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増やす。ただし高くは買わない。天井は先に下げ、席と速い商品は増やす方向です。

国が蓄電池をどう見ているかは、言葉ではなく、買い方に出ます。3つの買い方を並べます。

1. 天井を下げる(需給調整市場の上限価格)

調整力の値段の天井は、2026年3月14日受渡分から19.51円が15円に、9月1日から10円になりました(1kWを30分待機させる値段)。次の7.21円は「市場における競争が十分に働いていないと評価される状況が継続するようであれば」検討する、という条件付きです。同時に、必要量の見積もりも「まれな日」から「ふつうの日」に変え、速い商品の募集量を13%減らしました(48-5)。国は、調整力を高い値段では買わない、と行動で示しました。

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調整力の上限価格(円/kW・30分)19.51円〜2026年3月13日15円2026年3月14日〜10円2026年9月1日〜7.21円次段階(条件付き)
図1 上限価格の階段。19.51円(〜2026年3月13日)→15円(3月14日〜)→10円(9月1日〜)→7.21円(条件付き)。出典:EPRX ΔkW上限価格表(2026年7月30日更新)/資源エネルギー庁 第4回電力安定供給WG 資料6(2026年7月14日)。

2. 席と速い商品は、増やす

一方で、国が増やそうとしているものがあります。ひとつは席(容量市場)です。需要が増加に転じ(48-10)、火力が減る(48-6)なかで、夕方に「必ず出せる」設備は増やすしかありません。席は火力・揚水・需要側とも競いますが、新しく作る手段としては蓄電池が速い(48-10)。もうひとつは速い商品です。10秒の商品の先に、1秒の商品と、はずみ(慣性)の商品を作る検討が進んでいます(48-4)。こちらは、回らない電源のなかでは蓄電池がいちばん出しやすい商品です。特別高圧の大型案件には、国が20年の固定収入を約束するオークション(長期脱炭素電源オークション)もありますが、市場で稼いだ分の約9割を還付する仕組みで、高圧の蓄電所の主な収入源は需給調整市場・卸市場・容量市場です。

3. 器は広げる(法律と接続ルール)

2023年4月に施行された電気事業法の改正で、1万kWを超える蓄電池からの放電は「発電事業」として位置づけられました。2026年には接続の空押さえ対策を入れ、本物の案件が早くつながるように整えています(48-13)。器は広げ、入口は整える。

読み方:増やす、高くは買わない

3つを並べると、国の本音が見えます。蓄電池は増やしたい。だから席を増やし、速い商品を作り、法律と接続ルールを整える。ただし、調整力に高い値段は払いたくない。だから天井を先に下げた。英国は席(容量市場、2014年開始)を先に整え、2020年に1秒の商品を作って蓄電池の仕事を広げ、蓄電池が増えてから調整力の値段が下がりました。日本は値段のほうを先に動かし、量はこれから、という位置にいます。

投資家の読み方
調整力は、いまの日本の蓄電所にとって主な収入源です(海外では中身が席と差益へ移りました=48-16)。天井は先に下がり、次の段階は「競争が進まない場合」に限る条件付きなので、すぐには下がりません。ただし条件が満たされれば下がります。国が増やしたいのは量で、席(容量市場)は火力・揚水とも競い、1秒・はずみの速い商品は蓄電池が出しやすい席です。日本の蓄電池はまだ最大需要の0.4%。国の「増やす」は、これからつながる蓄電池に向いています。
この連載の問い
一、昔はなぜ蓄電池なしで回っていたのか
  1. 48-2昔は蓄電池がなくても回っていたよね
  2. 48-3回る機械が減った系統では、何が消えるのか
  3. 48-4なぜ「10秒」なのか
  4. 48-5再エネが増えるほど、調整力が要るのか
二、火力・原発・揚水では、なぜ足りないのか
  1. 48-6火力に調整させれば、足りるのでは
  2. 48-7原発が増えたら、蓄電池はいらなくなる?
  3. 48-8揚水を増やせば、足りるのでは
  4. 48-9市場で買えなかった調整力は、どこから来ているのか
三、これから電気の需要と電源はどうなるのか
  1. 48-10データセンターが増えると、なぜ蓄電池なのか
  2. 48-11太陽光は、これからどうなる
  3. 48-12火力の量は、原発の稼働は、需要は
  4. 48-13蓄電池は、どれだけ増えるのか
四、お金と、国の本音
  1. 48-14国は、蓄電池を増やしたいのか(この記事)
  2. 48-15インフラ投資としての蓄電池は、何に似ているのか
  3. 48-16稼ぎは細るって言うけど、本当?
  4. 48-17海外の真似をして、日本で儲かるか
  5. 48-18蓄電池は、将来どれだけ必要なのか
  6. 48-19蓄電池は、どこに置いても同じなのか
18の問いの先にある、ひとつの問い48-20 いくらで買って、いくら戻るのか答えは案件ごとに違う。だから公表値だけを目盛りにした計算機を置いた。単価・約定率・席代・差益・建設費を、自分で動かせる。

出典

この記事の監修
中島 晋也(サイエンスエックス株式会社 代表取締役・工学博士)

系統用蓄電池発電所の開発・売買・技術デューデリジェンスを手がける。本コラムは、実案件の組成と評価の実務に基づいて執筆・監修しています。