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周波数を戻す働きは、同じエリアならどこに置いても同じです。効くのは「どのエリアか」「送電線が混んでいないか」、そして電圧の役なら「どこか」です。

「蓄電池は電線の近くならどこでもいいのか」「遠くにバラバラに置いてもいいのか」。周波数については、答えは「同じエリアの中ならどこでも同じ」です。電気は光の速さに近い速さで伝わり、一つにつながった系統の周波数は、落ち着いた状態ではどこで測ってもほぼ同じ値です(発電所が落ちた直後の数秒は、場所によって差が出ます)。本州の東側は50Hzで一つ、西側は60Hzで一つ。北海道は本州と直流の線でつながっているので周波数は別、沖縄も独立した系統です。新潟の発電所の電気を東京で使えるのも、九州の太陽光が余ると関西の周波数まで上がるのも、同じ系統だからです。蓄電池が周波数を戻す働きも、置いた場所とは関係なく、エリア全体に効きます。一方、電圧を保つ働き(48-3)は電気を押し出す圧力の話なので、置いた場所の近くにしか効きません。

制約1:エリアをつなぐ線は、細い

日本の系統は9つのエリア(沖縄を含めて10)に分かれ、エリアの間は連系線でつながっています。連系線には運べる量の上限があり、余った電気を隣に送れる量も、隣から調整力を借りられる量も、この上限で決まります。だから調整力の市場(需給調整市場)は連系線の制約のもとで広域に調達され、商品ごとに運用の範囲が違い、席(容量市場)もエリアの縛りを持ちます。東と西は周波数が違うので、間にある変換設備(FC)を通る分しか行き来できません。連系線は太くなっていきますが、時間がかかります。

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日本の9エリアと、エリアをつなぐ線東日本 50Hz:周波数は一つ北海道(直流でつながる)西日本 60Hz:周波数は一つ北海道東北東京中部関西中国九州北陸四国FC北海道—東北 直流 90→120万kW2028年3月東北—東京 増強2027年11月FC 210→300万kW2027年度中部—関西 増強2030年6月概念図。エリアをまたぐ量は線の太さで決まり、東西はFC、北海道は直流を通る分だけ
図1 日本の9エリアと連系線。同じ交流系統の中では周波数はほぼ一つ。エリアをまたぐ量は連系線の太さで決まり、東西はFC(周波数変換設備)、北海道は直流連系(北本)を通る分だけ。出典:電力広域的運営推進機関 第103回広域系統整備委員会 資料3(2026年9月1日)の連系線増強計画、資源エネルギー庁「電力ネットワークの次世代化について」2023年10月31日。

制約2:同じエリアでも、送電線が混む場所がある

エリアの中でも、送電線には運べる量があります。太陽光が集まる地域の送電線は昼に混み、そこにつながる蓄電池は「混んでいる時間は出すな(または貯めるな)」と止められることがあります(ノンファーム型接続)。電力広域的運営推進機関は毎年、どの送電線がどれだけ混むかを公表していて、2031年度は北海道の基幹系統と、東日本・中部のローカル系統で混雑が増える見通しです(第103回広域系統整備委員会 資料3 p.24)。置く場所は、周波数には関係なくても、送電線の空き具合には関係します。

分散して置くのは、むしろよい

制約が2つあるからこそ、蓄電池を小分けにして分散して置くことには意味があります。混んでいない送電線を選べる。1か所の事故で全部が止まらない。一般に、需要の近くに置けば送電の損失も減ります。同じエリアの中で、送電線の空いている場所に分散して置く。これが、置き場所を選ぶときの基本になります。

投資家の読み方
周波数を戻す効き目は場所を選びません。だから「どこに置くか」は、①どのエリアか(席の空き具合、昼夜の値差、原発の有無=48-7)、②送電線が混んでいないか(2031年度の混雑見通しは公表済み)、③連系線が太くなる前か後か、の3つで決めます。同じエリアの中で分散して置くことは、混雑と事故を避ける観点では強みだと当社は見ています。
この連載の問い
一、昔はなぜ蓄電池なしで回っていたのか
  1. 48-2昔は蓄電池がなくても回っていたよね
  2. 48-3回る機械が減った系統では、何が消えるのか
  3. 48-4なぜ「10秒」なのか
  4. 48-5再エネが増えるほど、調整力が要るのか
二、火力・原発・揚水では、なぜ足りないのか
  1. 48-6火力に調整させれば、足りるのでは
  2. 48-7原発が増えたら、蓄電池はいらなくなる?
  3. 48-8揚水を増やせば、足りるのでは
  4. 48-9市場で買えなかった調整力は、どこから来ているのか
三、これから電気の需要と電源はどうなるのか
  1. 48-10データセンターが増えると、なぜ蓄電池なのか
  2. 48-11太陽光は、これからどうなる
  3. 48-12火力の量は、原発の稼働は、需要は
  4. 48-13蓄電池は、どれだけ増えるのか
四、お金と、国の本音
  1. 48-14国は、蓄電池を増やしたいのか
  2. 48-15インフラ投資としての蓄電池は、何に似ているのか
  3. 48-16稼ぎは細るって言うけど、本当?
  4. 48-17海外の真似をして、日本で儲かるか
  5. 48-18蓄電池は、将来どれだけ必要なのか
  6. 48-19蓄電池は、どこに置いても同じなのか(この記事)
18の問いの先にある、ひとつの問い48-20 いくらで買って、いくら戻るのか答えは案件ごとに違う。だから公表値だけを目盛りにした計算機を置いた。単価・約定率・席代・差益・建設費を、自分で動かせる。

出典

この記事の監修
中島 晋也(サイエンスエックス株式会社 代表取締役・工学博士)

系統用蓄電池発電所の開発・売買・技術デューデリジェンスを手がける。本コラムは、実案件の組成と評価の実務に基づいて執筆・監修しています。