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逆です。原発は昼に出力を下げないので、昼の余りが増え、蓄電池の仕事が増えます。

「原発が戻れば電気は足りる。蓄電池は要らなくなる」。よく聞く見立てですが、系統の動きは逆です。理由は、原発が「昼に出力を下げない電源」だからです。

止める順番は決まっていて、原発は最後

晴れた休日の昼、太陽光が需要を超えると、どこかを止めなければなりません。止める順番は国のルール(優先給電ルール)で決まっています。最初に火力を最低まで絞り、次に揚水の汲み上げと他地域への送電で吸収し、それでも余ればバイオマス、次に太陽光と風力を止めます。水力・原子力・地熱は最後です。理由は資源エネルギー庁の説明どおり、「出力を短時間で小刻みに調整することが技術的に難しく、一度下げるとすぐに戻せない」からです。

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電気が余ったとき、止める順番(優先給電ルール)火力を最低まで絞る調整力は残す揚水で汲み上げ他地域へ送る吸収できる分だけバイオマスを止める太陽光・風力を止める=出力制御水力・原子力地熱最後まで下げない
図1 余ったときに止める順番。原発は「長期固定電源」として最後で、実際には昼も下げない。出典:資源エネルギー庁「なるほど!グリッド 出力制御について」。

九州で起きていること

九州には、川内1・2号機(各89万kW)と玄海3・4号機(計236万kW)の原発4基、合計414万kWがあります。この4基は、定期検査で止まる期間を除けば、昼も夜も同じ出力で動きます。そこに日本一の密度で太陽光が乗ると、晴れた昼は作る量が使う量を超えます。原発は下げないので、止めるのは太陽光です。九州の太陽光・風力を止めた割合は、2023年度に8.3%(12.9億kWh)で過去最高、2024年度は4.8%(7.5億kWh)、2025年度の見込みは6.1%で、全国でいちばん高い状態が続いています。

実際の日を見ます。2025年5月4日12時半、九州の需要は653万kW。太陽光が968万kW、原子力・水力・地熱が334万kW出ていました。揚水で189万kW汲み上げ、他地域へ134万kW送り、蓄電池が4万kW貯めても余り、太陽光と風力を509万kW止めました(資源エネルギー庁 第3回次世代電力系統WG 資料1、2025年6月27日 p.6)。この日、原子力は下がっていません。電力広域的運営推進機関の2031年度の系統シミュレーションでも、再稼働済みと再稼働見通しのある原発17基は「年間を通してマストラン(一定出力)」で置かれています(第103回広域系統整備委員会 資料3 p.52)。

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余った分=太陽光を止める使う量(需要)原発:昼も下げない火力:最低まで絞る太陽光0時6時12時18時24時晴れた休日の1日(概念図。九州の太陽光を止めた割合は2024年度4.8%、2025年度見込み6.1%)昼の余剰は、こうしてできる
図2 晴れた休日の昼。原発は昼も出力を下げず、火力は最低まで絞っても止められない分が残る。その上に太陽光が乗ると昼は使う量を超え、超えた分は太陽光を止める。蓄電池はこの余りを貯めて夕方に出す(概念図。九州の実績は本文)。

止めた電気は、誰かが貯めれば捨てずに済みます。昼に安く貯め、夕方の高い時間に売るのが蓄電池の仕事です。原発が動くほど昼の余りは増え、その仕事も増えます。資源エネルギー庁の資料は、中国エリアで2024年度に止める量が増える要因の一つに「原子力の営業運転再開」を挙げています。

どこで、いつ戻るのか

2026年4月時点で動いている原発は15基です。九州4基(川内1・2、玄海3・4)、関西7基(高浜1〜4、大飯3・4、美浜3)、四国1基(伊方3)、東北1基(女川2、2024年11月)、中国1基(島根2、2024年12月)、東京1基(柏崎刈羽6、2026年2月)。つまり昼の余りが「原発で押し上げられている」管区は、九州・関西・四国・東北・中国・東京です。中部と北陸には動いている原発がありません。

次に戻るのは、北海道と東京です。北海道の泊3号機(91.2万kW)は2025年7月に設置変更許可を受け、12月に道知事が再稼働に同意しました(事業者は2027年のできるだけ早い時期の再稼働を目指しています)。北海道の春・秋の昼の最低需要は281万kW(2025年5月6日、資源エネルギー庁)なので、泊3号機が再稼働すれば、1基で最低需要の約3分の1が「下げない電源」になる計算です。北海道の長期の出力制御率の見通しは30%で、全国で最も高い値です(48-11)。東京では柏崎刈羽7号機(135.6万kW)が6号機に続く位置にいて、県知事は2025年12月に6号機と7号機の理解要請を了承しています。東海第二(110万kW)は安全対策工事の完成時期が2026年12月に間に合わない見込みと事業者が公表しています(日本原子力発電 2026年1月、報道)。

原発はこれから増える

東京でも同じことが起きました。2026年1月21日、柏崎刈羽6号機(135.6万kW)が約14年ぶりに再稼働しました(不具合で一時停止し、2月9日に再起動、2月16日に送電開始、4月16日に営業運転)。送電を始めた2週間後の3月1日、東京エリアで初めて太陽光を止めました。東京電力パワーグリッドの指示はコマごとに3〜118万kWで、公表された制御量の合計は184万kW(太陽光・風力181万kW+バイオマス4万kW)です(東電PG公表値、日経BP 2026年3月。集計方法が異なります)。東電PGは「休日で需要が少なかった」ことを規模の理由に挙げています。第7次エネルギー基本計画(2025年2月)は2040年度の原子力を2割程度と置き、「依存度を可能な限り低減する」という文言を外しました。2024年度の実績は9.4%です。原発の割合が2倍になる前提で、昼の余りは各地で増えます。

原発に昼の調整をさせている国もあります。フランスは原発が電気の約7割を占め(2025年は68.1%、送電会社RTE)、多くの原子炉が春と夏の昼に出力を下げる運転をしています。日本の原発は、規制と運用の慣行からそうした運転をしていません。だから日本では、原発が増えるほど、昼の余りを引き受ける蓄電池が要ります。

投資家の読み方
原発が戻る地域は、昼の余りが増える地域です。いま原発で昼が押し上げられているのは九州・関西・四国・東北・中国・東京で、次に押し上がるのは北海道(泊3号機、地元同意済み)と東京(柏崎刈羽7号機)です。九州は原発4基と日本一の太陽光で止める割合が全国最大、北海道は長期の見通しが30%。止める電気は「安く貯められる電気」で、蓄電池の差益の元になります。2040年度に原子力2割の前提は、昼の余りを増やす方向に働きます。
この連載の問い
一、昔はなぜ蓄電池なしで回っていたのか
  1. 48-2昔は蓄電池がなくても回っていたよね
  2. 48-3回る機械が減った系統では、何が消えるのか
  3. 48-4なぜ「10秒」なのか
  4. 48-5再エネが増えるほど、調整力が要るのか
二、火力・原発・揚水では、なぜ足りないのか
  1. 48-6火力に調整させれば、足りるのでは
  2. 48-7原発が増えたら、蓄電池はいらなくなる?(この記事)
  3. 48-8揚水を増やせば、足りるのでは
  4. 48-9市場で買えなかった調整力は、どこから来ているのか
三、これから電気の需要と電源はどうなるのか
  1. 48-10データセンターが増えると、なぜ蓄電池なのか
  2. 48-11太陽光は、これからどうなる
  3. 48-12火力の量は、原発の稼働は、需要は
  4. 48-13蓄電池は、どれだけ増えるのか
四、お金と、国の本音
  1. 48-14国は、蓄電池を増やしたいのか
  2. 48-15インフラ投資としての蓄電池は、何に似ているのか
  3. 48-16稼ぎは細るって言うけど、本当?
  4. 48-17海外の真似をして、日本で儲かるか
  5. 48-18蓄電池は、将来どれだけ必要なのか
  6. 48-19蓄電池は、どこに置いても同じなのか
18の問いの先にある、ひとつの問い48-20 いくらで買って、いくら戻るのか答えは案件ごとに違う。だから公表値だけを目盛りにした計算機を置いた。単価・約定率・席代・差益・建設費を、自分で動かせる。

出典

この記事の監修
中島 晋也(サイエンスエックス株式会社 代表取締役・工学博士)

系統用蓄電池発電所の開発・売買・技術デューデリジェンスを手がける。本コラムは、実案件の組成と評価の実務に基づいて執筆・監修しています。