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半分正しい。増えるのは「ぶれ」の備えだけで、「止まる」備えは再エネでは減りも増えもしません。

「再エネが増えるほど調整力が要る」は、よく聞く説明です。太陽光は雲で出力が変わり、風力は風で変わるので、その分の備えが要る。これは正しい。ただし、調整力の必要量はそれだけで決まっていません。

必要量は二階建て

電力広域的運営推進機関の算定式は、必要量を2つの足し算で決めています。

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調整力の必要量は、2つの備えの足し算1階:日々のぶれの備え需要から太陽光・風力を引いた残りの、短い時間のぶれ2026年度から「まれな日(3σ)」→「ふつうの日(1σ)」で見積もる← 再エネで増える← 見積もりで減らせる2階:大きな発電所が止まる備えいちばん大きい発電所1台分を、エリアの大きさで按分再エネが増えても減らない。原発の大型機があるほど大きい← 減らない
図1 必要量の二階建て。1階は再エネの増加で大きくなり、見積もりの仕方(3σ→1σ)で小さくもなる。2階は「いちばん大きい発電所が1台止まる」備えで、再エネの量とは関係がない。出典:電力広域的運営推進機関 第44回需給調整市場検討小委員会 資料2/資源エネルギー庁 2025年12月12日 資料6。

1階は「ぶれ」の備え。需要から太陽光と風力の出力を引いた「残り」が、短い時間でどれだけ動くかを統計で見積もります。再エネが増えるほど、この残りは動きやすくなります。ここが「再エネが増えるほど要る」の中身です。

2階は「止まる」備え。いちばん大きい発電所が1台突然止まったときに、その穴を埋める分です。東日本でいちばん大きい発電機は2021年時点で116万kWでした。2026年に柏崎刈羽6号機(135.6万kW)が戻ったので、この値は上がります。この備えは、再エネがいくら増えても減りません。原発のような大型機が動いているほど、むしろ大きくなります。

2026年度に13%減ったのは、1階の見積もり

2026年度から、1階の見積もりが「めったにない日にも備える幅(3σ)」から「ふつうの日の幅(1σ)」に変わり、速い商品(一次・二次①)の募集量は2025年度より13%減りました。同時に、3時間続けて出せる「複合」の募集量は50%増えています。減ったのは1階の幅で、2階には手が付いていません。この点は47-2で数字を追っています。

海外も同じ二階建て

英国の送電会社NESOは、いちばん大きな発電所が止まる備えを1,000MW級に据え置いたまま、はずみの最低値を2022年の140から2024年に120(GVA・秒)へ段階的に下げ、その代わりに速い商品の保有を増やしました。豪州の1秒商品も、はずみが減るほど必要量が増える式(inertia-aware)で決まり、上限は2023年10月の50MWから2024年12月に425MWまで引き上げられました。

つまり英国と豪州では、量より速さの手当てが先に進みました。1階は統計で縮められても、速さは縮められません。

投資家の読み方
1階(ぶれ)の募集量は見積もりの仕方で上下します。制度で減らせる部分です。2階(止まる備え)は減らず、原発が戻るほど大きくなります。英国と豪州では、量より速さの手当てが先に進みました。募集量の増減だけでなく、3時間続けて出せる複合商品と、次に来る速い商品に座れる設計かどうかが、席の取り方の手掛かりになります。
この連載の問い
一、昔はなぜ蓄電池なしで回っていたのか
  1. 48-2昔は蓄電池がなくても回っていたよね
  2. 48-3回る機械が減った系統では、何が消えるのか
  3. 48-4なぜ「10秒」なのか
  4. 48-5再エネが増えるほど、調整力が要るのか(この記事)
二、火力・原発・揚水では、なぜ足りないのか
  1. 48-6火力に調整させれば、足りるのでは
  2. 48-7原発が増えたら、蓄電池はいらなくなる?
  3. 48-8揚水を増やせば、足りるのでは
  4. 48-9市場で買えなかった調整力は、どこから来ているのか
三、これから電気の需要と電源はどうなるのか
  1. 48-10データセンターが増えると、なぜ蓄電池なのか
  2. 48-11太陽光は、これからどうなる
  3. 48-12火力の量は、原発の稼働は、需要は
  4. 48-13蓄電池は、どれだけ増えるのか
四、お金と、国の本音
  1. 48-14国は、蓄電池を増やしたいのか
  2. 48-15インフラ投資としての蓄電池は、何に似ているのか
  3. 48-16稼ぎは細るって言うけど、本当?
  4. 48-17海外の真似をして、日本で儲かるか
  5. 48-18蓄電池は、将来どれだけ必要なのか
  6. 48-19蓄電池は、どこに置いても同じなのか
18の問いの先にある、ひとつの問い48-20 いくらで買って、いくら戻るのか答えは案件ごとに違う。だから公表値だけを目盛りにした計算機を置いた。単価・約定率・席代・差益・建設費を、自分で動かせる。

出典

この記事の監修
中島 晋也(サイエンスエックス株式会社 代表取締役・工学博士)

系統用蓄電池発電所の開発・売買・技術デューデリジェンスを手がける。本コラムは、実案件の組成と評価の実務に基づいて執筆・監修しています。