データセンターが食うのは「席」です。席を新しく作る手段のなかでは、蓄電池がいちばん速い。
データセンターは、周波数をぶらす電源ではありません。一日中、ほぼ一定の量を使い続ける需要です。だから増えて困るのは調整力ではなく、暑い日と寒い日の夕方に「必ず動ける」発電の量、つまり席(容量)です。
日本の需要は、増加に転じた
日本の電力需要は人口減と省エネで長く減ってきました。第7次エネルギー基本計画はこれを反転させ、2040年度の発電量を1.1〜1.2兆kWh(2022年度比1〜2割増)と置きました。理由はデータセンター、半導体工場、電化です。電力広域的運営推進機関の2026年度の需要想定では、データセンターの立ち上がりは想定より遅れていますが、2034年度以降は前回想定を上回ります。
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米国で起きたこと:席の値段が11倍
米国東部の送電機関PJMは、3年先の席を入札で買います。その値段が、2024/25年度の$28.92から、2025/26年度に$269.92、2026/27年度に$329.17、2027/28年度に$333.44(1MW・1日あたり)へ跳ね上がり、2028/29年度も$325で決まりました(2026年7月14日)。2026/27年度以降の3回は、価格の上限に張り付いた値です。PJMは2027/28年度の需要増5,250MWのうち約5,100MWをデータセンターとし、市場担当役員のスチュ・ブレスラー氏は「データセンターの需要が新しい供給をはるかに上回っている」と述べています。市場監視機関は、データセンターの需要見通しを含めたことで2027/28年度の落札総額が約6割(62億ドル)増えたと試算しました。テキサスの送電機関ERCOTには、2026年3月時点で約410GWの大型需要が接続を待ち、その87%がデータセンターです。
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席をいちばん速く作れるのは蓄電池
席を増やす方法は3つです。火力を建てる、火力を残す、蓄電池を置く。火力の新設は計画から運転まで年単位で長く、残すには支払いが要ります(48-6)。蓄電池は平地に置け、英国では通常1〜2年で動き(日本では系統工事の待ちで3〜5年の案件もあります=48-13)、夕方の数時間に「必ず出せる」ことを約束できます。米PJMの2028/29年度では、4時間の蓄電池は定格の59%を席として数えられます。日本の容量市場でも、蓄電池は続けて出せる時間に応じた係数で席に数えられます(算定方法は別ですが、考え方は同じです)。
送電線の見通しも、データセンターで変わった
2026年9月1日、電力広域的運営推進機関は2031年度の送電線の混み具合の見通しを示しました。今回から、データセンターなどの大きな需要を「エリアの需要カーブに合わせて上下する需要」ではなく「一日中一定の需要」とみなし、一般の需要にだけカーブを当てはめる方式に変えました。これでデータセンターがある場所は、想定する需要量が増えます。効果は数字に出ていて、移行シナリオでは東京の出力制御量が前年想定から1,263GWh減りました。2031年度の想定には蓄電池2,409万kW(前年想定比+1,179万kW)と原発17基が置かれています。大きな需要を織り込むと、その場所の混雑と出力制御の想定は小さくなる。蓄電池をどこに置くかの判断に、データセンターの立地が効き始めています。
- 48-10データセンターが増えると、なぜ蓄電池なのか(この記事)
- 48-11太陽光は、これからどうなる
- 48-12火力の量は、原発の稼働は、需要は
- 48-13蓄電池は、どれだけ増えるのか
- 48-14国は、蓄電池を増やしたいのか
- 48-15インフラ投資としての蓄電池は、何に似ているのか
- 48-16稼ぎは細るって言うけど、本当?
- 48-17海外の真似をして、日本で儲かるか
- 48-18蓄電池は、将来どれだけ必要なのか
- 48-19蓄電池は、どこに置いても同じなのか
出典
- 資源エネルギー庁「2040年度におけるエネルギー需給の見通し(関連資料)」2025年2月18日閣議決定(発電1.1〜1.2兆kWh、2022年度比1〜2割増)
- 電力広域的運営推進機関「全国及び供給区域ごとの需要想定(2026年度)」2026年1月21日(データセンターの後ろ倒し、2034年度以降は上回る)
- PJM「Base Residual Auction Report」各版(2024/25 $28.92、2025/26 $269.92、2026/27 $329.17〔上限〕、2027/28 $333.44〔上限〕)/PJM ニュースリリース 2025年12月17日(データセンター約5,100MW、Stu Bresler氏の発言)・2026年7月14日(2028/29 $325〔上限〕)/Monitoring Analytics「Analysis of the 2027/2028 RPM BRA Part A」2026年1月5日(データセンターの需要見通しを含めたことによる約定総額の増加 $62.4億・61.4%、シナリオ3)
- ERCOT「Large Load Update」House Committee on State Affairs 2026年4月9日(2026年3月26日時点 約410GW、約87%がデータセンター)
- PJM ELCC(4時間蓄電池 2028/29年度 59%)/電力広域的運営推進機関「容量市場メインオークション」蓄電池の調整係数
- 電力広域的運営推進機関 第103回広域系統整備委員会 資料3「2031年度の系統混雑に関する中長期見通し」2026年9月1日(p.14 大規模需要の設定、p.26 東京の出力制御量、p.56 想定設備量)