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固定の収入と、動く収入を組み合わせる器です。英国の上場ファンドは固定の割合を倍に上げ、日本でも固定を土台にした社債が出ました。

蓄電池は発電所に似ていますが、燃料を燃やしません。送電線にも似ていますが、電気を運ぶのではなく貯めます。いちばん近いのは「収入の器」として見ることです。器には2種類の収入が入ります。

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蓄電池の収入の器固定の収入(土台)席代(容量市場)・借り上げ契約(トーリング)(特高は国の20年オークションも)動く収入(上乗せ)安く貯めて高く売る差益調整力の待機料天候と市場で上下する銀行と社債が付く上振れ下限
図1 蓄電池の収入の器。下の固定の収入(容量市場・国の20年オークション・借り上げ契約)が土台になり、上の動く収入(安く貯めて高く売る差益・調整力)が上乗せになる。

固定の収入:席代、20年契約、借り上げ

席代(容量市場)は、夕方に必ず出せる約束の対価で、4年先まで決まります。借り上げ契約(トーリング)は、電力会社が蓄電所を丸ごと借り、固定の賃料を払って自分で運用する契約です。特別高圧の大型案件には、国が20年の固定収入を約束するオークションもあります。日本では東京ガスが2024年から始め、20年契約の借り上げが3件・累計110MWになりました(運用予定は6件・300MW)。

動く収入:差益と調整力

昼に安く貯めて夕方に高く売る差益と、調整力の待機料は、天候と市場で年ごとに動きます(48-16)。上振れも下振れもここに出ます。

海外は固定の割合を上げている

イタリアの送電会社Ternaは2025年9月30日、蓄電池の容量を15年固定で買う初めての入札を行い、9,968MWh分(当初15件、うち1件辞退で14件、平均6.6時間)を平均€12,959/MWh・年で落札しました。上限€37,000の3分の1近い価格で、応札は募集の4倍でした。落札者は調整力市場で得た利益の8割をTernaに戻します。豪州の連邦政府は、収入の下限と上限を約束する仕組み(Capacity Investment Scheme)で、2025年9月の第3回に16件・4.13GW/15.37GWhを採択し、2026年6月の第8回でも15件・4.2GW/16.1GWhを採択しました。第8回の応札は73件・76.4GWhで、募集の約5倍です(WattClarity)。英国の上場ファンドGore Streetは、契約で固定した収入の割合を2025年3月期の15.2%から2026年3月期の30.8%へ倍増させています(同社年次報告)。

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各国の「固定の収入」の作り方日本20年オークション固定の容量収入。市場収益の約9割を返す日本借り上げ(トーリング)東京ガス 20年・累計110MWイタリアMACSE(15年固定)9,968MWh、€12,959/MWh・年、利益の8割返す豪州CIS(下限と上限)第3回 4.13GW、第8回 4.2GW(2026年6月)英国容量市場(最長15年)席の数え方を年々厳しく(ディレーティング)米カリフォルニアRA(席の長期契約)例:12年契約
図2 各国の「固定の収入」の作り方。出典:Terna 2025年10月1日/豪DCCEEW 2025年9月16日/NESO・EMR Delivery Body/CPUC/電力広域的運営推進機関・東京ガス。

日本にも、固定の収入と資金が入り始めた

2026年4月、みずほ証券・CHC Japan・オリックス銀行は、新潟県小千谷市の49MWの蓄電所で国内初のプロジェクトボンド100億円を組み、格付投資情報センターから「A-」を得ました。収入の土台は東京ガスの20年借り上げです。同年6月、関西電力・きんでん・MUFGサステナブルエナジーは約25万kWの特別高圧の蓄電所に投資するファンド(65億円)を作りました。固定の収入があると、銀行と社債が付く。国内でも、その例が出始めました。

投資家の読み方
蓄電池は「固定+変動」の器で、英国の上場ファンドGore Streetは固定の比率を15.2%から30.8%へ上げました。日本で固定を作る道は、容量市場と借り上げ契約(特高は国の20年オークションも)。固定の収入が付いた蓄電所には社債と銀行が付く例が出ました(100億円・A-、2026年4月)。借りて買う形が、国内でも出始めています。固定を取れる設計(続けて出せる時間、連系の年、契約の相手)が、器の価値を決めます。
この連載の問い
一、昔はなぜ蓄電池なしで回っていたのか
  1. 48-2昔は蓄電池がなくても回っていたよね
  2. 48-3回る機械が減った系統では、何が消えるのか
  3. 48-4なぜ「10秒」なのか
  4. 48-5再エネが増えるほど、調整力が要るのか
二、火力・原発・揚水では、なぜ足りないのか
  1. 48-6火力に調整させれば、足りるのでは
  2. 48-7原発が増えたら、蓄電池はいらなくなる?
  3. 48-8揚水を増やせば、足りるのでは
  4. 48-9市場で買えなかった調整力は、どこから来ているのか
三、これから電気の需要と電源はどうなるのか
  1. 48-10データセンターが増えると、なぜ蓄電池なのか
  2. 48-11太陽光は、これからどうなる
  3. 48-12火力の量は、原発の稼働は、需要は
  4. 48-13蓄電池は、どれだけ増えるのか
四、お金と、国の本音
  1. 48-14国は、蓄電池を増やしたいのか
  2. 48-15インフラ投資としての蓄電池は、何に似ているのか(この記事)
  3. 48-16稼ぎは細るって言うけど、本当?
  4. 48-17海外の真似をして、日本で儲かるか
  5. 48-18蓄電池は、将来どれだけ必要なのか
  6. 48-19蓄電池は、どこに置いても同じなのか
18の問いの先にある、ひとつの問い48-20 いくらで買って、いくら戻るのか答えは案件ごとに違う。だから公表値だけを目盛りにした計算機を置いた。単価・約定率・席代・差益・建設費を、自分で動かせる。

出典

この記事の監修
中島 晋也(サイエンスエックス株式会社 代表取締役・工学博士)

系統用蓄電池発電所の開発・売買・技術デューデリジェンスを手がける。本コラムは、実案件の組成と評価の実務に基づいて執筆・監修しています。