← ナレッジ一覧に戻る

← 横にスクロールできます →

火力・水力・原子力回って発電する機械はずみ(慣性)急な変化を、ゆっくりにする自動で出力を上下周波数のずれを、その場で戻す電圧を保つ止まると、隣の機械も外れるおまけ。値段なし、市場なし太陽光・風力回らない。おまけは付かない蓄電池回らないが、命令で1秒以内に出せる火力が減る → おまけが消える → 別に用意する(=調整力に値段がつく)
図1 回る機械のおまけ。火力・水力・原子力は発電のついでに、はずみ・周波数を戻す力・電圧を保つ力を出していた。太陽光と蓄電池は回らないので、おまけは付かない。火力が減ると、おまけを別に用意する必要が出る。

電気は貯めておけません。使う量と作る量を毎秒合わせ続けないと、周波数がずれて機械が止まります。昔はこの調整を、火力・水力・原子力の「回る機械」がついでにやっていました。おまけだったので、値段も市場もありませんでした。

いま、そのおまけが消えていきます。火力は7年で約1,600万kW減り、太陽光の発電量は2040年度に2023年度の2.5〜3.6倍になり、日本の原発は戻っても昼に出力を下げません。回らない電源が増えるなかで、おまけの代わりを最も広く引き受けられるのが蓄電池です。日本で蓄電池が要る理由の骨格は、この一枚の図にあります。

この連載は、素朴な疑問に一行ずつ答えます。問いはそのまま見出しにしました。最後の問いは「いくらで買って、いくら戻るのか」で、公表値だけを目盛りにした計算機を置いています。気になるものから読んでください。

一、昔はなぜ蓄電池なしで回っていたのか

48-2昔は蓄電池がなくても回っていたよね回っていた。回る機械のおまけがただで調整していたから48-3回る機械が減った系統では、何が消えるのか2025年4月、スペインで消えたのは電圧を保つ働き48-4なぜ「10秒」なのか周波数は数秒で落ちる。英国と豪州は1秒の商品を作った48-5再エネが増えるほど、調整力が要るのか半分正しい。増えるのは「ぶれ」の備え。「止まる」備えは減らない

二、火力・原発・揚水では、なぜ足りないのか

48-6火力に調整させれば、足りるのではいまも主役。ただし昼は絞られ、設備は7年で1,600万kW減った48-7原発が増えたら、蓄電池はいらなくなる?逆。原発は昼も下げない。九州は4基動かしたまま太陽光を止める48-8揚水を増やせば、足りるのではもう42地点・2,700万kW。新設は10年仕事、蓄電池は英国で1〜2年48-9市場で買えなかった調整力は、どこから来ているのか市場の外。火力の余力(0.93円)と揚水の個別契約

三、これから電気の需要と電源はどうなるのか

48-10データセンターが増えると、なぜ蓄電池なのか食うのは調整力ではなく「席」。米国では席代が上限に張り付いた48-11太陽光は、これからどうなる2040年度に2.5〜3.6倍。東京も止め始めた。2034年の見通しは北海道30%48-12火力の量は、原発の稼働は、需要は減る・戻る・増える。需要が増えるのは数十年ぶり48-13蓄電池は、どれだけ増えるのか接続検討1億7,200万kW、契約申込3,000万kW(国の2040年度見通しの3倍)、つながっているのは64万kW

四、お金と、国の本音

48-14国は、蓄電池を増やしたいのか増やす、高くは買わない。天井は下げ、席と速い商品は増やす48-15インフラ投資としての蓄電池は、何に似ているのか決まった収入と動く収入を組み合わせる器。社債と銀行が付き始めた48-16稼ぎは細るって言うけど、本当?下がるのは単価。海外では中身が調整力から席と差益へ移り、量が増えた48-17海外の真似をして、日本で儲かるか要る理由は同じ、稼ぎ方は別ルート。日本は電池0.4%で天井を先に下げた48-18蓄電池は、将来どれだけ必要なのか国の見通しは2040年度280万〜1,000万kW。契約申込はその3倍48-19蓄電池は、どこに置いても同じなのか周波数の効き目は同じエリアなら同じ。効くのは連系線・送電線の混雑・電圧の役

五、18の問いの先にある、ひとつの問い

48-20いくらで買って、いくら戻るのか答えは案件ごとに違う。公表値だけを目盛りにした計算機で、単価・約定率・席代・差益・建設費を自分で動かす
この連載で使う言葉は4つだけです。
調整力:使う量と作る量のズレを、その場で埋める力。
出力制御:太陽光が余る昼に、発電を止めてもらうこと。
席(容量):暑い日や寒い日に「必ず動ける」と約束できる発電の量。国はこれを市場で買っています。
上限価格:調整力の値段に国が決めた天井。2026年9月1日から10円(1kWを30分待機させる値段)。

日本の企業にとっての意味

蓄電池は、電気の「捨てる」を「使う」に変える設備です。九州では2024年度に7.5億kWhの太陽光・風力を止めました。その一部は、蓄電池があれば使えた電気です。火力を待機させる必要を減らし、暑い日と寒い日の夕方に「必ず出せる」席をつくり、データセンターや工場の立地を考えるときの材料の一つになります。国は2040年度の電源構成を再エネ4〜5割・原子力2割・火力3〜4割と置きました。この構成を動かすには、昼の余りを引き受け、夕方に出せる設備が要ります。蓄電池は、捨てている電気を使える電気に変える設備です。

日本は、電池がまだ0.4%の段階で天井を下げた

先に進んだ3つの市場——オーストラリア、英国、米国——と並べました。3つとも、火力が減り、太陽光と風力が増え、蓄電池が調整力の市場に入り、いまは席(容量)と、安く貯めて高く売る差益で稼いでいます。日本も同じ道に入りました。違いは一つ。南オーストラリア・英国・テキサスでは蓄電池が数%積み上がってから市場のなかで調整力の値段が動いたのに対し、日本はつながっている蓄電池が全国の最大需要の0.4%の段階で、国が先に天井を19.51円→15円→10円と2段階で下げました。天井は先に下がりました。増える余地は、量のほうに残っています。

← 横にスクロールできます →

調整力の値段が動き始めた時点の、蓄電池の量(ピーク需要比)南オーストラリア(2020年ごろ)約9%英国(2023年)約8%米テキサス(2025年)約12%日本(2026年)0.4%← ここで国が上限価格を19.51円→15円→10円に海外の値はアナリスト推計にもとづく概略。日本は連系済み64万kW÷全国最大需要14,784万kW
図2 海外は蓄電池が数%積み上がってから調整力(ΔkW)の値段が動いた。日本は0.4%の段階で、国が上限価格を先に下げた。出典:EPRX ΔkW上限価格表/資源エネルギー庁(連系済み64万kW、2025年12月末)/電力広域的運営推進機関(冬季最大需要14,784万kW、2024年度)。海外の値はModo Energy・AEMOの資料にもとづく概略で、市場ごとに定義・時点が異なる。

いま、この時期に

おわりに

蓄電池が増える方向に、物理も政策も向いています。天井は先に下がり、これから増える余地があるのは量と、速い商品と、席です。海外と同じ道に入ったのは「要る理由」のほうで、「稼ぎ方」は日本の型で組みます。海外から読む方は、48-17と48-19から入り、最後の問い(48-20)で数字を確かめてください。

数字は、官公庁・系統運用者・取引所・事業者の公表資料を主に、一部は民間の推計や報道(出典名を明記)を使っています。出典は各記事の末尾に置き、このページの分は下にまとめました。

この記事の監修
中島 晋也(サイエンスエックス株式会社 代表取締役・工学博士)

系統用蓄電池発電所の開発・売買・技術デューデリジェンスを手がける。本コラムは、実案件の組成と評価の実務に基づいて執筆・監修しています。

出典(このページで使った数字)