を入れる欄) | 公表単価なし。入れられるかも未確定 |
| アグリゲーター費用(特定した固定費) | (自分の数字を入れる欄) | 契約の明細で特定する |
空欄の費目を足すと、一定額はその分だけ上がります。割る量が3,153万6,000なので、年1,000万円の固定費を足すごとに約0.32円です。
入れた費目にも、置き方の幅があります。容量市場の期待容量は「各月の調整係数×各月の放電できる出力」の12か月平均で、放電できる出力を設備容量の2,000kWと置いたのは上限側です。発電側課金は、2,000kW全部にかかると置きました(充電用の契約を結ぶと対象は小さくなります)。固定資産税は条文の例示にはありませんが(未確定)、性質は固定費で、長期脱炭素電源オークションも維持費に入れているので入れました。外すと2年目は0.226円下がります。
2. 2年目の内訳
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| 東京・基準(円) | 1年目 | 2年目 | 10年目 | 17年目 | 18年目 |
|---|---|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 32,096,000 | 32,096,000 | 32,096,000 | 30,463,999 | 0 |
| 修繕費 | 10,000,000 | 10,000,000 | 10,000,000 | 10,000,000 | 10,000,000 |
| 固定資産税 | 0 | 7,128,576 | 2,405,009 | 929,429 | 811,392 |
| 発電側課金(kW分) | 2,402,880 | 2,402,880 | 2,402,880 | 2,402,880 | 2,402,880 |
| 固定費の計 | 44,498,880 | 51,627,456 | 46,903,889 | 43,796,308 | 13,214,272 |
| 容量市場(見なし)を引く | 0 | −21,382,065 | −21,382,065 | −21,382,065 | −21,382,065 |
| 取り戻してよい上限 | 44,498,880 | 30,245,391 | 25,521,824 | 22,414,243 | マイナス |
| 札を入れられる量(ΔkW・30分) | 31,536,000 | 31,536,000 | 31,536,000 | 31,536,000 | 31,536,000 |
| 一定額(円/ΔkW・30分) | 1.411 | 0.959 | 0.809 | 0.711 | 0.33(A種) |
1年目は容量市場を引かないので、固定費4,449万8,880円をそのまま割って1.411円。2年目は固定資産税が加わる一方、容量市場の見なし収入2,138万2,065円を引くので、0.959円に下がります。その後は固定資産税が年々小さくなる分だけ、ゆっくり下がります。
18年目に減価償却が終わると、固定費は1,321万4,272円になり、容量市場の見なし収入より小さくなります。上限額がマイナスになる年の扱いは条文にありません(未確定)。「当年度分の固定費回収後の一定額は、A種電源とする」の一文から、ここでは0.33円としました。計算値が0.33円を下回る年も0.33円としています。
3. いちばん大きい段差は、引き始める年
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20年でいちばん大きく下がるのは、容量市場の見なし収入を引き始める年です。この試算では2年目で、1.411円から0.959円へ0.452円下がります。償却が終わる18年目の段差(0.711円から0.33円へ0.381円)より大きく、9エリアのどこで置いても同じでした。
ただし、何年目から引くかで段差の位置は動きます。条文が「引かなくてよい」とするのは「新規に運開したため、時間的に容量市場に応札できなかった電源等」で、何年目まで当たるかは書かれていません(未確定)。引き始める年が遅れれば、段差もその年まで後ろにずれます。
4. 9エリアで比べる
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| エリア | 1年目 | 2年目 | 10年目 | 17年目 | 18年目 |
|---|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 1.419 | 0.851 | 0.701 | 0.602 | 0.33 |
| 東北 | 1.406 | 0.798 | 0.648 | 0.550 | 0.33 |
| 東京 | 1.411 | 0.959 | 0.809 | 0.711 | 0.33 |
| 中部 | 1.408 | 0.985 | 0.835 | 0.736 | 0.33 |
| 北陸 | 1.406 | 0.957 | 0.807 | 0.709 | 0.33 |
| 関西 | 1.423 | 1.000 | 0.850 | 0.751 | 0.33 |
| 中国 | 1.400 | 0.948 | 0.798 | 0.699 | 0.33 |
| 四国 | 1.419 | 0.965 | 0.815 | 0.716 | 0.33 |
| 九州 | 1.410 | 0.868 | 0.718 | 0.619 | 0.33 |
1年目は1.400〜1.423円で、エリアの差は発電側課金の単価の差だけです。2年目からは差が開き、東北の0.798円から関西の1.000円まで分かれます。期待容量×エリアプライスで引く額が大きい東北・北海道・九州ほど、一定額は下がります。東京はエリアプライスが高い一方、4時間の調整係数が70.8%と9エリアでいちばん低く、引く額が小さくなります。
5. 何を変えると、どう動くか
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- 建設費。±20%で、1年目は1.207〜1.615円、2年目は0.710〜1.208円に動きます。いちばん効く入力です。
- 応札できる割合。割る量を小さく見るほど一定額は上がります。ただし分母は「応札することが可能なΔkW」で、落札を少なく見込んで下げることは認められていません。
- 調整係数。係数を100%と置くと(上限)、2年目は0.679円です。公表表の値で置いた0.959円より0.28円低く、係数の置き方だけでこれだけ動きます。
卸電力市場の収入は0と置きました。条文は「卸電力市場収益」を他市場収益の例に挙げていますが、見込みか実績かは書いていません。48コマ×90%を需給調整市場に出すと置いた以上、その時間は卸電力市場で放電できません。卸の収益は逸失利益として天井の第1項に入るので、ここでも引くと二重に数えることになります。応札しない残りのコマで卸の収入を得るなら、その分は引くよう求められる余地があります(未確定)。
6. 年の途中で0.33円になる
B種の一定額は、その年の固定費を回収するまでの額です。回収した後は、年の途中でもA種の0.33円に落ちます。いつ回収したことになるかは、ΔkW収入のどこまでを回収に数えるかで決まり、条文には書かれていません(未確定)。
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一定額の部分だけを数えるなら、回収は年度の終わりにやっと終わります。ΔkW収入を丸ごと数えるなら、話は大きく変わります。東京の2年目の上限額は3,024万5,391円。9月の東京の一次オフラインの平均8.58円で2MWが毎コマ落札されると、1コマの収入は1万7,160円で、約1,763コマ、37日ほどで埋まります。その読み方なら、1年の大半は0.33円の天井の下で札を入れることになります。
7. 持っている人と、買う人にとって
公表値で置いた一定額は、1年目でも1円台、2年目からは1円を切ります。上限の10円とは桁が違います。このページの数字は天井の下側の目安で、人件費・アグリゲーター費用など空欄の費目を明細で特定できれば、その分だけ上がります。費目を特定できるかどうかが、そのまま値付けの余地になります。
買い手が収支を組むときは、ΔkWの単価を上限の10円で置くのではなく、自分の管区の実際の価格(50-4 市場編)と、条文の式で説明できる高さの低いほうで置くのが安全です。減価償却の置き方で一定額は変わり、即時償却を使う場合の扱いは未確定です。制度はCOLUMN 45にまとめています。
計算はすべて公開しているスクリプトで再現できます(scix-web リポジトリ scripts/column50/ceiling_calc.py。入力は同じ場所の inputs.json)。
出典
- 経済産業省「需給調整市場ガイドライン」2026年3月13日改定 p.6〜7 https://www.egc.meti.go.jp/info/guideline/pdf/20260313001a.pdf
- 電力広域的運営推進機関「2029年度向け 容量市場メインオークション用調整係数」(2025年7月31日) https://www.occto.or.jp/assets/market-board/market/jitsujukyukanren/files/2029_chouseikeisu.pdf
- 同 様式2「期待容量等算定諸元一覧(対象実需給年度:2029年度)」安定電源(純揚水・蓄電池) https://www.occto.or.jp/assets/market-board/market/youryou-system/youryousystem_sankatouroku/files/2029_youshiki2_yousui.xlsx、補足説明(2025年7月) https://www.occto.or.jp/assets/market-board/market/youryou-system/youryousystem_sankatouroku/files/2029_sanko_youshiki2.pdf
- 同「容量市場メインオークション約定結果(対象実需給年度:2029年度)」(2026年1月20日、1月23日訂正) https://www.occto.or.jp/assets/various/capacity-market/jitsujukyukanren/2029_jitsujukyu_kanren/260123_mainauction_youryouyakujokekka_kouhyou_jitsujukyu2029.pdf
- 同 説明会資料「容量市場メインオークションについて」(2025年7月)p.22 https://www.occto.or.jp/assets/market-board/market/oshirase/2025/files/20250709_youryou_seidosetsumei.pdf
- 経済産業省「定置用蓄電システムの現状と課題」(2025年3月12日 資料6)p.5 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/battery_strategy2/shiryo06.pdf
- 資源エネルギー庁「長期脱炭素電源オークションについて」(2023年6月21日 資料7) https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/pdf/081_07_00.pdf
- 電力・ガス取引監視等委員会「発電側課金の発電者向け説明資料(例)」(2025年1月、2026年5月一部改訂) https://www.egc.meti.go.jp/info/public/pdf/20250121002a.pdf、各一般送配電事業者の託送供給等約款・料金単価(東京電力パワーグリッド「託送供給等約款」2026年10月1日実施版・2026年11月1日実施版 https://www.tepco.co.jp/pg/consignment/notification/index-j.html ほか)
- 地方税法第350条(固定資産税の税率)、減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第二(e-Gov 法令検索)、固定資産評価基準 別表第15(減価残存率)