← 入口(19の問いの一覧)に戻る

下がるのは単価です。稼ぎの中身が調整力から席と差益へ移り、量は増えます。

「蓄電池の稼ぎは細る」は、どの部品の話かを分けないと答えが出ません。稼ぎは3つの部品でできています。

← 横にスクロールできます →

① 調整力の単価(円/kW・30分)下がる② 売買の差益(円/kWh)年ごとに上下③ 席代(円/kW・年)上がる19.51円15円10円7.21円?日本の上限価格2026年3月→9月→次段階日本は天井を先に下げた晴れた年・電池が急に増えた年に縮み太陽光が増えると広がる安く貯めて高く売る差益(概念図)$292024/25$2702025/26$3292026/27米PJMの席代(1MW・1日)3回の入札で11倍データセンターが席を食う
図1 稼ぎは3つの部品でできている。①調整力の単価は制度と競争で下がる(日本は上限価格の階段)。②安く貯めて高く売る差益は、太陽光が増えると広がり、天候と電池の量で年ごとに上下する。③席代(容量)は需要の増加と火力の退出で上がる(米PJM)。

① 調整力の単価は下がる。ただし日本は先に下げた

海外では、蓄電池が増えると調整力の値段が下がりました。豪州の系統運用者AEMOは2025年1〜3月の報告で、調整力(FCAS)の収入が前年から1,390万豪ドル減った理由を「蓄電池の増加で調整力の供給が増え、価格が下がった」と書いています。同じ期間に差益の収入は増え、蓄電池の収入の88%を差益が占めるようになりました。中身が移ったのです。日本は順番が逆で、蓄電池が最大需要の0.4%の段階で、国が上限価格を19.51円→15円→10円に先に下げました(48-14)。単価の下げは、日本では先に始まりました。次の段階(7.21円)は「競争が進まない場合」に限る条件付きで残っています。

② 差益は、太陽光とともに広がる

昼に安く貯めて夕方に高く売る差益は、太陽光が増えるほど広がります。九州の昼は太陽光が需要を5割近く上回って止められる日があり(48-7)、東京も2026年3月に止め始めました。差益は天候と電池の量で年ごとに上下します。英国では、送電会社が当日の調整に蓄電池を使う仕組みを改め、蓄電池が指令を飛ばされる割合が2025年1月の43%から12月の32%へ下がったことで、当日の調整(バランシング・メカニズム)からの収入が戻りました(NESO、Modo Energy)。仕組みが整うほど、蓄電池が指令を受ける機会は増えます。日本も2030年代前半をめどに、卸市場と調整力を同時に決める同時市場へ移る予定です(47-4)。

③ 席代は、上がる

米PJMの席の値段は3回の入札で$28.92から$333.44へ上がり、2026/27年度以降の3回は上限に張り付きました(48-10)。理由はデータセンターの需要です。日本も需要が増加に転じ(48-12)、火力が減ります。夕方に必ず出せる席の値段は、上がる方向です。ただし日本の容量市場の価格は、PJMのようには動いていません。

合計は市場次第。ただし電池は安くなり、量は増える

3つの部品の合計は市場次第で、海外でも年によって上下しました。一方で、電池のパック価格は2023年$144/kWhから2025年$108へ下がり、定置用は$70/kWh(前年比45%減)で全用途中いちばん安くなりました(BloombergNEF)。蓄電所の建設費全体はこれほどは下がっていません(システム価格は前年比31%減、日本の価格は別に見る必要があります)が、方向は下です。そして海外の蓄電池の量は、単価が下がった後も増え続けました。豪州は2025年1〜3月から1年で4,445MWが新たに動き、設備が2倍を超えました(AEMO)。日本は0.4%。増える余地は量にあります。ただし量が増えるほど、調整力の単価は下がります。海外で起きたことです。

投資家の読み方
下がるのは調整力の単価で、日本ではその下げが先に始まりました。稼ぎの合計を決めるのは、①席代、②差益の大きい管区と時間帯、③固定収入(借り上げ・容量市場)の組み方です。定置用の電池価格は下がっています(BloombergNEF)。ただし蓄電所の費用は電池以外が大きく、日本の価格は別に見る必要があります。海外は単価が下がった後も蓄電池を増やし続けました。日本はその手前、量が増える局面の入口にいます。
この連載の問い
一、昔はなぜ蓄電池なしで回っていたのか
  1. 48-2昔は蓄電池がなくても回っていたよね
  2. 48-3回る機械が減った系統では、何が消えるのか
  3. 48-4なぜ「10秒」なのか
  4. 48-5再エネが増えるほど、調整力が要るのか
二、火力・原発・揚水では、なぜ足りないのか
  1. 48-6火力に調整させれば、足りるのでは
  2. 48-7原発が増えたら、蓄電池はいらなくなる?
  3. 48-8揚水を増やせば、足りるのでは
  4. 48-9市場で買えなかった調整力は、どこから来ているのか
三、これから電気の需要と電源はどうなるのか
  1. 48-10データセンターが増えると、なぜ蓄電池なのか
  2. 48-11太陽光は、これからどうなる
  3. 48-12火力の量は、原発の稼働は、需要は
  4. 48-13蓄電池は、どれだけ増えるのか
四、お金と、国の本音
  1. 48-14国は、蓄電池を増やしたいのか
  2. 48-15インフラ投資としての蓄電池は、何に似ているのか
  3. 48-16稼ぎは細るって言うけど、本当?(この記事)
  4. 48-17海外の真似をして、日本で儲かるか
  5. 48-18蓄電池は、将来どれだけ必要なのか
  6. 48-19蓄電池は、どこに置いても同じなのか
18の問いの先にある、ひとつの問い48-20 いくらで買って、いくら戻るのか答えは案件ごとに違う。だから公表値だけを目盛りにした計算機を置いた。単価・約定率・席代・差益・建設費を、自分で動かせる。

出典

この記事の監修
中島 晋也(サイエンスエックス株式会社 代表取締役・工学博士)

系統用蓄電池発電所の開発・売買・技術デューデリジェンスを手がける。本コラムは、実案件の組成と評価の実務に基づいて執筆・監修しています。