やっています。ただし昼は絞られ、止まった火力は動けず、器は減っています。足りない分の受け皿が、蓄電池に回ってきます。
火力の発電機には、周波数が下がると自動で少し出力を上げ、上がると下げる機能が付いています(ガバナフリー)。人の命令を待たずに動くので、速い調整力の担い手として、いまも主役です。速い商品の「オンライン」の枠は、落札の約7割が火力です(47-4)。
では、火力にもっとやらせれば済むのか。3つの理由で、そうはいきません。
1. 昼は、火力が絞られている
電気が余ったとき、どの電源から止めるかの順番は国が決めています。最初に絞られるのは火力です。晴れた休日の昼は、太陽光が需要を超えるので、火力は最低出力まで絞られ、それでも余れば止められます。止まった火力は、周波数を戻せません。国は2023年末の対策で、既設の火力に最低出力を50%から30%へ下げる自主的な取り組みを求めていますが、絞れば絞るほど、調整に使える幅も小さくなります。
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2. 器が減っている
火力の設備は、2016年度から2023年度の7年間で約1,600万kW減りました。石油火力が約2,200万kW減り、LNGが約300万kW減り、石炭が約900万kW増えた差し引きです。供給計画では2025年度に602万kW、2026年度に371万kWの火力が休廃止となり、2025年度以降は休廃止が新増設を上回る状態が続く見込みです。
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3. 待機にはお金がかかる
調整力のために火力を「いつでも動ける状態」で残すには、動かなくても人と燃料と設備を維持する費用がかかります。日本では容量市場がその費用を払い、海外では州や国が直接払い始めています。豪州ニューサウスウェールズ州は2024年5月、州最大の石炭火力エラリング(288万kW)の閉鎖を2025年8月から2027年8月へ延ばす合意を結びました。損失が出れば80%(年最大2億2,500万豪ドル)を州が負担する契約です。2026年1月には、事業者のOrigin Energyが閉鎖を2029年4月へさらに延ばすと公表しました。ドイツは2026年に、ガス火力を中心に12GWの新しい電源を入札で確保する方針をEUと合意しました(ロイター 2026年1月15日)。
火力にやらせることはできます。ただ、昼は絞られ、器は減り、残すにはお金がかかる。この3つが、調整の仕事を蓄電池へ移す圧力になっています。
- 48-6火力に調整させれば、足りるのでは(この記事)
- 48-7原発が増えたら、蓄電池はいらなくなる?
- 48-8揚水を増やせば、足りるのでは
- 48-9市場で買えなかった調整力は、どこから来ているのか
- 48-10データセンターが増えると、なぜ蓄電池なのか
- 48-11太陽光は、これからどうなる
- 48-12火力の量は、原発の稼働は、需要は
- 48-13蓄電池は、どれだけ増えるのか
- 48-14国は、蓄電池を増やしたいのか
- 48-15インフラ投資としての蓄電池は、何に似ているのか
- 48-16稼ぎは細るって言うけど、本当?
- 48-17海外の真似をして、日本で儲かるか
- 48-18蓄電池は、将来どれだけ必要なのか
- 48-19蓄電池は、どこに置いても同じなのか
出典
- 資源エネルギー庁「安定供給の現状と課題と火力の脱炭素化の在り方について」基本政策分科会 資料1、2024年7月(2016→2023年度で約1,600万kW減:石油等▲2,200万kW・LNG▲300万kW・石炭+900万kW、2025年度以降は休廃止が新増設を上回る)/「今後の火力政策について」資料10、2024年5月8日
- 電力広域的運営推進機関「2025年度供給計画の取りまとめ」2025年3月(休廃止602万kW)/「2026年度 供給計画の取りまとめ」2026年3月(371万kW)
- 資源エネルギー庁 第49回系統WG 資料1、2023年12月6日(既設火力の最低出力50%→30%への自主的引下げを求める対策パッケージ)/「なるほど!グリッド 出力制御について」(止める順番)
- 電力広域的運営推進機関 第19回需給調整市場検討小委員会 資料2-2、2020年9月29日(並列台数が減る時間帯でもGF量を常に3%以上確保)
- NSW州政府 プレスリリース 2024年5月23日(Eraring延命合意、損失の80%・年最大A$2.25億)/Origin Energy 公表 2026年1月(閉鎖を2029年4月30日へ再延長)
- ロイター 2026年1月15日(ドイツ政府とEUの合意、12GW入札)