下がるのは単価です。稼ぎの中身が調整力から席と差益へ移り、量は増えます。
「蓄電池の稼ぎは細る」は、どの部品の話かを分けないと答えが出ません。稼ぎは3つの部品でできています。
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① 調整力の単価は下がる。ただし日本は先に下げた
海外では、蓄電池が増えると調整力の値段が下がりました。豪州の系統運用者AEMOは2025年1〜3月の報告で、調整力(FCAS)の収入が前年から1,390万豪ドル減った理由を「蓄電池の増加で調整力の供給が増え、価格が下がった」と書いています。同じ期間に差益の収入は増え、蓄電池の収入の88%を差益が占めるようになりました。中身が移ったのです。日本は順番が逆で、蓄電池が最大需要の0.4%の段階で、国が上限価格を19.51円→15円→10円に先に下げました(48-14)。単価の下げは、日本では先に始まりました。次の段階(7.21円)は「競争が進まない場合」に限る条件付きで残っています。
② 差益は、太陽光とともに広がる
昼に安く貯めて夕方に高く売る差益は、太陽光が増えるほど広がります。九州の昼は太陽光が需要を5割近く上回って止められる日があり(48-7)、東京も2026年3月に止め始めました。差益は天候と電池の量で年ごとに上下します。英国では、送電会社が当日の調整に蓄電池を使う仕組みを改め、蓄電池が指令を飛ばされる割合が2025年1月の43%から12月の32%へ下がったことで、当日の調整(バランシング・メカニズム)からの収入が戻りました(NESO、Modo Energy)。仕組みが整うほど、蓄電池が指令を受ける機会は増えます。日本も2030年代前半をめどに、卸市場と調整力を同時に決める同時市場へ移る予定です(47-4)。
③ 席代は、上がる
米PJMの席の値段は3回の入札で$28.92から$333.44へ上がり、2026/27年度以降の3回は上限に張り付きました(48-10)。理由はデータセンターの需要です。日本も需要が増加に転じ(48-12)、火力が減ります。夕方に必ず出せる席の値段は、上がる方向です。ただし日本の容量市場の価格は、PJMのようには動いていません。
合計は市場次第。ただし電池は安くなり、量は増える
3つの部品の合計は市場次第で、海外でも年によって上下しました。一方で、電池のパック価格は2023年$144/kWhから2025年$108へ下がり、定置用は$70/kWh(前年比45%減)で全用途中いちばん安くなりました(BloombergNEF)。蓄電所の建設費全体はこれほどは下がっていません(システム価格は前年比31%減、日本の価格は別に見る必要があります)が、方向は下です。そして海外の蓄電池の量は、単価が下がった後も増え続けました。豪州は2025年1〜3月から1年で4,445MWが新たに動き、設備が2倍を超えました(AEMO)。日本は0.4%。増える余地は量にあります。ただし量が増えるほど、調整力の単価は下がります。海外で起きたことです。
- 48-10データセンターが増えると、なぜ蓄電池なのか
- 48-11太陽光は、これからどうなる
- 48-12火力の量は、原発の稼働は、需要は
- 48-13蓄電池は、どれだけ増えるのか
- 48-14国は、蓄電池を増やしたいのか
- 48-15インフラ投資としての蓄電池は、何に似ているのか
- 48-16稼ぎは細るって言うけど、本当?(この記事)
- 48-17海外の真似をして、日本で儲かるか
- 48-18蓄電池は、将来どれだけ必要なのか
- 48-19蓄電池は、どこに置いても同じなのか
出典
- AEMO「Quarterly Energy Dynamics」Q1 2025(FCAS収益 前年比1,390万豪ドル減、エネルギー市場の純収益が総純収益の88%)/Q1 2026(蓄電池+4,445MW、設備2倍超)
- EPRX「需給調整市場のΔkW上限価格について」2026年2月5日/資源エネルギー庁 第1回電力安定供給WG 資料8、2026年5月13日(次段階は競争状況を見て検討)
- NESO Open Balancing Platform/Modo Energy(蓄電池のskip rate 2025年1月43%→12月32%、推計)
- PJM Base Residual Auction Report 各版/PJM ニュースリリース 2025年12月17日(2027/28 $333.44)・2026年7月14日(2028/29 $325)
- BloombergNEF Lithium-Ion Battery Price Survey 2025(パック$108/kWh、定置用$70/kWh・前年比▲45%)/BloombergNEF Energy Storage Systems Cost Survey 2025(ターンキー・システム$117/kWh、▲31%)
- 資源エネルギー庁 第3回次世代電力系統WG 資料1、2025年6月27日 p.6(九州の最小需要日 2025年5月4日)/資源エネルギー庁 同時市場の在り方等に関する検討会 第二次中間取りまとめ 2025年10月15日