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電気は貯めておけません。使う量と作る量を毎秒合わせ続けないと、周波数がずれて機械が止まります。昔はこの調整を、火力・水力・原子力の「回る機械」がついでにやっていました。おまけだったので、値段も市場もありませんでした。
いま、そのおまけが消えていきます。火力は7年で約1,600万kW減り、太陽光の発電量は2040年度に2023年度の2.5〜3.6倍になり、日本の原発は戻っても昼に出力を下げません。回らない電源が増えるなかで、おまけの代わりを最も広く引き受けられるのが蓄電池です。日本で蓄電池が要る理由の骨格は、この一枚の図にあります。
この連載は、素朴な疑問に一行ずつ答えます。問いはそのまま見出しにしました。最後の問いは「いくらで買って、いくら戻るのか」で、公表値だけを目盛りにした計算機を置いています。気になるものから読んでください。
一、昔はなぜ蓄電池なしで回っていたのか
二、火力・原発・揚水では、なぜ足りないのか
三、これから電気の需要と電源はどうなるのか
四、お金と、国の本音
五、18の問いの先にある、ひとつの問い
調整力:使う量と作る量のズレを、その場で埋める力。
出力制御:太陽光が余る昼に、発電を止めてもらうこと。
席(容量):暑い日や寒い日に「必ず動ける」と約束できる発電の量。国はこれを市場で買っています。
上限価格:調整力の値段に国が決めた天井。2026年9月1日から10円(1kWを30分待機させる値段)。
日本の企業にとっての意味
蓄電池は、電気の「捨てる」を「使う」に変える設備です。九州では2024年度に7.5億kWhの太陽光・風力を止めました。その一部は、蓄電池があれば使えた電気です。火力を待機させる必要を減らし、暑い日と寒い日の夕方に「必ず出せる」席をつくり、データセンターや工場の立地を考えるときの材料の一つになります。国は2040年度の電源構成を再エネ4〜5割・原子力2割・火力3〜4割と置きました。この構成を動かすには、昼の余りを引き受け、夕方に出せる設備が要ります。蓄電池は、捨てている電気を使える電気に変える設備です。
日本は、電池がまだ0.4%の段階で天井を下げた
先に進んだ3つの市場——オーストラリア、英国、米国——と並べました。3つとも、火力が減り、太陽光と風力が増え、蓄電池が調整力の市場に入り、いまは席(容量)と、安く貯めて高く売る差益で稼いでいます。日本も同じ道に入りました。違いは一つ。南オーストラリア・英国・テキサスでは蓄電池が数%積み上がってから市場のなかで調整力の値段が動いたのに対し、日本はつながっている蓄電池が全国の最大需要の0.4%の段階で、国が先に天井を19.51円→15円→10円と2段階で下げました。天井は先に下がりました。増える余地は、量のほうに残っています。
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いま、この時期に
- 2026年9月1日、調整力の上限価格が10円になりました(10秒以内・5分以内・複合の商品)。19.51円→15円(3月)→10円(9月)と2段階で下がり、次の7.21円は競争が進まない場合の段階案です。
- 同じ9月1日、電力広域的運営推進機関の第103回広域系統整備委員会が、2031年度の送電線の混み具合の見通しを示しました。今回からデータセンターなど大きな需要を「一日中一定の需要」とみなす方式に変え、データセンターのある場所では想定する需要量が増えています。2031年度の想定には、蓄電池2,409万kW、原発17基が置かれました。
- 9月10日、北海道石狩市の系統用蓄電所(出力約1万kW、芙蓉総合リース等)の商用運転開始が発表されました(運転開始は8月1日)。9月9日には仙台市に受電200MWのAIデータセンター計画(fantasista)が公表されています。
おわりに
蓄電池が増える方向に、物理も政策も向いています。天井は先に下がり、これから増える余地があるのは量と、速い商品と、席です。海外と同じ道に入ったのは「要る理由」のほうで、「稼ぎ方」は日本の型で組みます。海外から読む方は、48-17と48-19から入り、最後の問い(48-20)で数字を確かめてください。
数字は、官公庁・系統運用者・取引所・事業者の公表資料を主に、一部は民間の推計や報道(出典名を明記)を使っています。出典は各記事の末尾に置き、このページの分は下にまとめました。
出典(このページで使った数字)
- 資源エネルギー庁「安定供給の現状と課題と火力の脱炭素化の在り方について」基本政策分科会 資料1、2024年7月(2016→2023年度で火力約1,600万kW減)
- 第7次エネルギー基本計画 2025年2月18日閣議決定(2040年度 再エネ40〜50%、原子力20%程度、火力30〜40%、太陽光2.5〜3.6倍)
- 資源エネルギー庁 第8回次世代電力系統WG 資料1、2026年3月16日 p.9(九州2024年度 太陽光・風力7.5億kWh、エリア別出力制御率、東京の初実施)
- EPRX「需給調整市場のΔkW上限価格について」2026年2月5日/資源エネルギー庁 第4回電力安定供給WG 資料6、2026年7月14日(10円)/第1回電力安定供給WG 資料8、2026年5月13日
- 資源エネルギー庁 第9回次世代電力系統WG 2026年3月27日(2025年12月末 連系済み約64万kW、契約申込約3,000万kW、接続検討約1億7,200万kW)/第2回分散型エネルギー推進戦略WG 資料5・議事録 2026年3月6日(供給側リソースの2040年度見通し280万〜1,000万kW、契約申込2,400万kWが超過)
- 電力広域的運営推進機関「電力需給及び電力系統に関する概況 2024年度実績」2025年9月(全国最大需要14,784万kW)/第103回広域系統整備委員会 資料3、2026年9月1日
- Modo Energy(英国・テキサスの蓄電池の量、推計)/AEMO(南オーストラリア)
- 芙蓉総合リース・青木あすなろ建設 発表 2026年9月10日(北海道石狩市蓄電所 10,125kW/29,970kWh、運転開始2026年8月1日)/fantasista 適時開示 2026年9月9日