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もう世界2位の量があります。増やすには10年前後かかり、費用は読めません。蓄電池は平地に置け、英国では通常1〜2年で動きます。

揚水発電は「水の蓄電池」です。夜に安い電気で水を上のダムに汲み上げ、昼や夕方に落として発電します。太陽光が増えた今は、昼に汲み上げて夕方に落とします。仕組みは古くからあり、日本は得意分野です。

日本はすでに世界2位

資源エネルギー庁によると、2022年時点で日本の揚水は42地点・約2,700万kW。中国に次いで世界2位の規模です(米エネルギー情報局の集計では中国が50GW)。関西電力の奥多々良木(193万kW)や、東京電力リニューアブルパワーの神流川、J-POWERの新豊根など、大型の揚水が全国にあります。国のオークション(長期脱炭素電源オークション)でも、揚水は蓄電池と並んで募集され、落札しています。

増やすには、山と10年が要る

揚水には上と下に2つのダムと落差が要ります。適地はすでに使われ、新しい場所は残りわずかです。環境調査・許認可・土木工事を含めた工期は、従来型で一般に10年前後とされます(学術レビュー)。日本では新設ではなく、既設の発電機をより細かく出力を変えられる可変速機に更新する動きが中心です。

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Snowy 2.0 の費用(億豪ドル)と完成予定202017年 発表完成2021年60調査後1202023年8月完成2028年12月120超2025年10月「さらに超える」と公表(再評価中)2025年10月時点で工程67%、2026年2月で70%。出力220万kW
図1 豪州Snowy 2.0(220万kW)の費用と完成予定の推移。2017年の発表時A$20億・2021年完成予定が、2023年8月にA$120億・2028年12月完成に。2025年10月、Snowy Hydroは工程67%の時点でA$120億を超えると公表し、費用の再評価に入った。出典:Snowy Hydro 公表資料、ABC News。

海外の新設も同じ壁に当たっています。豪州のSnowy 2.0は、2017年にA$20億・2021年完成の計画で始まりました。実行可能性の調査後にA$60億、2023年8月にA$120億・完成2028年12月へ改められ、2025年10月には「A$120億をさらに超える」と公表されて、いま独立した専門家が費用を再評価しています。工程は2026年2月時点で70%です。

蓄電池は、平地で、速い

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揚水と蓄電池、何が違うか揚水蓄電池場所山の上下に2つのダム平地・送電線の近く大きさ1か所で数十万〜200万kW1か所で数千〜数万kW、小分けに置ける作る時間10年前後(学術レビュー)英国で通常1〜2年(NESO)費用の読みSnowy 2.0はA$20億→120億超電池価格は下がり続けている(48-16)国の買い方長期脱炭素電源オークション(第2回から同じ枠)同じ枠
図2 揚水と蓄電池の違い。揚水は大きいが、場所と時間が要る。蓄電池は小さく分けて置け、速く動く。

蓄電池はダムも落差も要りません。平地に置け、送電線の近くに小分けにできます。英国の系統運用者NESOは「蓄電池の建設期間は通常1〜2年」と2030年の計画に書いています。日本では系統側の工事待ちで3〜5年かかる案件もありますが(48-13)、それでも揚水の10年より短い。だから国は、揚水を「増やす」のではなく、揚水と蓄電池を並べて買う制度にしました。第1回のオークション(2024年4月公表)では蓄電池109.2万kWと揚水57.7万kWが落札し、第2回からは「蓄電池・揚水」として同じ枠で募集されています。揚水は残し、増える分は蓄電池で、という順番です。

投資家の読み方
国の制度は、揚水と蓄電池を「同じ仕事をする設備」として並べて買っています。揚水は急には増やせないので、増える分の多くは蓄電池に来ます。そして既設の揚水の一部が送配電会社との個別契約で調整力の床を作っている点も見落とせません(48-9)。蓄電池の競争相手は、新しい揚水ではなく、この既設の揚水と火力の余力です。
この連載の問い
一、昔はなぜ蓄電池なしで回っていたのか
  1. 48-2昔は蓄電池がなくても回っていたよね
  2. 48-3回る機械が減った系統では、何が消えるのか
  3. 48-4なぜ「10秒」なのか
  4. 48-5再エネが増えるほど、調整力が要るのか
二、火力・原発・揚水では、なぜ足りないのか
  1. 48-6火力に調整させれば、足りるのでは
  2. 48-7原発が増えたら、蓄電池はいらなくなる?
  3. 48-8揚水を増やせば、足りるのでは(この記事)
  4. 48-9市場で買えなかった調整力は、どこから来ているのか
三、これから電気の需要と電源はどうなるのか
  1. 48-10データセンターが増えると、なぜ蓄電池なのか
  2. 48-11太陽光は、これからどうなる
  3. 48-12火力の量は、原発の稼働は、需要は
  4. 48-13蓄電池は、どれだけ増えるのか
四、お金と、国の本音
  1. 48-14国は、蓄電池を増やしたいのか
  2. 48-15インフラ投資としての蓄電池は、何に似ているのか
  3. 48-16稼ぎは細るって言うけど、本当?
  4. 48-17海外の真似をして、日本で儲かるか
  5. 48-18蓄電池は、将来どれだけ必要なのか
  6. 48-19蓄電池は、どこに置いても同じなのか
18の問いの先にある、ひとつの問い48-20 いくらで買って、いくら戻るのか答えは案件ごとに違う。だから公表値だけを目盛りにした計算機を置いた。単価・約定率・席代・差益・建設費を、自分で動かせる。

出典

この記事の監修
中島 晋也(サイエンスエックス株式会社 代表取締役・工学博士)

系統用蓄電池発電所の開発・売買・技術デューデリジェンスを手がける。本コラムは、実案件の組成と評価の実務に基づいて執筆・監修しています。