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要る理由は同じで、稼ぎ方は別ルート。海外は電池が増えてから値段が動き、日本は電池が来る前に国が天井を下げました。

先に進んだ3つの市場と日本を、同じ物差しで並べます。物差しは「つながった蓄電池の量が、その地域のピーク需要の何%か」です。

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調整力の値段が動き始めた時点の、蓄電池の量(ピーク需要比)南オーストラリア(2020年ごろ)約9%英国(2023年)約8%米テキサス(2025年)約12%日本(2026年)0.4%← ここで国が上限価格を19.51円→15円→10円に海外の値はアナリスト推計にもとづく概略。日本は連系済み64万kW÷全国最大需要14,784万kW
図1 海外は蓄電池が数%から1割に達してから調整力の値段が動いた。日本は0.4%の段階で、国が上限価格を先に下げた。出典:EPRX/資源エネルギー庁/電力広域的運営推進機関。海外の値はModo Energy・AEMOの資料にもとづく概略。

海外:電池が増えて、値段が動いた

南オーストラリアでは2017年に大型蓄電池が動き始め、調整力の市場を蓄電池が担うようになると、2020年には価格が落ち着きました(AEMO)。英国では2021年に1秒商品の価格が上限に張り付き、2022年12月には入札が満杯になり、2023年に価格が下がりました(Modo Energy)。テキサスでは2022年夏から調整力の値段が下がり始めました。南オーストラリアと英国では蓄電池がピーク需要の数%に積み上がったところで値段が動き、その後は差益と席へ稼ぎの中身が移り、蓄電池の量は増え続けました(48-16)。

日本:電池が来る前に、天井が下がった

日本でつながっている蓄電池は64万kW(2025年12月末)。全国の冬季最大需要14,784万kW(2024年度。年間最大は2024年8月の約16,084万kW)の0.4%です。海外の数%〜1割に対して、桁が1つか2つ小さい。それでも上限価格は10円に下がりました。背景にあるのは、少ない蓄電池が高い札を入れていたことです。上限近く(14円超)で決まった取引は、量では3.4%ですが費用の16.8%を占め、14円超の応札の68〜90%は蓄電池でした(2026年5月9日〜7月3日、資源エネルギー庁)。一次調整力の平均落札単価(円/ΔkW・30分)は、2025年度に火力が2.05〜3.39円、蓄電池が8.82〜13.52円でした(EPRX)。国はこの分析を示したうえで、天井を下げました。

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上限近く(14円超)で決まった取引の割合(2026年5〜7月)量に占める割合3.4%費用に占める割合16.8%その中の蓄電池の割合68〜90%(商品・期間で幅)出典:資源エネルギー庁 第4回電力安定供給WG 資料6(2026年7月14日)
図2 上限近くの高い札は、量は少ないが費用は大きく、その多くが蓄電池だった。出典:資源エネルギー庁 第4回電力安定供給WG 資料6、2026年7月14日(2026年5月9日〜7月3日)。

だから日本は、海外とは別ルート

海外は「蓄電池が増えてから、市場で値段が動いた」順番です。日本はその前に制度が天井を下げました。47-4で見た3つの違い(天井が先に効く、30分単位で細かく値が付く、市場の外に床がある)に、ここでは2つ足します。日本は9つのエリアに分かれ、東西で周波数も違うので、調整力はエリアごとに買われます。東西をつなぐ設備は2027年度に300万kWへ、東北と東京の間は1,028万kWへ増えますが、それでもエリア差は残ります。そして20年オークションは市場収益の約9割を還付する仕組みで、豪州の下限・上限型とは型が違います(イタリアの15年固定も調整力の利益の8割を返しますが、返す対象と率は日本と別です)。

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市場の作りの違い日本豪州英国テキサス値段の天井10円(上限価格)高い上限非公式上限高値を許容取引の単位30分5分4時間ブロック5分市場の外の床あり(余力・揚水)なしなしなし席代(容量市場)ありなし(下限上限型)ありなし固定収入の型20年・9割返す下限と上限容量市場15年なし同時最適化2030年代前半一部なし2025年12月〜
図3 市場の作りの違い。日本は天井が低い代わりに、市場の外の床と固定収入がある。出典:EPRX/資源エネルギー庁/NESO/AEMO/ERCOT/CAISO/Terna。

海外の真似をして日本で儲かるか。要る理由は同じなので、蓄電池は増えます。稼ぎ方は別ルートなので、海外の収益カーブをそのまま当てはめず、日本の物差し(管区、連系の年、席代、固定収入、差益)で組むのが答えです。

投資家の読み方
日本は、より低い天井で、より少ない電池で、同じ道を別ルートで進み始めた市場だと読めます。値段の天井は制度が先に決めました。量が増えるのはこれからです。日本で効くのは、①管区(席の空き具合と昼夜の値差)、②連系の年(連系線が広がる前か後か)、③固定収入(借り上げ・席代)の3つで、海外の収益カーブをそのまま当てはめないことが、いちばん大きな違いです。
この連載の問い
一、昔はなぜ蓄電池なしで回っていたのか
  1. 48-2昔は蓄電池がなくても回っていたよね
  2. 48-3回る機械が減った系統では、何が消えるのか
  3. 48-4なぜ「10秒」なのか
  4. 48-5再エネが増えるほど、調整力が要るのか
二、火力・原発・揚水では、なぜ足りないのか
  1. 48-6火力に調整させれば、足りるのでは
  2. 48-7原発が増えたら、蓄電池はいらなくなる?
  3. 48-8揚水を増やせば、足りるのでは
  4. 48-9市場で買えなかった調整力は、どこから来ているのか
三、これから電気の需要と電源はどうなるのか
  1. 48-10データセンターが増えると、なぜ蓄電池なのか
  2. 48-11太陽光は、これからどうなる
  3. 48-12火力の量は、原発の稼働は、需要は
  4. 48-13蓄電池は、どれだけ増えるのか
四、お金と、国の本音
  1. 48-14国は、蓄電池を増やしたいのか
  2. 48-15インフラ投資としての蓄電池は、何に似ているのか
  3. 48-16稼ぎは細るって言うけど、本当?
  4. 48-17海外の真似をして、日本で儲かるか(この記事)
  5. 48-18蓄電池は、将来どれだけ必要なのか
  6. 48-19蓄電池は、どこに置いても同じなのか
18の問いの先にある、ひとつの問い48-20 いくらで買って、いくら戻るのか答えは案件ごとに違う。だから公表値だけを目盛りにした計算機を置いた。単価・約定率・席代・差益・建設費を、自分で動かせる。

出典

この記事の監修
中島 晋也(サイエンスエックス株式会社 代表取締役・工学博士)

系統用蓄電池発電所の開発・売買・技術デューデリジェンスを手がける。本コラムは、実案件の組成と評価の実務に基づいて執筆・監修しています。