周波数は数秒で落ちるからです。回る機械が減るほど速く落ち、埋める側にも速さが要ります。
いちばん大きな発電所が突然止まると、その瞬間に作る量が足りなくなり、周波数が落ち始めます。落ち方をゆっくりにしてくれるのが、回る機械の「はずみ」です。はずみが多い系統では数十秒かけて落ち、少ない系統では数秒で落ちます。
落ちる途中で、誰かが穴を埋めなければなりません。埋めるのが遅いと、周波数が下がりすぎて、家庭や工場の電気を自動で切る装置が働きます。だから「何秒以内に埋め切るか」が、調整力の商品の条件になります。
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日本は10秒、海外は1秒
日本のいちばん速い商品(一次調整力)の条件は「周波数のずれを自分で感じて10秒以内に応じ始め、5分以上続けること」です(資源エネルギー庁 2026年5月13日 資料8)。この商品は蓄電池と火力が担っていて、蓄電池だけが座れる枠(オフライン)と、火力と競う枠(オンライン)があります(47-3)。
海外はもっと速い商品を作りました。英国は2020年10月から「1秒以内に全量」を出す商品(Dynamic Containment)を、豪州は2023年10月から「1秒以内」の商品(Very Fast FCAS)を運用しています。米テキサスは15サイクル、つまり0.25秒です。
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英国が1秒商品を作った理由
2019年8月9日、英国で落雷をきっかけに洋上風力とガス火力が続けて外れ、合計1,481MWの発電が失われました。備えていた基準は1,000MWでした。周波数は48.8Hzまで落ち、約100万kW(約1GW)の需要が自動で切られ、100万件を超える需要家が停電しました。周波数が正常に戻るまで4分42秒、全需要家の復旧には約45分かかりました。翌2020年10月、送電会社は「系統のはずみが過去最低になり、周波数が速く離れるので、より速い応答が要る」として1秒商品を始めました。最初の入札で選ばれたのは、蓄電池2か所・90MWでした。
日本にも、速い商品は来る
- 48-2昔は蓄電池がなくても回っていたよね
- 48-3回る機械が減った系統では、何が消えるのか
- 48-4なぜ「10秒」なのか(この記事)
- 48-5再エネが増えるほど、調整力が要るのか
- 48-10データセンターが増えると、なぜ蓄電池なのか
- 48-11太陽光は、これからどうなる
- 48-12火力の量は、原発の稼働は、需要は
- 48-13蓄電池は、どれだけ増えるのか
- 48-14国は、蓄電池を増やしたいのか
- 48-15インフラ投資としての蓄電池は、何に似ているのか
- 48-16稼ぎは細るって言うけど、本当?
- 48-17海外の真似をして、日本で儲かるか
- 48-18蓄電池は、将来どれだけ必要なのか
- 48-19蓄電池は、どこに置いても同じなのか
出典
- 資源エネルギー庁「需給調整市場について」第1回電力安定供給WG 資料8、2026年5月13日(一次調整力:応動10秒以内・継続5分以上、上限価格の階段)/EPRX「需給調整市場の商品要件と取引スケジュール」第6版 2026年3月13日
- National Grid ESO(現NESO)"Technical Report on the events of 9 August 2019" 2019年9月6日/E3C 中間報告 2019年10月3日(脱落1,481MW、48.8Hz、遮断約1GW、100万件超、4分42秒で正常化・全復旧約45分)
- NESO Dynamic Containment(2020年10月1日運用開始、1秒以内、初回入札で蓄電池2ユニット90MW)
- AEMO Very Fast FCAS(2023年10月9日運用開始)/ERCOT Nodal Operating Guides(FFR:15サイクル)
- 電力広域的運営推進機関 第99回委員会 資料1、2024年7月23日(RoCoF 2.0Hz/s)/第18回グリッドコード検討会 資料4
- AEMO "Initial operation of the Hornsdale Power Reserve" 2018年4月5日(2017年12月18日のNSWでの689MW脱落時の応答)