要る理由は同じで、稼ぎ方は別ルート。海外は電池が増えてから値段が動き、日本は電池が来る前に国が天井を下げました。
先に進んだ3つの市場と日本を、同じ物差しで並べます。物差しは「つながった蓄電池の量が、その地域のピーク需要の何%か」です。
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海外:電池が増えて、値段が動いた
南オーストラリアでは2017年に大型蓄電池が動き始め、調整力の市場を蓄電池が担うようになると、2020年には価格が落ち着きました(AEMO)。英国では2021年に1秒商品の価格が上限に張り付き、2022年12月には入札が満杯になり、2023年に価格が下がりました(Modo Energy)。テキサスでは2022年夏から調整力の値段が下がり始めました。南オーストラリアと英国では蓄電池がピーク需要の数%に積み上がったところで値段が動き、その後は差益と席へ稼ぎの中身が移り、蓄電池の量は増え続けました(48-16)。
日本:電池が来る前に、天井が下がった
日本でつながっている蓄電池は64万kW(2025年12月末)。全国の冬季最大需要14,784万kW(2024年度。年間最大は2024年8月の約16,084万kW)の0.4%です。海外の数%〜1割に対して、桁が1つか2つ小さい。それでも上限価格は10円に下がりました。背景にあるのは、少ない蓄電池が高い札を入れていたことです。上限近く(14円超)で決まった取引は、量では3.4%ですが費用の16.8%を占め、14円超の応札の68〜90%は蓄電池でした(2026年5月9日〜7月3日、資源エネルギー庁)。一次調整力の平均落札単価(円/ΔkW・30分)は、2025年度に火力が2.05〜3.39円、蓄電池が8.82〜13.52円でした(EPRX)。国はこの分析を示したうえで、天井を下げました。
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だから日本は、海外とは別ルート
海外は「蓄電池が増えてから、市場で値段が動いた」順番です。日本はその前に制度が天井を下げました。47-4で見た3つの違い(天井が先に効く、30分単位で細かく値が付く、市場の外に床がある)に、ここでは2つ足します。日本は9つのエリアに分かれ、東西で周波数も違うので、調整力はエリアごとに買われます。東西をつなぐ設備は2027年度に300万kWへ、東北と東京の間は1,028万kWへ増えますが、それでもエリア差は残ります。そして20年オークションは市場収益の約9割を還付する仕組みで、豪州の下限・上限型とは型が違います(イタリアの15年固定も調整力の利益の8割を返しますが、返す対象と率は日本と別です)。
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海外の真似をして日本で儲かるか。要る理由は同じなので、蓄電池は増えます。稼ぎ方は別ルートなので、海外の収益カーブをそのまま当てはめず、日本の物差し(管区、連系の年、席代、固定収入、差益)で組むのが答えです。
- 48-10データセンターが増えると、なぜ蓄電池なのか
- 48-11太陽光は、これからどうなる
- 48-12火力の量は、原発の稼働は、需要は
- 48-13蓄電池は、どれだけ増えるのか
- 48-14国は、蓄電池を増やしたいのか
- 48-15インフラ投資としての蓄電池は、何に似ているのか
- 48-16稼ぎは細るって言うけど、本当?
- 48-17海外の真似をして、日本で儲かるか(この記事)
- 48-18蓄電池は、将来どれだけ必要なのか
- 48-19蓄電池は、どこに置いても同じなのか
出典
- 資源エネルギー庁 第4回電力安定供給WG 資料6、2026年7月14日 p.10-11,14(14円超の約定は量3.4%・費用16.8%〔5月9日〜7月3日〕、14円超の応札の68〜90%が蓄電池)
- EPRX「2025年度の取引実績について」2026年6月18日 p.14(一次調整力の電源種別平均落札単価、円/ΔkW・30分:火力2.05〜3.39円、蓄電池8.82〜13.52円)
- 電力広域的運営推進機関「電力需給及び電力系統に関する概況 2024年度実績」2025年9月(冬季最大需要14,784万kW、年間最大約16,084万kW)/資源エネルギー庁 第9回次世代電力系統WG 2026年3月27日(連系済み約64万kW)
- 資源エネルギー庁「電力ネットワークの次世代化について」資料6、2023年10月31日(FC 210万kW→300万kW、東北東京間1,028万kW)
- AEMO Quarterly Energy Dynamics Q3 2020/Modo Energy(英国 DC価格・FFR価格)/Enverus・Modo Energy(テキサス)
- 資源エネルギー庁「同時市場の在り方等に関する検討会 第二次中間取りまとめ」2025年10月15日(2030年代前半)