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国の計画に必要量はなく、あるのは2026年3月の「見通し」と、単位の違う3つの計算です。

「日本は蓄電池が何GW必要なのか」。第7次エネルギー基本計画の2040年度の需給見通し(2025年2月)にも、GX2040ビジョン(同)にも、蓄電池の必要量(GW・GWh)は書かれていません。見通しを作ったモデルは需給が合うように計算するもので、蓄電池は結果として出てくる数字であって、目標ではありません(RITE、第68回基本政策分科会)。国の文書で数字が出たのは2026年3月で、資源エネルギー庁は供給側の蓄電池(系統用・再エネ併設)の2040年度の「見通し」を280万〜1,000万kWと示しました。同時に、契約の申込みがすでにこの幅を超えていると説明しています。見通しは目標ではなく、申込に追い越されています。

あるのは、単位の違う3つの計算

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「要る量」は3つの別々の計算から出ていて、足し算できない調整力の量需給調整市場の募集量(47-2)単位:待機できるkW席の量容量市場の目標調達量単位:夕方に出せるkW余った電気の量出力制御の見通し(最低需要の10%を6時間分と仮定)単位:貯める量kWh
図1 3つの計算は、目的も単位も違う。同じ1MWの蓄電池でも、調整力では待機量、席では続けて出せる時間で割り引いた量、余りの吸収では貯める量として数えられる。出典:電力広域的運営推進機関/資源エネルギー庁 系統WG資料。

調整力の量は待機できるkWで数え、席の量は夕方に続けて出せる時間で割り引いたkWで数え、余った電気を貯める量はkWhで数えます。単位が違うので、足せません。これに、蓄電池産業戦略(2022年策定、2026年6月改訂)の「国内の製造能力150GWh/年」という産業政策の目標(投資決定済みの見通しは100GWh/年以上)が加わりますが、これは工場の能力で、系統に必要な量ではありません。

海外は、系統運用者が一本の数字を出す

豪州の系統運用者AEMOは、2024年の計画に「2050年までに49GW/646GWhの蓄電(揚水・需要側の協調リソースを含む)が必要」と書き、現状は3.7GW/10.8GWhと併記しました。英国NESOは「2030年に蓄電池23〜27GW(2023年の5GWから)」、ドイツの送電会社の計画(規制当局が承認)は「2045年に大型蓄電池約55GW/136GWh」、欧州委員会は2026年7月に「2030年に200GW、2040年に500GW(家庭用・揚水を含む蓄電全体)」、米カリフォルニアは「2035年までにリチウムイオン電池18.5GW(4時間+8時間の合計)」を、それぞれ一次資料に明記しています。

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「将来これだけ要る」と国や系統運用者が書いた数字豪州 AEMO(2050年)49GW/646GWh英国 NESO(2030年)23〜27GWドイツ BNetzA(2045年)約55GW/136GWhEU 欧州委員会(2030年)200GW日本 第7次エネ基(2040年)記載なし日本 つなぎたい量(申込)172GW(1億7,200万kW)対象年がそれぞれ違うので、長さは目安。日本の最下段は「要る量」ではなく「つなぎたい量」
図2 「要る量」を書いている国と、書いていない日本。EUは2040年に500GW。豪AEMO 2024 ISP、英NESO Clean Power 2030、独BNetzA Netzentwicklungsplan(Version 2025)、欧州委員会 Electrification Action Plan(2026年7月17日)、日本は第7次エネルギー基本計画の需給見通し(2025年2月)。最下段は資源エネルギー庁の接続検討受付量(2025年12月末)。

要る量は書かれず、つなぎたい量だけが積み上がる

日本で大きいのは「つなぎたい量」です。接続検討の申込は1億7,200万kW(172GW、2025年12月末)。豪州が2050年に必要と書いた49GWの3倍を超える量が、申込の段階に積み上がっています。国の見通し280万〜1,000万kWは、この接続検討の6%以下です。電力広域的運営推進機関が2031年度の送電線の混み具合を計算するときに置いた蓄電池は2,409万kW(連系済み+2031年度末までに運転を始める契約済み)で、当社が国側の計算で確認できた最大の数字です。

海外の数字を、当社がそれぞれのピーク需要で割ってみます。豪州の49GW(2050年)は、NEMのピーク需要(約35GW)を上回ります。英国の23〜27GW(2030年)は、冬のピーク需要の4〜5割です(分母の取り方で変わります)。海外は2030〜2050年の必要量、日本は2025年末の実績なので時点は違いますが、日本の連系済みは最大需要の0.4%。桁が2つ違います。

投資家の読み方
国の計画に「要る量」はなく、あるのは見通しの幅と、目的別の別々の計算です。海外の系統運用者は2030〜2050年の必要量を数字で書き、当社が各国のピーク需要で割ると4割〜1倍相当。日本の2025年末の連系済みは0.4%です。国の目標がないので、判断は事業者側が持つ数字に委ねられます。この連載で並べた一次資料の数字は、そのための道具です。
この連載の問い
一、昔はなぜ蓄電池なしで回っていたのか
  1. 48-2昔は蓄電池がなくても回っていたよね
  2. 48-3回る機械が減った系統では、何が消えるのか
  3. 48-4なぜ「10秒」なのか
  4. 48-5再エネが増えるほど、調整力が要るのか
二、火力・原発・揚水では、なぜ足りないのか
  1. 48-6火力に調整させれば、足りるのでは
  2. 48-7原発が増えたら、蓄電池はいらなくなる?
  3. 48-8揚水を増やせば、足りるのでは
  4. 48-9市場で買えなかった調整力は、どこから来ているのか
三、これから電気の需要と電源はどうなるのか
  1. 48-10データセンターが増えると、なぜ蓄電池なのか
  2. 48-11太陽光は、これからどうなる
  3. 48-12火力の量は、原発の稼働は、需要は
  4. 48-13蓄電池は、どれだけ増えるのか
四、お金と、国の本音
  1. 48-14国は、蓄電池を増やしたいのか
  2. 48-15インフラ投資としての蓄電池は、何に似ているのか
  3. 48-16稼ぎは細るって言うけど、本当?
  4. 48-17海外の真似をして、日本で儲かるか
  5. 48-18蓄電池は、将来どれだけ必要なのか(この記事)
  6. 48-19蓄電池は、どこに置いても同じなのか
18の問いの先にある、ひとつの問い48-20 いくらで買って、いくら戻るのか答えは案件ごとに違う。だから公表値だけを目盛りにした計算機を置いた。単価・約定率・席代・差益・建設費を、自分で動かせる。

出典

この記事の監修
中島 晋也(サイエンスエックス株式会社 代表取締役・工学博士)

系統用蓄電池発電所の開発・売買・技術デューデリジェンスを手がける。本コラムは、実案件の組成と評価の実務に基づいて執筆・監修しています。