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周波数は数秒で落ちるからです。回る機械が減るほど速く落ち、埋める側にも速さが要ります。

いちばん大きな発電所が突然止まると、その瞬間に作る量が足りなくなり、周波数が落ち始めます。落ち方をゆっくりにしてくれるのが、回る機械の「はずみ」です。はずみが多い系統では数十秒かけて落ち、少ない系統では数秒で落ちます。

落ちる途中で、誰かが穴を埋めなければなりません。埋めるのが遅いと、周波数が下がりすぎて、家庭や工場の電気を自動で切る装置が働きます。だから「何秒以内に埋め切るか」が、調整力の商品の条件になります。

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発電所が止まった直後、周波数はどう落ちるか50Hz↓ ここまで落ちると、需要が自動で切られる0秒1秒10秒20秒回る機械が多い:ゆっくり落ちる回る機械が少ない:数秒で落ちる1秒で埋める10秒で埋める概念図。縦軸は周波数の下がり具合、横軸は発電所が止まってからの秒数
図1 発電所が止まった直後の周波数の落ち方(概念図)。回る機械が多いとゆっくり落ち、10秒で埋めても間に合う。少ないと速く落ち、1秒以内に埋める商品が要る。

日本は10秒、海外は1秒

日本のいちばん速い商品(一次調整力)の条件は「周波数のずれを自分で感じて10秒以内に応じ始め、5分以上続けること」です(資源エネルギー庁 2026年5月13日 資料8)。この商品は蓄電池と火力が担っていて、蓄電池だけが座れる枠(オフライン)と、火力と競う枠(オンライン)があります(47-3)。

海外はもっと速い商品を作りました。英国は2020年10月から「1秒以内に全量」を出す商品(Dynamic Containment)を、豪州は2023年10月から「1秒以内」の商品(Very Fast FCAS)を運用しています。米テキサスは15サイクル、つまり0.25秒です。

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止まった発電所の穴を、全部埋め切るまでの時間米テキサス0.25秒2020年3月〜英国1秒2020年10月〜豪州1秒2023年10月〜日本10秒
図2 大きな発電所が止まったとき、穴を全部埋め切るまでに許される時間。米テキサスはERCOTのFast Frequency Response(15サイクル)、英国はNESOのDynamic Containment、豪州はAEMOのVery Fast FCAS、日本は需給調整市場の一次調整力。

英国が1秒商品を作った理由

2019年8月9日、英国で落雷をきっかけに洋上風力とガス火力が続けて外れ、合計1,481MWの発電が失われました。備えていた基準は1,000MWでした。周波数は48.8Hzまで落ち、約100万kW(約1GW)の需要が自動で切られ、100万件を超える需要家が停電しました。周波数が正常に戻るまで4分42秒、全需要家の復旧には約45分かかりました。翌2020年10月、送電会社は「系統のはずみが過去最低になり、周波数が速く離れるので、より速い応答が要る」として1秒商品を始めました。最初の入札で選ばれたのは、蓄電池2か所・90MWでした。

日本にも、速い商品は来る

10秒は入口です。英国は2020年、豪州は2023年に1秒の商品を作り、どちらも蓄電池が主な担い手になりました。慣性(はずみ)そのものの商品化も、英国では同期調相機やグリッドフォーミングの調達(Stability Pathfinder)として進んでいます。日本の系統でもはずみは減ります。電力広域的運営推進機関は、周波数の落ち方を1秒あたり2.0Hz以内に管理する考え方を2024年7月に示し、2050年に西日本の6エリアで基準を超えるという試算を出しました。はずみを真似できる蓄電池(グリッドフォーミング)を商品にする検討も、グリッドコード検討会で進んでいます。1秒とはずみは、日本ではまだ商品になっていません。商品になれば、蓄電池が座れる席が2つ増えます。
投資家の読み方
速い商品は、回らない電源のなかでは蓄電池がいちばん出しやすい商品です。日本の10秒商品は、蓄電池だけが座れるオフライン枠がすでに半分埋まりました(47-3)。次の「1秒」「はずみ」は、日本ではまだ商品になっていません。英国と豪州では、速い商品ができるたびに蓄電池の仕事が増えました。次の2つは蓄電池が座りやすい席ですが、要件次第で制御装置の改修が要ります。制度の検討は、速さとはずみに値段をつける方向で進んでいます。
この連載の問い
一、昔はなぜ蓄電池なしで回っていたのか
  1. 48-2昔は蓄電池がなくても回っていたよね
  2. 48-3回る機械が減った系統では、何が消えるのか
  3. 48-4なぜ「10秒」なのか(この記事)
  4. 48-5再エネが増えるほど、調整力が要るのか
二、火力・原発・揚水では、なぜ足りないのか
  1. 48-6火力に調整させれば、足りるのでは
  2. 48-7原発が増えたら、蓄電池はいらなくなる?
  3. 48-8揚水を増やせば、足りるのでは
  4. 48-9市場で買えなかった調整力は、どこから来ているのか
三、これから電気の需要と電源はどうなるのか
  1. 48-10データセンターが増えると、なぜ蓄電池なのか
  2. 48-11太陽光は、これからどうなる
  3. 48-12火力の量は、原発の稼働は、需要は
  4. 48-13蓄電池は、どれだけ増えるのか
四、お金と、国の本音
  1. 48-14国は、蓄電池を増やしたいのか
  2. 48-15インフラ投資としての蓄電池は、何に似ているのか
  3. 48-16稼ぎは細るって言うけど、本当?
  4. 48-17海外の真似をして、日本で儲かるか
  5. 48-18蓄電池は、将来どれだけ必要なのか
  6. 48-19蓄電池は、どこに置いても同じなのか
18の問いの先にある、ひとつの問い48-20 いくらで買って、いくら戻るのか答えは案件ごとに違う。だから公表値だけを目盛りにした計算機を置いた。単価・約定率・席代・差益・建設費を、自分で動かせる。

出典

この記事の監修
中島 晋也(サイエンスエックス株式会社 代表取締役・工学博士)

系統用蓄電池発電所の開発・売買・技術デューデリジェンスを手がける。本コラムは、実案件の組成と評価の実務に基づいて執筆・監修しています。