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市場の外からです。火力の余力と、揚水との個別契約が埋めています。

調整力の市場(需給調整市場)では、募集した量に対して札が足りないことがしばしばあります。2024年4月に全商品が揃った直後は、募集量に応札が届かず、翌月には一部の商品で前日の追加調達を一時止めました。それでも停電は起きていません。足りない分は、別のところから来ているからです。

2つの「市場の外」

ひとつは火力の余力です。発電所は前日に翌日の発電計画を出しますが、計画に使っていない余りの出力があります。送配電会社は、この余りを当日に使う契約(余力活用契約)を火力などと結んでいて、使った分だけ電気の量(kWh)で精算します。待機料は払いません。資源エネルギー庁がこの費用を市場と同じ単位に換算すると、2026年1月は1kWを30分あたり0.93円相当で、同じ月の市場(複合商品)の平均約定単価3.15円の3分の1以下でした(2026年5月13日 資料8。単位が違うので参考の比較です)。

もうひとつは揚水との個別契約です。送配電会社は既設の揚水と直接契約して市場の外で確保してきました(2026年度の計画は5社で合計266万kW=47-2)。ただし北海道と東京では、この揚水の個別契約が2026年3月末で終わっています(同資料8)。市場の外の床は、少しずつ市場の中へ戻され始めています。

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調整力は、3つの財布から買われている市場(需給調整市場)札が足りないことがある火力の余力計画に使わない出力使った分だけ払う平均0.93円/kW・30分揚水の個別契約既設の揚水と直接契約2026年度266万kW
図1 市場で足りない分は、市場の外の2つの財布が埋める。出典:資源エネルギー庁「需給調整市場について」資料8(2026年5月13日)/47-2。

国も「当面は併用」と言っている

資源エネルギー庁は2025年5月の審議会で、「調整力の調達コストを最小にするには、当面の間、市場以外の調達手段(余力活用電源・揚水等の随意契約)を併用していくことが必要」と整理しました。市場は入口で、床は市場の外にある。これが今の日本の形です。

調達費用は減っている

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調整力の調達費用(全国合計、億円/月)236億円2024年4月200億円2024年8月153億円2024年12月167億円2025年3月134億円2025年6月128億円2025年9月複合商品(週間)+三次②(前日)の合計、速報値出典:資源エネルギー庁 第108回制度検討作業部会 資料4(2025年10月29日)
図2 調達費用は2024年4月の236億円から2025年9月の128億円へ。募集量に削減係数を入れ(2024年6月)、市場外で確保した分を募集量から引く(2025年6月)ようにした効果と資料は説明している。

市場で買う費用は、2024年4月の月236億円から2025年9月の128億円へ減りました。理由として資料は、募集量に削減係数を入れたこと(2024年6月)と、市場の外で確保した分を募集量から引くようにしたこと(2025年6月)を挙げています。市場が小さくなったのではなく、市場の外の床を織り込んで、市場で買う量を減らした形です。

海外との違い

英国の当日の調整(Balancing Mechanism)も、ドイツの調整力(4つの送電会社が共同運営するregelleistung.netの入札)も、市場で買う仕組みです。市場で買えなかった分を火力の余力と揚水の個別契約で埋める日本の形は、日本の設計です。この違いが、47-4で見た「日本には市場の外の床がある」という設計差の正体です。

投資家の読み方
市場の外に床があることは、上限価格を下げても系統が回る条件の一つです。逆に、蓄電池の札が厚くなった管区から市場調達に戻る動きも出ています(北海道・東京で揚水の個別契約が終了)。火力の余力はkWhで精算され、ΔkW換算で0.93円相当(2026年1月)。単位が違うので、そのまま札の水準とは比べられません。蓄電池が出す値段の床は、市場の外の単価ではなく、自分が卸市場で稼げる額です(47-4)。
この連載の問い
一、昔はなぜ蓄電池なしで回っていたのか
  1. 48-2昔は蓄電池がなくても回っていたよね
  2. 48-3回る機械が減った系統では、何が消えるのか
  3. 48-4なぜ「10秒」なのか
  4. 48-5再エネが増えるほど、調整力が要るのか
二、火力・原発・揚水では、なぜ足りないのか
  1. 48-6火力に調整させれば、足りるのでは
  2. 48-7原発が増えたら、蓄電池はいらなくなる?
  3. 48-8揚水を増やせば、足りるのでは
  4. 48-9市場で買えなかった調整力は、どこから来ているのか(この記事)
三、これから電気の需要と電源はどうなるのか
  1. 48-10データセンターが増えると、なぜ蓄電池なのか
  2. 48-11太陽光は、これからどうなる
  3. 48-12火力の量は、原発の稼働は、需要は
  4. 48-13蓄電池は、どれだけ増えるのか
四、お金と、国の本音
  1. 48-14国は、蓄電池を増やしたいのか
  2. 48-15インフラ投資としての蓄電池は、何に似ているのか
  3. 48-16稼ぎは細るって言うけど、本当?
  4. 48-17海外の真似をして、日本で儲かるか
  5. 48-18蓄電池は、将来どれだけ必要なのか
  6. 48-19蓄電池は、どこに置いても同じなのか
18の問いの先にある、ひとつの問い48-20 いくらで買って、いくら戻るのか答えは案件ごとに違う。だから公表値だけを目盛りにした計算機を置いた。単価・約定率・席代・差益・建設費を、自分で動かせる。

出典

この記事の監修
中島 晋也(サイエンスエックス株式会社 代表取締役・工学博士)

系統用蓄電池発電所の開発・売買・技術デューデリジェンスを手がける。本コラムは、実案件の組成と評価の実務に基づいて執筆・監修しています。